第三章 10 ちょっと待てい。石が動くはずはない。
「では、私はここで引き返させていただきます」
「え? 一緒に来てくれないんですか?」
こんな頼りない兄ちゃんでも、いなくなると
「皆様の足手
『この下?』
軍曹とわたしは声を
「はい。ここからは
言われて足下を照らせば、確かに
周囲に灯りを向ければ、目視できる
下を
「そうか。ここまでの案内、どうもありがとう」
軍曹は伊太池さんに右手を差し出した。
「どうかお気を付けて」
仕事とは言え、伊太池さんも長い道のりを行ったり来たり大変だなぁ。
今度は軍曹を前に、螺旋階段を下り始めた。
「特殊部隊も
軍曹が小声で改めて
確かに、戦場の経験がないわたしでさえ
とは言え、訓練を重ねた特殊部隊だ。十分な下調べと安全確認の末の判断だろう。
外気が吹き込んでいるらしく、フオンフオンと風の音が不気味に
先程の通路もそうだが、この円筒形の空間も、人の手が加わった
ここの岩肌にもやはり、深紅色のキラキラが沢山ある。
それからわたし達は
下へ向かうに
少し疲れてきた。まったく、この螺旋階段。
たぶん、建物の高さにして十数階はあっただろう。
やっと底に辿り着いた。
フオンフオンと変な音は
それより、特殊部隊はどこにいるのだろう?
敵のアジト内ということもあり、あまり声を出すわけにも行かない。わたし達は懐中電灯で周囲を照らしながら人の姿を探す。
相変わらずの岩肌と、軍曹の姿と、巨大な深紅色の石。
特殊部隊らしき姿が見当たらない。
……ん? 巨大な深紅色の……?
わたしはその場所をもう一度照らす。
深い深い紅色だった。その色はあの
その石が
先程から聞こえるフオンフオンという音も、どうやらその深紅色の石から
ちょっと待てい。石が動くはずはない。
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