第17話 残ネルをクリアしよう!

 美化があまてらす鍼灸整骨院に行って3日が経った。あれから残ネルは一切やっていなかった。


「そろそろ具合も良さそだし、残ネル、クリアしてみよっかな♡」


 美化はイケメン佐藤のマッサージを

受けてからというもの非常に体調がよい。寝付き、寝起きともによく、将棋の集中力も上がっていた。


 今日は日曜日。午前9時。


「長くても2時間。たぶん その前にクリアできるとは思うけど。ムキにならないように気をつけて、肩こらないように……」


 できれば今日中にクリアしたいと美化は思っていた。そして明日には椿原是露を指名して、残ネルの話をしながらマッサージをしてもらおうと決めていたのだった。


「是露先生はどこまで進んでるんだろーなー?」


 美化はZERO WORLDの電源を入れた。


 パチ


「ん? ワールド……」

(まさか親がゲーム好きで是露ぜろなんて名前つけられたのかな? だったらウケるし。それも明日聞いてみよっかな)


 ちなみに『美化』という名前は、父がミケランジェロを敬愛していた為、名付けられた。


 美化は自分の名前が猫みたいで嫌な時期もあったが、ミケランジェロの『ピエタ』という作品を見た瞬間、それまでの気持ちが消え、自分の美化という名前が誇らしく大好きになったのだった。


 そして、久しぶりに美化の部屋に残ネルのBGMが流れた。


 ふぅっと息を吐き冒険を再開する。


 物語はもう終盤。聖なる神の化身ネル・フィードの抹殺を目論もくろむ悪魔の王ヴァルボロを倒しに行くところだ。


「レベルもめちゃ上げたし、いけるでしょ! ヴァルボロ! お前の命も今日までよっ!」


 最後の悪魔の巣窟そうくつ、地底魔城はなかなかの難関で、ザコですら倒すのに苦労した。


「こ、このレベルでこんなに苦労するなんて……も、萌える♡」


 そして、ヴァルボロがいるであろう部屋の扉の前まで1時間以上かかってようやく辿り着いた。


「体力、魔法力、どちらも完全に回復っ! これで負けたら私は暴れる自信がある!」


 そして、最後の『魔王の間』の扉を開けようとしたその時! 画面の右の方から骸骨がいこつキャラの敵がトコトコと勇者ミケに近づいていた。


「ちょ、なにっ!? まだいんのお? コイツ誰やねんっ!」


 美化は嘆きながら、物語を進める。

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