エピローグ 1 神にしても悪魔にしても……。
わたしは暗闇にいた。背中と胸が痛み、息苦しい。
それもそのはず、物凄いスピードで体が上昇していたのだ。実際のところ、この暗闇空間では上下左右は認識できなかったのだが。
それにどういうわけか、進むに
行く手に、青緑色に
不思議と恐怖は感じなかった。
幼い頃に一度会っている。正体こそ知らないが、危険な存在ではないということだけは知っていたのだから。
わたしに
青緑色の雲が
そして突入。
【この世は人の子から出た邪念で満ち
理解、記憶できたのはこの程度だった。
無数の微粒子がわたしの体を突き抜けていく時、これまた無数の
この微粒子一つ一つが、あの青緑色の人物の意思を
けれども、わたしはこの上なく爽快な気分だった。昔、
そして、
『我が
そこで目の前が真っ暗になった。
名前を呼ばれ、わたしは目覚めた。
目の前には
「お前さんまでここに来てどうする?」
軍曹は
わたしが座っていたのは川辺の土手の上に堂々と
心地良い日差しと
不思議なことに、川の向こうの対岸は霧か
「あれ? 軍曹、無事だったんですか?」
わたしの問いに、軍曹がコケそうになった。
「無事ならこんな所にいるわけがないだろ」
そこでようやく、わたしは事態を
「死んだんですね、わたし……。なんか変な夢を見ました。入信の勧誘みたいな言葉をいっぱい聞かされたような……」
「ああ、
軍曹は桜を見上げ、ウンザリ気味に答える。
「しかしなぁ……人の子に
たぶん、あの御使い気取りさん達に言わせれば、『人の子が自分で蒔いた種なんだから』なのだろう。人間から出た狂悪な思念が種となり
でも、なんか納得が行かない。
神にしても悪魔にしても、わたし達人間のあずかり知らない領域の存在であることに変わりはないのだから。
あんな
「まあ、それはさておきだ、紗希、お前さんはまだ戻れる。早く戻った方がいい」
軍曹は思案するわたしに視線を戻し、優しく
「もう俺はあっちに行かなきゃならない」
「戻るって……どうすれば……?」
わたしとしては、もうしばらくここで軍曹とお花見を楽しんでいたい気分だ。しばらくと言わず、ずっとでもいい。ここはとても
「俺と反対方向、そっちへ行くんだ」
軍曹は巨木の後ろを指し示した。
立ち上がってそちらを望むと、やはり白い霧のようなものがかかっていて、何も見えない。
「俺はあの橋を渡って川の向こう側へ行く」
「橋を渡ったら……軍曹はもう戻って来ないんですよね?」
「仕方がないさ。まあ将来、お前さんの子供に生まれ変わることでもできたら最高だな」
冗談めかしの軍曹。
「それとも……地獄行きかな」
こちらは冗談に聞こえず、深刻そう。
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