エピローグ 3 あー良かった。悪者じゃなくて。
すぐに目覚めた。
胸にあの鈍い痛みを感じる。浅い呼吸しかできず、体も
何度か
「やっと気が付いたね。良かった。もう永遠に眠ったままかと思ったよ」
ノエル先輩の
そちらに目を向けると、局長とベルウッドさんも一緒だった。
わたしは寝台に横になっていて、三人はその左側に座っていた。
局長は少し血色が良くないようだが、それでも前回よりはだいぶ元気そうだった。
「大変だったんだぞ。局長が必死にお前さんの怪我を治して、そのままぶっ倒れたんだ」
「わたしはもう大丈夫よ。丸一日休ませてもらったから」
「でもまだ手が冷たいな。もう一眠りした方がいい。俺も
ベルウッドさんはさり気なく局長の手を握る。
局長はベルウッドさんの手を握り返してから、その手首を
「えっと、あの……わたし、どのぐらい寝てたんですか?」
「二日半ってとこですね」
「幸いにもナイフは心臓から
「ありがとうございます、トヘヌベシ先生」
局長がベルウッドさんの手を放り離し、男性に
トヘ……??? 誰?
「初めまして、紗希さん。私はこのソエトク村の医師、トヘヌベシと申します。コタンシュのいとこです」
キョトンとするわたしに、トヘヌベシ医師は簡単に自己紹介をしてくれた。
コタンシュさんのいとこ? つまりニウア族?
医師とは言っても白衣姿ではなく、ニウア族の普段着と
あー良かった。悪者じゃなくて。なんか、ですます調で話す若い男性には、反射的に拒否反応を起こしそう。
「はい……初めまして。その……
「
うわっ、超優秀。しかも
ニウア族は倭俱槌人との接触は
わたしはノエル先輩の手を借り、ゆっくりと身を起こした。
しっかりとした骨組みで支えられた天井、中央の
小さな窓の外は明るく、雪深い村の様子が
断熱効果があるのか、意外と温かい。火さえ
「あ、局長」
ふと思いだして呼び掛けたものの、わたしはどう伝えれば良いのかあぐねてしまった。
夢の中で……はたまたこの世とあの世の
また局長を『あいつ』とか呼んでいたが、それに関しては
「その……軍曹が……局長に、よろしく伝えてくれって、言っていたので……」
我ながら妙な事を口走っていることに気付き、ちょっと後悔するわたし。
「そう。ありがとう」
局長は
ドアがノックされ、こちらの返事も待たずに開けられた。
入ってきたのはコタンシュさんとその奥さんと見られる女性、ションタク、そしてなんと
「サキ! 生き返った!」
コタンシュさんは涙ぐみながらわたしの
喜んでくれるのは嬉しいけど、ちょっと痛い。
「ニウアの血、もっとやる。サキ、もっと元気になる」
あれ? すると、輸血ってニウア族の人達から?
「ところで、朱室さん、どうしてここに?」
「昨日の朝、皆さんを迎えさぁ来たら、こん人にこごさぁ案内されました。お嬢さん、目ぇ覚めてホント
「事情を説明したら、コタンシュさんが犬ぞりで
相変わらずの
毎朝でも迎えに行きますと言っていた朱室さんに無駄足を踏ませるのは申し訳ない。この村まで来てもらって正解だろう。
ここから狐魑魅渓谷まで行ったとなると、岩山の向こうへ回り込んだのだろうか。遠い道のりだっただろうに、コタンシュさんとワンコ達にも感謝である。
そう言えば、朱室さんて名前、響きがニウア語っぽいけど、もしかしたらご先祖様はニウア族だったりして。
何やらションタクが母親の後ろに隠れ、もじもじしている。
母親が微笑みながらションタクの背を軽く押した。
はて? トイレにでも行きたいのかな?
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