Ⅳ
アブラゼミの鳴き声が響き続けている日中の公園。ベンチに寝転がった君は、ぼんやりと空を見上げている。頬には引っ掻き傷がついていて、あからさまにつまらなさそうな顔をしていた。
足元に置かれた黒いランドセルと緑色の植木鉢をなんとはなしに運動靴で蹴りながら、頻繁にやってくる蚊や蟻を潰したり頬や額から垂れる汗を腕で拭ったりしてる。
「あぢい」
呟く間も絶え間ない蝉の声。
熱中症になりそうな君は、それでいて一向に公園から去ろうとしない。ただただ、目をつむり、頭から汗をしたたり流す。かと思えば、時折、目を開けて起き上がって、公園の出入口の方へ視線を向けたりもする。
そうやって、起き上がったり寝転がったりを幾度繰り返しただろう。不意に、君は起きあがったまま目を凝らした。視線の先には、肩に水色の線が入った夏用のセーラー服に身を包んだ栞さんの姿。周りには同じ制服を着た友人とおぼしき少女たちがいる。栞さんを含めた集団はいかにも楽しげにお喋りをかわしていた。
そんな集まりの中にいる幼馴染みを君は石像になったみたいにじぃっと見つめている。
と。栞さんの視線が君とあった。瞬間、栞さんはあからさまに困ったような顔をする。途端に君は目を逸らした。
栞さんはすぐさま笑顔に戻り、友人とおぼしき少女たちとのお喋りにいつになく声を弾ませた。
公園の出入り口付近から少女たちがいなくなったあと、君は寝転がったまま日を仰いで、険し気に目をつむった。
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