今さらのプロローグ 5 このオッサン、案外扱いやすいかもしれない。
「分かりました。じゃあこの後、わたしミナちゃん達に、あることないことルーちゃんの悪口を言いまくってきます」
「な……っ!」
「その後、ママの所に行って、『息子さんに
「何だ、その
ベルウッドさんは信じられないほど
「脅迫なんかしていません。お願いしてるんです」
わたしは
「さっきも言ったがな、全盲の俺に何ができる?
「さあ……? それはどうでしょうか?」
わたしは改めてダイニングとリビングをざっと
「さっき、わたしがドアの前に立った時、すぐに開けましたよね?」
「そんなのは足音が聞こえれば分かる。待ち人がいたんだからなおさらだ」
「それだけじゃありません。見た感じ、部屋もきちんと片付いてます。料理の
「それがどうした? 整理整頓や料理なんて慣れれば大体できる。ママに教えてもらったしな」
ベルウッドさんはしらを切り、ぶつけた脚を
だが、わたしとて
テーブルに
その瞬間、ベルウッドさんは椅子を倒して立ち上がり、一歩踏み込んで右手を伸ばした。
床に落ちようとしていたワイングラスを見事にキャッチ。
「いきなり何てことするんだ⁉ 危ないだろ!」
「これも、ママに教えてもらったんですか?」
怒るベルウッドさんに、わたしは勝ち
ベルウッドさんは軽く舌打ちし、キャッチしたワイングラスをテーブルに置いた。
「見えてるわけじゃない。音や声の反響で分かるんだ。気配なんかもあるけどな」
「ふふーん。とうとう白状しましたね」
ニンマリと笑うわたし。もっとも、表情までは見えないんだった。
しかし、ここまでの危険予測まで可能なのに、なんでボタンを掛け違えるんだろう?
「でも、お前さん達の仲間になる気はないぞ。俺はつましく平穏に暮らしたいんだ」
「じゃあ、ミナちゃんとママに……」
「ああああ分かったよ! 話だけは聞いてやる!」
ベルウッドさんは泣きそうな声で叫んだ。
そもそも、わたしはミナちゃんの職場も知らなければ、ベルウッドさんのママとも面識はなく住まいも知らない。
この脅迫……もとい、前述した内容は実行不可能なのだ。
このオッサン、案外
「早いとこ、お前さんのボスに会わせろ! 一発ガツンと
ベルウッドさんはヤケクソ気味に言い放った。
「ありがとうございます。じゃあ早速、明朝オフィスへ案内します。局長に連絡しますので、電話借りますね」
わたしは少しだけぶりっ子声を出し、リビングへと向かった。
「あ、それから……」
電話のダイヤルに指を掛けたところで、ベルウッドさんの方を振り返る。
「今夜はここに泊めてください。明日の朝、ここからオフィスへ直行しますので」
ポトフを食べていたベルウッドさんが
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