第9話 オーディエンス

騒動から朝を迎え昨日のことが現実だったと肩の痛みで思い出した。

まだ刺された肩は完治していない。

アリスに敗れマリア騒動と色々ありすぎた。

疲労感も残っているため二度寝しようと目を瞑る。



後少しだけ時間あるから…

後少しだけ…



「ヤバい!

 ぐっすり寝すぎた…」



見事なまでに寝坊した。

疲れも溜まっていたのだろう…

待ち合わせの時間に大幅に遅れてしまった。

迎えに来て欲しかったがレガード家としても貴族同士の付き合いというものがある。

そのため当然、父は来れない。



「父上、めちゃくちゃ怒るぞ…」



儀式会場である教会の中央広場に向かう。

そして今日はルミナスの王女達が来ている。

次期女王候補筆頭であるシャルロット、

歴史上でも最高レベルの回復魔法を持つ聖女マリア、二人の王女を王国騎士団30人で囲い守っている。

特に人気の王女2人を見ようと野次馬も多い。



「うわ…

 なんだ、この人だかり…」



じょ、冗談だろ…

こんなに集まるなんて事聞いたことがない…



いつもの鑑定の儀式では家族、親戚内で取り行われる。

せいぜい多くても10人くらいだ。

しかしどう見積もっても200人以上集まっている。

ひとまず儀式の行われる場所へ向かった。



「お、お兄様!」



いきなり俺の背後からアリスが現れる。



「うわ!びっくりした〜

 なんだ、アリスか…」



何処でも瞬時に俺を見つけるアリスの特殊能力だ。

しかし、アリスはアリスで顔が真っ青だ。

今日のこの観衆の多さに引いている。



「なぜこんな大勢に、

 なったのでしょうか…」



小動物のようにガクガク震えながらアリスが言う…



「あの2人の王女のせいに決まってるだろ…

 あの2人、この国のアイドルだぞ…」



少し考えれば昨日2人が来ると言った瞬間に、この状況を予想出来たはずだ…



「これ、まともなスキル出なかったら、

 父上に殺されるな…」



こんなことなら昨日猛反対すべきだった…

大勢の前で変なスキルが出たら赤っ恥だ。

公開処刑なんてもんじゃない…



すると遠くから俺たちを呼ぶ声がする!



「おーい、クリス!アリス!

 こっちに来るんだ!」



シャルロットが大声で俺たちを呼ぶ…

お構いなしである…

ひとまず引き攣った笑みを浮かべながら、

アリスと共に会場へと向かう。

父上がふと視界に入る…

かつて見たこともない程に顔色が悪い。

今にも倒れそうだ…



「お、おはようございます…

 シャルロット殿下、マリア殿下。

 遅れてしまって申し訳ありません…」 



「いえいえ、クリスは命の恩人。

 怪我が治るまで待つのは当然ですよ」



マリアはそのように言うが、

冷静に考えると怪我の殆どはシャルロットが原因だ…

そこは声を大にして言いたい…



「ま、まあ治ったなら良かったわね!

 ひとまずみんな待っているから、

 こっちで儀式受けましよう!」



少し居た堪れなくなったシャルロット。

ひとまず早く儀式に促したいようだ…




ついに来てしまった…

スキル鑑定の儀式。

帰って紅茶でも飲んでゆっくりしたい…


そんな事を考えるクリスだが、

儀式によって起こる出来事はクリスをさらに悩ませる…

そんなことは思いもしなかったのだった…

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