第2話 歯のお手入れは、これ1つでOK
歯ブラシ、電動歯ブラシ、フロス、糸ようじ、歯間ブラシ、マウスウォッシュ……医療は日々進化しているのに、なぜ、歯のケアだけ変わらないのだろうか。いや、日に日に、使用するアイテムが増えており、より手間になっている。
だが、ようやく開放されるときがきた!
魔法のような歯の手入れ用品を見つけたのである。
ポンポーン。
インターホンがなり、僕は宅配便を受け取った。
リビングに戻るとすぐにガムテープを剥がし、中身を取り出す。
『これ1つで、歯の歯垢も、歯周ポケットの汚れもきれいになります』
箱には大きくそう書いてあった。これが
「歯磨き粉よりもふた回りくらい大きいのかな」
中に入ってたのは、チューブ型の容器とビニール手袋、それと取扱説明書が一枚だけだった。僕は折りたたまれた説明書を開いた。
「なになに、はじめに注意書きをしっかり読んでから使用しましょう。使い方は次のとおりです」
一、付属のビニール手袋をはめます。
素手で使用する場合は、30秒以上石けんで手を洗い、1分ほど流水で石けんを洗い流したあと、使用してください。
※付属のビニール手袋以外の手袋は使用しないでください。
二、チューブから印象材を適量取り出します。
少なすぎると効果を十分に発揮することができません。
「適量って、どれくらいだろうな」
僕は付属のビニール手袋をはめて、左手に歯磨きのようなジェル状の中身を押し出した。思ったよりもドロっとしているジェル状の中身に眉を寄せ、次の項目を読んだ。
三、印象材が固まらないうちに、歯全体を覆うように塗り込みます。
この時、ほんの少し歯茎の方にはみ出るように塗り込むと歯周ポケットの汚れも落とすことができます。
「なるほどね。印象材っていうのか。歯磨き粉とあまりかわらないな」
印象材というジェル状の中身は、どうやら歯医者で歯の型を取る時に使用するものと似たもののようだった。僕は説明書を鏡に持ち替えて、印象材を歯に塗り始めた。
「しまった、右手に出せばよかった。ちょっと塗りにくいな」
どらくらいで固まり始めるかわからいので、僕は急いで上下に塗り込んだ。
四、3分程度放置し、印象材が固まるのを待ちます。
口腔内の温度によって固まる時間は若干変わります。
五、固まったら、ゆっくりと引っ張るようにして取り外します。
この時、垂直に引き抜くと歯へのダメージが軽減されます。
「なるほど。3分か。」
僕は時計を見たあと、まだ何か書いてある説明書に目を通した。
注意事項
差し歯、ブリッジなどの治療を行っている方は使用しないでください。器具が取れる原因となります。
また、銀歯・金歯を使用している場合は、それ以外の歯に使用するようにしてください。銀歯・金歯の上から印象材を塗ると、治療した銀歯・金歯が取れる原因となります。セラミックタイプの治療であれば問題ありません。
心臓がドクンと音を立てた。
「冗談だろ。もう銀歯の上に塗っちまったぞ」
僕は慌てて奥歯に手を突っ込んだが、すでに2分たっていた。
「固まっている。」
説明書よりも固まるスピードが早い。とはゆえ、まだ1分ある。今なら間に合うかもしれない。僕は力いっぱい引っ張った。瞬間、嫌な感覚が歯に伝わった。僕は恐る恐る舌で歯に触れてみた。ぽっかりと穴が開いている。
「マジか……説明書、最後まで読んでから使えばよかった。」
取り外した印象材にくっついている銀歯を眺め、僕はうんざりしながら歯医者の予約した。幸い、すぐに見てくれることになった。
「最近、多いんですよね」
歯科医が口の中を覗き込み状態を確認している。
「説明書、全部読まないタイプでしょ」
僕は口を開けたまま、うなずいて見せる。
「あれね、最後まで読むとちゃんと書いてあるんですよ。注意書きの但し書きに」
歯科医の説明に、僕は呆然と眼の前の光を見つめた。
但し書き
万が一、差し歯・ブリッチ・銀歯・金歯に印象材がついてしまった場合には、少し熱めのお湯を口の中で含んでください。印象材が溶け、流すことができます。印象材が溶けない場合は、お湯が温くなっている可能性があるため、何度か繰り返すことで印象材が溶け、洗い流すことができます。
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