第四章 19 このドアの向こうにあるのは……。
着いた先では明るい空間が認められた。広さは平均的な体育館ぐらい。
壁や天井に何本も金属製のパイプが走っており、中央辺りには破壊されて中の配線等が
床には装置の一部や水槽の破片が散乱し、その中身の液体と、そして血痕でほぼ一面が
実験・研究施設のようだ。
動く影は確認できない。
「実験に失敗でもして、何かが爆発したのかな?」
ノエル先輩は
「分かりませんけど、これだけの設備があるなら、
「そうだね。そこにあるのも、なんか紅衣貌っぽいし」
そう言ったノエル先輩の視線の先には、破片の中に転がるピンク色の小さな
「核となる原体があって、条件が
と、局長。
アンブローズに入った当初、紅衣貌について現時点で明らかになっている
紅衣貌とは負の思念、悪霊や
もちろん思念の主は人間とは限らない。それなりに高度な知性と精神構造を持っていれば、どんな生物でも死後強い残留思念の
謎なのは、核となる原体の
ちなみに、わたしはその原体とやらを見たことはない。局長と軍曹でさえ、まだノエル先輩と出会う以前の頃、一度しか
二人
わたしが真っ先に
少し長くなってしまったが、これが現段階でわたし達が知り得る、紅衣貌についての最新の全情報である。
「天然物の紅衣貌って、ああ見えて安定した状態だったんですね」
わたしは今さらながら驚いてしまった。
「まあ確かなことは言えないけど、整合性の問題よ。天然物は相性のいい思念のみが自然に引き合って形成されるから結合力も強いけど、人造の場合は違うと思うの。作る時にいちいち思念同士の相性を調べたりはしないだろうから、そうなると、何でも構わず無理矢理押し固めたことになる。ちょっとした刺激で簡単に壊れてしまうと思うわ」
局長はそう説明しながらしゃがみ込み、破片に
度胸があるなぁ。死んでいると分かっていても、わたしはこんなに顔を近付けたり触れたりするのはためらってしまうのに。いきなり生き返って暴れ出したらどうしよう、とかお子様的発想で怖いだけなんだけど……。
こんなこと言ったら、またベルウッドさんにガキンチョって莫迦にされそう。
「風が来るな」
ベルウッドさんは片手を宙に
そこには半開きの古い鉄製のドアと、『ホール』と
慎重にドアを開けて
また螺旋階段。好きだなぁ。
あれ? ホールって……まさかとは思うけど、あの円筒形空間だったりして……?
螺旋階段には血痕らしき赤い足跡が
先程のような紅衣貌達が大量に押し寄せて来たとか、何かとんでもない
「あっちからも風が来る」
ベルウッドさんが、今度は別の方向を示した。
行って確認すると、そちらにはまだ新しそうなドアが半開きになっていた。ドアに貼られたプレートには『第二研究室』と書かれている。
赤い足跡はそのドアの向こうへも続いているようだ。
局長は念のために剣を抜き、警戒態勢でゆっくりとドアを開ける。
三十段程度の上り階段があり、また同様のドア。足跡も上った先のドアまで確認できた。
ひゅうひゅうと幽霊が出てきそうな音が響いている。風の音だ。この階段は直接外に通じているようだ。
いくら方向ド音痴のわたしでも分かっていた。このドアの向こうにあるのは
慎重に階段を上り進むと、先頭の局長はドアノブに手を掛け、わたし達に
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