第15話 ゼロと香水

 首肩まわりの凝りもほぐれて、これが本来の血流なんだと美化は改めて感じた。それと同時にマッサージの効果に驚いていた。


「超軽いです! ありがとうございました!」


「よかったです。ゲームは控えめにして下さいね!」


 キラーン☆


 爽やか笑顔で佐藤は言った。


「はい。気をつけます」

(ま、眩しいっ! イケメン佐藤のキラースマイルッ! これで何人の女を落としてきたんだろ? いやいや、感謝してますよ。謝謝シェイシェイイケメン佐藤!)


「じゃあ、少し電気もかけていきましょうっ」


 佐藤はそう言うと、美化をカーテンで仕切られているほうのベッドへ連れて行き、またうつ伏せに寝かせ首肩まわりにいくつかの吸盤をくっつけた。


「電気上げていきますので『気持ちいいなぁ』ぐらいで教えて下さいね」


「は、はい!」

 

 じわ〜っ


 電気が美化の筋肉に流れこむ。


「どうですか? きてます?」


「あは……はいっ! そのぐらいで大丈夫ですっ!」


 美化は初の電気治療に一瞬ビビりはしたものの、すぐにその気持ちよさに気づき、リラックスモードに突入した。


「はい。大丈夫ですねー。10分ぐらいかけますので楽にしてて下さいね。途中でもなにかあれば声かけて下さい。お願いしまーす」


 イケメン佐藤はカーテンを閉めて出て行った。


(電気……これもまた、よき♡)


 美化は電気をかけられながら耳を澄まし、さっき残ネルの話をしていた先生の気配を探った。


(なんて名前の先生なんだろ? おーい。どこいっちゃったー?)


 しばらくすると、


「こんにちはー!」


 先生たちの声が一斉にした。新たに患者が来たようだ。1番奥のマッサージ用のベッドにその患者は入った。


(あっ、1番奥……さっきの先生がマッサージするって事なのかな?)


 美化は聞き耳を立てた。


「ゼロ先生、久しぶりぃ〜♡」


(女の声、そういえば……くんかくんか、香水くさーっ!)


「お久しぶりっす。具合よかったんですか?」


「よかったよー。でも1週間前ぐらいからまた肩が痛くなってきて、腕に軽い痺れが出てきちゃって。治して下さーい♡」


「痺れすか? それはかなりきてますね。ガッツリほぐしていきますね」


 ゼロと呼ばれる先生と、きつい香水の匂いを撒き散らす女。自分よりも大人の2人のやりとりに、美化はなんともいえない気持ちになっていた。


(30前後のBBAってとこだろうけど香水がきついよ。整骨院につけてくるレベル超えてる。せっかくのいい気分が台無し。また具合が悪くなりそ。てゆーか『ゼロ先生』って言ってた? 名前? もしくはあだ名? どっちなんだいっ!? パワー!)


「こんにちはー!」


 続々と患者がやってくる。美化は電気治療の快楽の中、ゼロ先生とその女の会話を一言も漏らさず聞くのに必死だった。

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