第四章 14 そもそも歓迎したくない。
「おや、皆さんお
ナヒトは
「軍曹は風呂だ」
ベルウッドさんから
軍曹とわたしが重傷だった姿も、それに局長がわたしだけを治していた様子もナヒトは見ている。
それを踏まえて、この食事の場にわたしがいるのに軍曹がいないという状況を確認すれば、少なくとも軍曹が動けない状態にあることは察しが付くだろう。
そもそも、村でただ一件のこの診療所に来たのも、そういったことを想定していたためなのかもしれない。
「こんな時間に来るなんて非常識ね」
詰め寄る局長。
時間帯以前に、そもそも歓迎したくない。明けても暮れても。
「お待ちください、神楽坂局長」
ナヒトは両手を上げたまま、薄笑いを浮かべる。
「ご相談に参りました。聞いていただきたい」
「内容によっては、即却下」
局長は進み出て剣を振り、ナヒトの喉元で切っ先を寸止めした。
ナヒトの顔から薄笑いは消えない。ただの脅しだと分かっているのだ。わたし達アンブローズは、原則として人は手に掛けないのだから。
「まずはお悔やみを申し上げます。軍曹殿のこと、ご
やっぱりバレてた。いや、もしくは、半分
「
局長は嫌味たっぷりに言い返す。
手土産の有無以前に、そもそも歓迎したくない。しつこいようだが。
「その点はご
嫌味に冗談で返すところは掛け値なしに律儀である。
「では本題に入らせていただきます。軍曹殿のご遺体をこちらに引き渡していただけませんか?」
ナヒトの平然とした物言いに、局長も、ベルウッドさんも、ノエル先輩も言葉を失った。
不感にも、わたしは
あの
「お断りよ。はいどうぞ、とか
すぐに平静に戻った局長が突っ
「私もさすがにそこまで甘い考えではありませんよ」
「実は、今この村の近くで、私の仲間が二百人ほど
腹立たしい言い草。
それにしても
しかし、どうしたことか、局長はフンと鼻で笑って返した。
「じゃあ、四人で手分けして片付けるまで。一人五十人ずつ」
さすがに、わたし達は顔を
局長は頭が狂ってしまったのだろうか? 一気に二百人もの敵に押し寄せられて、そこら中を破壊され放火されれば、村民の多くが
「神楽坂局長、正気ですか? 死体一つと村一つ、どちらが大事か、よくお考えください」
「そっちこそよく考えたら?
局長は冷酷さすら帯びた笑みを浮かべた。
さしものナヒトもポーカーフェイスをわずかに
「……なるほど。お互い、大多数の犠牲者を出す行為は
もっとしつこく喰い下がるのかと思いきや、ことのほかあっさり折れてくれたが、何か裏がありそうで不気味である。
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