第8話 戦いのあとに

目の前にいるのは国内でも屈指の剣の技術を持つ、シャルロット・ルミナス。

第一王女にして剣のスキルに恵まれた天才だ。



「少し痛いが一旦お前を気絶させ、

 拘束する…」



おそらく、みね打ちだ。

達人にもなると剣で相手を気絶させて無力化できる。

流石に殺しはしないだろうが、

次に来る一撃を心の底から恐怖する…



「喰らえ…」



剣が当たるその瞬間…



「プロテクション!」



誰かが魔法を発動し俺とシャルロットの間に光の壁を創造させた。

回復魔法使いが使える防御結界魔法だ。

沈黙?していたはずのマリアによる詠唱だったのだ。

俺は間一髪のところマリアの魔法により救われた。



「マリア!!」



「お姉様、申し訳ありません…

 彼は私を救ってくださった命の恩人です」



「だが、お前に何かしたのではないのか?

 盗賊を倒した後に何かよからぬ事を…」



「そ、それは私に問題が…

 驚いてて、少し考え事を…

 お姉様に気付かなくて…」



マリアは照れつつも可愛らしく言い放った。

この聖女、天然なのか?

途中から考え事をして呆けていただと…



「か、勘弁してくれ…」



姉妹の掛け合いに緊張感が解けたのか、

自分自身が倒れてしまった…

恐らく刺された傷は深かったのだろう…

流れている血の量は多い気がする。

シャルロットとマリアが慌てて俺に駆け寄り、必死に声をかけてくる。

そして二人の声が少しずつ聞こえなくなり目の前が真っ暗になっていった…




◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆




どれくらいの時間が経っただろう。

俺は王都の医療病棟のベッドの上にいる。

部屋にはシャルロット、マリア、そして父上とアリス、リーナがいる。



「お、お兄様!」



アリスの声が聞こえる…

とにかく怠さが押し寄せてくる。

すぐには周りの状況を認識できない…



「ようやく目が覚めましたね…」



マリアが回復魔法をかけていたようだが、

俺が起きたのを見計らって魔法を止める。

出血量が多く倒れてしまった俺に回復魔法をかけて処置していたようだ…



「す、すまなかったな…

 妹の恩人に剣を向けてしまって…」



バツが悪そうにシャルロットが言う。

先程は頭に血が上っていたがマリアから真実を聞き、少し落ち込んでいたようだ…



「いえ、説明しなかった俺が悪いのです…」



俺も本当に反省している…

武器屋で迷惑をかけた婦人に申し訳ない…

落ち着いたら謝りに行こう…



「殿下、謝られる必要などございません…

 鍛錬が足りなかったのです…」



父上がシャルロットを庇うように言う…



「まさか、ゲイルの息子だったとはな…

 すまなかったなゲイル、そしてクリス…」



シャルロットは心から反省しているようだ。



「ところでお兄様は、

 明日の儀式に参加出来るのでしょうか?」



アリスは俺と共に儀式に出れなくなるのが

心配になり回復魔法をかけていたマリアへ問いかける。



「一日休めば明日は問題ないですよ…

 でも儀式とはスキル鑑定ですか?」


「はい。俺とアリスは12歳なので、

 明日に鑑定の儀式を受けるのです…」



数日間に沢山の出来事が起き過ぎて、

大切な一大イベントを忘れそうになる。

たがレガード家にとっても明日が本番だ。




「それでは明日、命の恩人様の儀式を、

 皆んなで見守りましょう!」



「良いわね!私も明日は非番なのよ!

 マリアと一緒に応援しにいってあげる!」




は!?なんだと…

明日、みんなで見に来るだと?

王女2人に騎士団も護衛に来るだろう…

そんな大所帯で来られた日には、

プレッシャーなんてもんじゃないぞ…



「いやいや、忙しいでしょうし、

 せっかくのお休みに申し訳ないです…」



なんとか2人が来るのを回避したい俺は必死になるが父上を見ると頭を抱えて真っ青になっている…

アリスも口が開きっぱなしだ…



「決まりですね!

 明日は私もシャルロット姉様も休みです…

 応援してますので頑張ってくださいね!」



俺の話は聞いていなかったかのように、

明日の予定が決まって行く…



「せ、精一杯頑張ります」



そしてお見舞いに来た連中は帰って行った。

今日はこの病棟に泊まり明日に帰宅する。

明日は午後から儀式だ…

今日は色々ありすぎて疲れた…

転生前の記憶でも同じように苦労を背負い込んでいた気がする。



いい加減、少し休みたい…

明日こそゆっくりしたい…



だが、明日はスキル鑑定の儀式だ…

ゆっくりできないのは既に分かりきっている…

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