エピローグ 2 戦争なんてやるもんじゃない。
「人を殺し過ぎた。特に
隣にいるわたしまで胸が苦しくなるほどに。
「でも……戦争だったんですよね。殺すか殺されるかの状況で……
「それならまだ弁解の余地もあるだろうがな……」
軍曹は
「人生で最悪の黒歴史だ。お前さんには知られたくないことばかりだよ」
そう言われると、知りたい反面、聞くのが恐くもなる。
ふと、ナヒトの
まさかとは思うが……戦場以外でも殺しを……?
この先はご想像にお任せする、とか無責任な締め方をされそう。
「長年
長年傭兵を経験してきたからこそ、説得力もある。
「兵士も民間人も関係ない。男も女も子供も年寄りも動物さえも、無差別に大勢殺される。その個々が、どこにも代わりのいない固有の存在だ。その
そこまで話すと、軍曹は顔を上げ、わたしを見返した。
「あとはご想像にお任せする」
やっぱりそう来たか。
でも、知られたくない反面、少しは伝えておきたかったのかな。わたしにドン引きされたり、
「軍曹も一緒に戻ってください。わたし達には……特に局長には、これからも軍曹が必要なんです」
「もう俺がいなくても、局長は大丈夫だろ。優秀で頼れる部下達がいるんだ」
軍曹の表情はほんのり悲しげだったが、未練は感じられなかった。
「それに、俺はもう満足だ。思い残すことはない。あんないい女の腕の中で至福の最期を迎えられたんだからな」
なんか、ベルウッドさんみたいなチョイエロ発言。らしくないなぁ。
「でも、お前さんはまだ死んじゃいけない。これからも、あいつの傍にいてやってくれ」
まったく、この期に及んでこんな所に来てまで、また局長のことを『あいつ』とか呼んでるし……。
まあいいか。言及はしないでおこう。様々な想像も憶測も、わたしの胸中にしまっておけばいい。
「ああ、そうだ。あの子が、お前さんによろしく伝えてくれって」
「? あの子?」
軍曹は当然のように言ってきたが、わたしには誰のことやら見当も付かない。
「あの子って……誰です?」
「決まってるだろ。あのバカでかい
そっか。そういうことだったのか。
ずっと気になっていたナニモノかの正体を、やっと知ることができた。
あの巨大紅衣貌のさらなる巨大化と、
ナヒトの体内に移植された
正しい心の少年だったのだろう。だから、あんな
わたしだけ気付くことができたのは、わたし独自の能力によるものだろう。
「名乗りもしないで、さっさと向こうへ
一言、お礼を述べたかった。せめて名前ぐらい知りたかった。その子の助けがなかったら、わたし達は全滅していたかもしれないのだから。
わたしは少しの間、
名前も顔も知らないけれど、本当にありがとう。
そしてゆっくりと目を開け、軍曹を見つめた。
「じゃあ……もう戻ります。どうかお元気で……」
我ながらなんてお
軍曹は
わたしは軍曹の手を両手でしっかりと握り
その手は不思議と温かかった。まるで生きているかのように。
わたしは歩き出した。
勇気を出して白い
そしてそれほど進まないうちに、なぜか胸の辺りに鈍い痛みが
「こっちへ戻るんじゃない。
背後、霞の
行きたくないなぁ。痛いし苦しいし……。
でも、この先へ行かないと、きっとわたしは永遠に目覚められないのだろう。
意を決し、再び進んだ。今度は少し早歩きで。
また胸に鈍い痛みが、全身に重怠さが、そして息苦しさがやって来る。
それでも
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