今さらのプロローグ 6 はっきり言ってむさ苦しいです。
「紗希、いつまで寝てるんだ? 起きろ」
ベルウッドさんの声がした。
「いい加減、起きないとキスするぞ」
わたしは目を開けると同時に、反射的に
硬い
「イテテ……。いきなり顔面を
「乙女の
「さっきから何回起こしても起きないからだ! ……ったく、人のベッドで
確かに、朝に弱いわたしでも
昨夜、ベルウッドさんはさんざん
何やらご飯の
「朝ご飯、作ってくれたんですね。ルーちゃん優しい♥」
「泣かすぞ、クソガキ」
ベルウッドさんは
準備をしてダイニングに行くと、朝食は炊き立てご飯と目玉焼き、そして昨夜のポトフの残りだった。
ガン助はテーブルの横で食事中だ。
「そう言えばお前さん、学生か?」
食べ始めてしばらくして、ベルウッドさんに問われた。
「……いえ、違います」
そっぽを向きながら答えるわたし。見えないベルウッドさんの前では意味がないのだが。
「それよりベルウッドさん。食べ終わったら、髪を切りましょう。あと、
「そんなに俺の見た目は
「はっきり言ってむさ苦しいです。今の姿だとホームレスと見分けが付きません」
「……分かった。じゃあ頼む」
反論するのかと思いきや、ベルウッドさんはことのほか素直に応じてくれた。
わたしは美容師ではないが、子供の頃はよく弟 雄介と床屋さんごっこをして遊んでいた。何度か失敗はしたものの、お陰でそれなりのセンスは身に付けられたつもりだ。男性の髪型なら、まあまあな仕上がりにする自信はある。
髪を短く切り
ちなみに、本人たっての希望で、口髭と顎髭は少しだけ残してやった。
この時点で初めて、わたしはこの人が三十歳前後であると知った。
さらにこれまた本人のこだわりで、
「何だかんだ文句を言ってた割に、結構
でも、やはり気になるのが、白ワイシャツ、ベスト、それにジャケットと
わざとやってるのでは、と疑いたくなる。
「ビシッと決めなきゃ相手に
ベルウッドさんがネクタイを差し出してきた。栗色地に細かい白の
「それよりまずはボタンをちゃんとしてください」
ボタンを掛け直し、あまり
「カッコいいですよ、スーツが。
「泣かすぞ」
「
わたしはふと
他でもない、昨夜わたしが被っていたフェルトハットだ。
もう一つ、やはりわたしが持っていたサングラスをかけてやり、最終形態となった。
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