第7話 シャルロット・ルミナス
ルミナス王国の第二王女、マリア・ルミナス
国内最高の回復魔法使いが目の前にいる。
肩までかかる長さの金髪はまるでシルクのように美しい。
そして表情は綺麗と言うよりは愛嬌のある可愛らしい印象だ。
まさにルミナスの聖女という名前に負けない容姿。
そんなアイドル的存在のマリアを見ながら、
俺はどうしたら良いか分からなくなっている。
「ありえない…」
「肌とか髪とか……私より…」
「そんなことない…私だって」
消えいりそうな独り言が聞こえてくる。
「あのー!聞こえますか?」
先程からずっと呼びかけているが全く反応がない。
そんな中、こちらに向かってくる新たな来訪者の足音が聞こえて来る。
「マリア殿下がいたぞ、こっちだ!!」
王国騎士団の精鋭達のようである。
5、6名の捜索隊だろう。
王国騎士団は銀のフルプレートメイルを装備しており胸に騎士団専用の刻印が刻まれている。
そしてマリアに似た金髪の少女が声を出す。
「マリア、良かった…
やっと見つけた…
貴方がマリアを助けたのか?」
マリアの姉のシャルロット・ルミナス。
ルミナス王国第一王女であり現在13歳。
マリアと同じ綺麗な金髪だが、
ショートカットで活発な印象に見える。
そして剣の腕は、王国でも屈指の実力だ。
ルミナスは男の世継ぎがいないため次期後継者として筆頭候補だ。
「私が盗賊を倒し、
王女様を救いました…」
クリスは咄嗟の尋問に焦ってしまうが、
変な嘘はつかず正直に話すことにした。
「殿下…
この者はウソをついていないようです」
真偽鑑定の出来る鑑定士も同行している。
そのおかげで真実を話せば分かってもらえると安堵した。
「マリア、帰るぞ!!
マリア!!」
シャルロットは必死に呼びかけるがマリアは微動だにせず反応しない。
「マリアに何かあったのか?
助けてくれたんだよな…?
まさかお前がやったんじゃないよな?」
「い、いえ俺がやったわけではなく…」
「殿下、発言に嘘の反応が出ています。
この者も何かに関わっています…」
鑑定士がクリスの細かな発言に反応する。
マリアを盗賊から救ったのは事実だが、
それと同時に機能停止させたのもクリスなのである。
「き、貴様!マリアに何をした!」
「いや、何もして無いんだって…」
「殿下、これも嘘です!」
すぐに鑑定士が嘘の鑑定をしてしまい、
クリスは完全に逃げ道を塞がれてしまった。
「先程、ドワーフの武器屋で、
婦人が錯乱状態になっていたそうだ…
あれもお前が関係しているのか?」
「いや、あれは俺のせいというよりは…」
「殿下、嘘の反応が出ています
この者は武器屋の事件にも関わってます」
重なり合うようにクリスに不利な状況が生まれる。
悪循環とはこのことである。
「お前は危険人物の可能性があるようだな。
そのために無力化して王都に連行する!」
「お、俺の話を聞いてください!」
シャルロットは剣を抜き王国式剣術の構えを取った。
正面から突っ込んでくる。
や、やばい…
今までの相手とはわけが違う。
天才シャルロットは父上と同じレベル。
しかも油断など全くしていない状況だ。
こ、殺されてしまう…
シャルロットの速い斬撃を咄嗟に模擬剣で防いでいく。
今まで受けたこともない剣速に防戦一方だ。
「こんなものなのか!?
私の剣を防ぐだけで精一杯ではないか!」
「くっ、流石に強い…」
ギリギリのところで相手の剣を交わしながら、クリスは相手の攻撃を剣で防いでいく。
スキル持ちと無能力者の間には絶対的な差がある。
「これで終わりよ…」
シャルロットが更にスピードを上げ、
高速の突きを繰り出してきた。
その突きはクリスの左肩を突き刺してしまう。
「んぐ…」
今まで訓練はしてきたが実戦で刺されたことはない。
まさか王女に殺されそうになるとは思いもしない。
そして動けなくなったクリスに向けて、
シャルロットは剣を向けて立っている。
「とどめだ…」
最後の最後まで足掻きたい…
しかし実力の差は歴然だ…
こんなにも離れた力量差をどうすれば良い?
考えても考えても浮かばない…
俺は歯を食いしばり目の前の王女を見つめ続けた…
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