第4話 その頃のマートン 1

 パパに言い付けてファイの野郎を追放の刑に処してやったぞ。これでニアは僕のものだ。昔から顔の良い女だとは思っていたが、あんな体に成長してくれるとは思わなかった。




 パパによればニアの両親も、僕と彼女の婚約に賛成してくれたらしい。これでもう既にニアは僕の腕のなかにあるも同然だ。そもそもニアの両親からすれば、婚約を断る理由がない。僕と彼女が結婚すれば、当人たちの将来も保証される。何せ僕は領主の息子なのだ。




 ファイは惨めだな。唯一仲の良い女が最も嫌いな男に奪われるのだから。あいつのことは昔から嫌いだった。生理的に受け付けないのだ。今にして思えば、あいつとニアの仲の良さに対する嫉妬もあったのだろう。おお、我が愛しのニアよ、もう少し待っていてくれ。準備が整えば、来月中にも式をあげたいところだ。子供も3人は欲しいな。全員女が良い。




 僕は今、テラスから村を眺めている。この村の隅から隅まで、我が手中にあるのだ。全ては思い通り。


 太陽は沈みつつあり、もう1時間もすれば夜となる。村の外へ出るには危険な時間帯だ。ファイの野郎は村を出て行っただろうか。いや、あいつのことなどこれからの人生、僕は考えなくて良いのだ。この先、関わることなどないからな。




 さて、パパに隠れてこっそり取り寄せた、夜の技本の続きでも読むか。スキップでもしたいような気分だ。るんるんるん。


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