第四章 10 俺は妄想しかしない。
―――といったやりとりから、
そうなると、ナヒトを含めたアポカリプスの信者達が所持していた拳銃、あれはきっとわたし達の手に渡るはずだった物なのだろう。
村の診療所で点滴を受けながら、わたしからも
ちなみに診療所の医師は、今夜自家用スノーモービルを出してくれた
「あとは栄養と休養を十分に取ってください。主人が夜食も準備していますのでどうぞ」
奥さんの朱室医師の方は
「本当にありがとうございます。助かりました」
「お大事になさってください」
局長は恐縮していたが、朱室医師は笑顔で答えてくれた。
寝台の上で身を起こすと、やはりまだ少し
全員診察室を出て、居間の方へ向かう。
ランプで明るかった診察室とは違い、廊下は暗い。この村は電気が通っていないのだった。
食事の前に、ちょっと自然の用を足しに行こう。
「紗希ちゃん、大丈夫?」
皆と反対方向へ向かうわたしに、ノエル先輩から心配そうな声が掛かる。
わたし、やっぱりヨタヨタしてんだな。
「トイレなら、僕も一緒に行くよ」
そう言ったノエル先輩は、わたしの両肩をそっと押さえてくれた。やっぱり優しい♥
「ありがとうございます」
「紗希」
ベルウッドさんに呼び止められた。
「襲うなよ」
まったく、
局長とノエル先輩が軽く吹き出していた。
ムキになってもこの
「ベルウッドさんこそ、局長のことを襲わないでくださいよ」
「こんな品位ある紳士に向かって失礼な。俺は
「妄想も禁止ッ」
局長から
「妄想ぐらいいいだろ。減るもんじゃないし、誰にも迷惑は掛けない。男のささやかな道楽だ。なぁ、ノエル?」
品位ある紳士の発言とは程遠い。
「あ~いや……僕はそういうの、よく分からないんで……」
突然振られ、ノエル先輩が困惑する。
「局長命令よ。従いなさい」
「妄想の自由もないのか。飛んだパワハラだ」
どの口でほざいてるんだか。セクハラ常習犯のくせに。
「ノエルを巻き込んで
「人生の先輩としていろいろ教えるべきことがあるんだ」
まだまだ続く局長とベルウッドさんのやりとりを背に、わたし達は廊下を歩いてトイレへと向かった。
ノエル先輩が右手に青緑色の淡い小さな光塊を生み出し、行く手を照らす。
なるほど。こんな使い方もあったのか。殺傷能力や形に
角を曲がった先にトイレがあった。
暗いし一人で来るのは少し怖い。ノエル先輩が一緒に来てくれて良かった。
「局長、意外と元気そうで安心したよ」
ノエル先輩が
約五年間、ノエル先輩は局長と軍曹を見てきたのだ。局長にとって軍曹がどれほど大切で掛け替えのない存在か、痛いほど分かっている。だから自分で悲しむよりも、局長のことを心配していたのだろう。
「強い
「それもあるけど、ベルウッドさんのお陰じゃないかな。ふざけているようで、ああやって気を
なんて好意的な見解だろう。あのセクハラ常習犯ドSジョリジョリオヤジを、わたしはそんな
「あ、僕は後でいいよ。先に入って」
これぞ本当の品位ある紳士♥
わたしはノエル先輩の真似をして片手に小さな光塊を作ったが、やはり夜のトイレは怖いので小早く用を足し、手を洗って廊下に戻った。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます