第15話 ランチタイム
今日のランチは、アサヒとネフェリンと一緒に食堂に来ている。
何故「今日は」なのかと言うと、私は時々ソロランチをするからだ。これはアサヒと二人でいた頃からずっとである。ネフェリンはそうした私達の関係にちょっと怪訝な顔をしたけれど、今はもうすっかり慣れたようだ。
いつもは別邸の料理長が作ってくれる和風弁当を食べるのだが、食堂に来る時は基本的に食堂のメニューを頼んでいる。流石は王都の巨大な学園の食堂、どれもこれも凄く美味しいからだ。今日は野菜たっぷりクリームパスタにした。
美味しいね、と友人と和やかにお喋りしながら食べるランチもまた至福。
そんなゆったりした空間に。
「シーリオ様!」
何だか聞き覚えのある声が突入してきて、私は瞬間固まった。
「…誰?」
と小声でネフェリンに尋ねられるが、答える暇もなくその対象は私達のいる長テーブルにやって来る。
「こんにちは! 俺達もご一緒していいですか?」
笑顔で元気に挨拶する彼は、先日会ったケントさんだった。彼の友人だろうか、後ろにイケメンを一人連れている。
「あ、こんにちは。えっと……はい、どうぞ」
「ありがとうございます!」
ちらりとアサヒ達を窺ったら、アサヒは微笑んで、ネフェリンはしょうがないわねと言った顔で了承してくれた。優しい子達だ。私としては是非とも、彼らをお断りする大義名分が欲しかった、などとは言えない。
「この間はありがとうございました」
「いいえ、大したことはしてませんので」
隣りに座ったケントさんは私と言葉を交わすと、アサヒ達に自己紹介する。
ケントさんの反対隣りに座ったイケメンさんも、それに続いた。
「カールハインツ・セピアです。よろしくお願いします」
インディゴブルーの長い髪を首の後ろでまとめ、額を出した髪型なので薄い黄色の瞳がよく見える。顔立ちが少し年上っぽいイケメンの彼は、挨拶の最後にアサヒに目を留めてにっこりと微笑んだ。
(うわあ)
分かりやすい人だな、と半目なりながら目を逸らした先では、ネフェリンもまた冷めた表情をしている。何だか居たたまれない。
とはいえ一応は全員で会話は進んでいったのだけれども、私はパスタの味が全く分からなくなったのだった。
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