今さらのプロローグ 8 あ、やっぱりいいです。
「なんてざまだ」
「チンピラなんてあんなもんですよ。どうせ、箱の中身だって
面倒くさいので、いちいち中身を確認する気もないが。
「そうじゃない。紗希、お前さんのことだ」
ベルウッドさんの人差し指が、わたしの頭を軽く
「あんなチンピラ相手に、いちいち
「分かるんですか? わたしが練識功を使ったって」
「近くで使われると、鼻の奥がビンビンするんだ。そんなことより、あの程度の連中、
「無理ですよ。力
「
「れ、練習ならしてます!」
わたしはベルウッドさんにプイと背を向けて再び歩き出したが、ふと一つの疑問が浮上し、チラリとガン助を見てから
「ところで、さっきガン助がチンピラ達を
すると、ベルウッドさんは急にしたり顔になった。
「ガン助はちゃんと空気を読めるんだよ。どれだけ利口かっていうとな……」
これはもしや愛犬自慢?
「出張娼婦の女の子が来た時が天才的なんだ。俺は冷たくされると熱くなるタチだからな。俺がどれだけ
「あ、やっぱりいいです」
わたしはベルウッドさんの
愛犬自慢から助平オヤジのエロ談話になってきたので。
それから十分程度歩き、ようやくオフィスの前に
薄汚れた古いコンクリート製の建物。それでも、バラックばかりのこのスラム街では数少ない真っ当な建造物の一つだ。
普通なら足を踏み入れるのさえためらうような
ベルウッドさんですら、盲目でなかったらドン引きしているかもしれない。
「ここです。階段を上ったところです」
わたしが言うと、ベルウッドさんは薄暗い階段の前で立ち止まり、頭をゆっくりと左右に動かす。
「なかなかいい感じの場所だな」
「慣れれば
わたしは軽い反論も込めて言い返し、階段を上り始めた。
念のために振り返ると、ガン助が上手に
二十段上り切ってドア。
中に入ると、外観からは想像も付かないような明るく清潔感のある内装だった。
灰色のコンクリート製の床には
ノエル先輩が左側のソファに一人で座っていた。
「やあ紗希ちゃん、おはよう」
世界一
「おはようございます、ノエル先輩」
自然と声が
明らかなわたしの声の変化に気付いたのか、ベルウッドさんがほんのり
ノエル先輩はベルウッドさんに軽くお
「初めまして。
「ルーサー・
ベルウッドさんの物言いはぶしつけだった。どちらかというと
「何がそんなに気に入らないんです?」
いい大人が、初対面で無礼な振る舞いとは感心しない。
「気に入らないも何も、昨夜お前さんに言ったはずだ。局長に会ってビシッと……」
「おお来たか、紗希」
ベルウッドさんが台詞半ばのうちに、もう一人奥からやって来た。
がっしりとした
「軍曹、おはようございます」
「軍曹?」
ベルウッドさんの
なぜか突然、ガン助がクゥンクゥンと鳴きながら、軍曹の脚に鼻を
ベルウッドさんはガン助の頭を撫でて落ち着かせた。
わたしの気のせいだろうか? ベルウッドさんがほんの一瞬だけ表情を
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