第二章 3 しかも『僕』とか言ってるし気持ち悪い。
山中なので戦火を
駅を出て、降り
道沿いの古い木造の家々の屋根にもそれほど大量の雪は乗っていない。こちらも定期的に雪掻きをしているようだ。
わたしはいちいち
「おばさん、久しぶり」
ベルウッドさんは小さなお土産屋の前で立ち止まり、中にいる中年女性に声を掛けた。
お土産屋の女性は
「もしかしてルー坊?」
ルー坊?
「ずいぶん見違えたね。男前過ぎて、ガン助がいなきゃ誰だか分からなかったよ」
「男前は生まれつきだよ」
しゃあしゃあと抜かすな。
「その
「あ、そう見える?」
喜んでないで否定しろ。莫迦オヤジ。
だが、ここで公然とベルウッドさんを
「何ィ? ルー坊?」
店の奥から中年の男性が現れる。おばさんのご主人だろう。
「半年ぶりに帰ってきたと思えば、美人連れか。どこで捕まえた?
帰ってきた? つまり、ここ
「那珂畠には美人がいっぱいいるんだ。おじさんも今度一緒に行こうよ」
「そんなこと言うんじゃないよ、ルー坊。この人本気にするから」
おばさんがご主人の肩をバン! と叩き、大笑いした。
とっても痛そうな音がしたけど……?
「じゃあ、また後で来るよ。ママにも会いたいし」
ベルウッドさんも笑いながら
「ママって? ベルウッドさんのお母さんですか?」
少し歩いたところで
「俺を育ててくれた人だ。世界一素敵な女性だ」
ベルウッドさんは
それからもベルウッドさんは見知った人に
目的地とはもちろん、ベルウッドさんの実家である。
一見、温泉宿街に溶け込みそうな、やはり古い木造家屋だが、玄関の表札に『胡楠教会』と書かれている。
ベルウッドさんはガラガラと引き戸を開け、中に入った。
「ママ―、ただいまー」
呼び掛け、荷物
「出掛けてるのかな?」
「
「この町には
ベルウッドさんが言い終わると同時に、背後に人の気配がした。
振り返ると、農作業服姿の白人女性が立っていた。おそらく年齢は五十代前半。土と雪で汚れた長靴を履き、大きな白菜を一玉抱えていたが、どことなく上品そうな雰囲気だった。
「あら、ルーサー、なの?」
女性の声は歓喜と驚愕に
最初に会ったお土産屋の
「そうだよママ、僕だよ。元気だった?」
ベルウッドさんは嬉しそうに答え、女性を抱き締めて
人をファザコン呼ばわりしておいて、自分も相当なマザコンじゃないか。しかも『僕』とか言ってるし気持ち悪い。
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