第三章 4 ただの変態です。
出発前夜、夕飯後のこと。
ノエル先輩が
「すみません、すぐ帰りますので」
「
「ちょっと! ベルウッドさん!」
わたしはベルウッドさんに蹴りを入れ、真っ赤になったノエル先輩の背を押して
施術室は薄い白カーテンを通して窓から表の
「ベルウッドさん、
「ただの変態です」
わたしは悪態のように答え、寝台に座った。
「明日朝早いのにごめん。でも、四、五日紗希ちゃんに会えないって思うと寂しい気がして、会っておきたくなったんだ」
ああこの
ノエル先輩はわたしの隣に着く。
「ありがとうございます。わたしもノエル先輩に会えて、凄く元気が出ます。今から緊張しますけど」
そう。今夜この短い時間に、勇気と元気を一杯
「紗希ちゃんなら大丈夫だよ。軍曹も特殊部隊も一緒だし、何より紗希ちゃん自身、この三ヶ月で目に見えて腕を上げたんだ。紗希ちゃんはもう立派なアンブローズの戦士だよ。今回は余裕だろうし、いろいろ勉強するつもりで行けばいいよ」
わたしにとってはこの上ない
実はあれからノエル先輩協力の下、猛特訓の末、精神エネルギー塊を弾丸のように放つことができるようになったのだ。一発だけ。
今回の小規模集団相手に
ノエル先輩に褒めてもらえたのだから、わたしも自分を褒めてあげよう。
そして褒められるのも嬉しいが、寂しがられるのは超絶歓喜の
まだ外の通りは人が多く、足音や話し声、それに馬車や自動車の走行音が近付いては去ってゆく。
しばし会話が
わたしの
その手が肩に掛かり、そっと抱き寄せられた。
幸福絶頂。でも、わたしは緊張して全身が
あなたの
決して
出し抜けに聞こえた歌に
「お
ベルウッドさんである。
「
「それは嫌味か?」
あ、そうだ。見えないんだった。ここは立ち聞きと言うべきだった。
「ご、ごめんなさい。もう帰りますから……」
怒られると思ったのか、ノエル先輩があたふたする。
「いや、ノエル。やっぱり泊まっていけ」
「でも……ベルウッドさん、紗希ちゃんを縛るのはさすがに犯罪だと思います」
……って、
「そうじゃない。今夜から紗希が帰ってくるまでの間、いてほしいんだ」
「案外寂しがり屋ですね。ガン助がいるのに」
日頃の
「寂しいもんか。お前さんを起こす手間がない分、ストレスが減ってせいせいするよ。それよりノエル、紗希が帰ってくるまでの間、朝の
出発前夜でこっちは緊張しているというのに、平和なオッサンである。きっと修学旅行にでも行かせる感覚なのだろう。
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