第6話 思惑と予想外


あの後倒れているアリステアを発見し、とりあえず自分が出来る回復魔法を施して一

山にいても危ないし、なんとかして出なきゃな


幸いゴーレムが山から魔物をほとんど追い出したおかげで全く魔物は出てこなかった。






––––––––数時間後



「うっ…ここは……ゴーレムは!?!?」


驚いた…もう治ったのか?これはA級だからなのかそれともこいつだからなのか


「ここはまだ山の中だ、お前おぶって来た。ゴーレムはなんか突然消えたよ。あとお前重すぎ」


ドゴッッッッ


「おぇぇっ!仮にも命の恩人だぞ!」


「失礼なことを言うからだ。僕は平均的な重さだ」


「へいへい、とりあえず元気なようだな。日が暮れてきたから早く魔物が帰ってくる前に行こうぜ」


「ふん!お前に感謝などせんからな」


ほんとにありがとう1つ言わないで走っていきやがった…


「って!おいてくなよ!」


こうしてゴーレム侵攻事件は幕を閉じた……



–––––––精霊族の国、クロスウェイ


ここには精霊族以外の者はA級の冒険者しかいない。だから人々からは幻の国と呼ばれている。犬猿の仲とも呼べる鬼人国とは抗争を長年繰り広げていた。



「ジャイアントゴーレムが何者かに倒された!?破片も見当たらない!?そんな攻撃力を持っているものなんてS級冒険者でもいないわ!」


今回のゴーレム侵攻事件の指揮者でありクロスウェイの女王、キャロル=リーベルはゴーレムの突然の消滅に頭を抱えていた。


「もし、ゴーレムを倒したそいつが鬼人国からの刺客だったら…まずい…今すぐ鬼人国へ外交大臣と騎士団で行ってきなさい!平和条約の交渉をしなさい!」


クロスウェイの女王もその周りもこの作戦は100%成功すると思っていた。犬猿の仲である鬼人国を殲滅できると思っていた。その結果がこれだ。


「この国に滞在しているA級冒険者2人に緊急クエストを依頼して!ゴーレムを倒したやつを探させるのよ!そいつは媚びを売ってでもこちら側に引き込まなきゃ!!」


この日クロスウェイに滞在しているA級冒険者3人が動き出した。




––––––––

「…なぁ、アリステア、ここどこだ?」


「あ、あれぇ?おかしいな。あはは」


「お前迷ったのか!?お前がわかってると思って俺はついてきたんだぞ!」


「僕のせいにするな!大体お前は体力がなさすぎなんだ!待ってやってる僕に感謝しろ!」


逆ギレしやがった…かれこれ1時間森の中で走り回ってる、一向に出口も見えないし、空もかなり暗くなってきた


「真っ直ぐ進んでればどこかに出る、とりあえず森から出ることを考えよう。」


「仕方ない、早くお前とおさらばしたいものだ、鬼人国の騎士団とも出会わなかったし、今頃クロスウェイについているのだろうか」


確かに、国王と騎士団の人達は無事到着したのか気になるな。そもそもクロスウェイもなんでそこまでして鬼人国を…?





「おいエイト!あそこに行けば森を抜けられそうだ!!」


「お前名前覚えてたんだな、ずっとお前か変態だったから知らないんかと」


「じゃ変態ってこれから呼んでやる。ありがたいと思え」


ほんとにこいつは…あれは不慮の事故だったんだって…


「え?これって…嘘でしょ?」 


「ん?どうし、、砂漠…?ってことは!!」 


「逆方向だバカ!このままじゃクロスウェイ行きだ!」


クロスウェイへの道の最初の難所は通称“迷宮の森”と呼ばれるところで、魔法の元である魔素を感知することができる動物を連れていないと後に引き返すことは困難。


「仕方ない、いっそのことクロスウェイに乗り込んで女王を引っ張り出すぞ」


「ほんとに言ってんのか?!あのゴーレムを召喚できるほどの魔法を保持し、魔力が他種族より2倍以上ある精霊族だぞ!?」


「あぁ、全員とは戦わない、王女だけを人質にする」


「あぁ、なるほど。って無理無理無理無理無理」


「やってみなきゃわからないだろ腰抜けめ」


「あのなぁ、そもそも敵の戦力をまだ」


ドゴッッ


「ぐはっ…!なにし、、」


ドスドスドスドスドスドス



矢!?それも大量の…こんなに同じタイミングで、正確に標的ターゲットにあてることが可能なのは魔法しかない。アリステアが俺を飛ばしてなかったら…。

熟練者でもこの精度は再現できないぞ…?

一体誰が俺たちを狙って…


「ちっ、仕留め損ねたわ。」


「お前、僕たちになんのようだ?」


「私のスキル『索敵』で近辺の強力な魔力を持っているものを探していたのよ、そしたら見事に迷宮の森に近いやつを発見。まさかあなたなの?A級3位さん。」


「どこかでみたかと思えばあの媚び媚び女か、※世界ギルドの上層部に媚びを売って19人目のA級として選ばれたやつだったな」


世界ギルド 正式名称は世界魔物殲滅ギルド委員会、主な活動は地方の有力ギルドへの経済的支援や、冒険者のランク位置付け、魔王軍領地の偵察を行い、現在の会長はS級2位のバレット=サンストーン、が担当している。



「あら、人聞きが悪いわ?私だって一応クロスウェイに到達していらから実力は確かよ。それに“あなたが犯人じゃなくても”罪に問われないから。斬雨きりさめ


なっ!!さっきよりも多い矢…!これじゃ逃げようがない、、



崩実リザルトルイナ


パラパラパラ


「…は?なによ今の…私の数千の矢は?!」


「今のが渾身の一撃か?お前のようなやつC級にもいるぞ。A級の世界を舐めるな」


「ふ、ふんなかなかやるじゃない!でもあんたは数秒後に死ぬ運命なのよ!ララ、今よ!」


「呼び捨てしないでくれますの?特大魔法『土還ハーデス』」


ゾクッ…!!なんだこの悪寒は…※闇魔法!?


闇魔法 魔法使いの10万人に1人が出来るとされる。5つの属性魔法の中で1番習得困難な魔法。呪いや、精神的ダメージ、魔物の召喚などが可能な魔法でもある。


「死になさい!」




地面が黒く…?!


「まずい、エイト!!」


ズボッ!!







––––––––黒い空間…何か暖かい…なんだここは…俺はなにをしていたんだ…何か長い夢を見てたような…



「…!ター…スター…、マスター!!!しっかりしてください!」


「ん…ルーナ…!ここは!?アリステアは!?」


「ここはギルドです。アリステアは残念ですが…未だ見つかっておりません。マスターを救出しあの特大魔法を放つものと弓矢の使い手を捉えましたが、すでに現場にはアリステアの姿はなく…」


なぜだ…俺とアリステアは同じ魔法にかかったんじゃないのか?そもそもあの2人はなんで俺らに攻撃を仕掛けて…え?ギルド?あの砂漠から100km以上離れてるはずだぞ!


「今その2人は?」


「更生部屋で放置しております。事情を吐いたらアリステアを見つけに行く予定です。あんな女助ける必要もないと思いますがマスターが心配すると思うので」


「更生部屋?」



「はい、罪を犯したり裏切りをしたものが行く罪人が入る部屋です。今のところマスターを忠誠を欠く者は現れないので作られてから一度も使用しませんでしたが、マスターを傷つけたゴミどもが現れたので」


なんか闇魔法よりも黒いオーラをルーナから感じる…


「更生部屋に連れてってくれない?至急聞かないとアリステアが危ないかもしれない」


「はっ!」



––––––更生部屋


ガチャリ


「ここです、闇魔法を使えるものに協力してもらいとても暗い空間をつくりました」


「ほんとに自分の手を見るのがやっとだな、1回あかりつけてもらってもいい?」


「はい」


「まぶしっ!さて…早く聞かないと!!」


「あぁ、光!!光よ!!」


「やっとこの暗い部屋からおさらばですわ!!」


え、どうしたほんとに


「生物はずっと暗い場所にいると自分を正常に保てなくなります。それを利用してマスターが起きる3時間ほど拘束しておりました。」


「早く外へ出して…おかしくなる!」


「私たちをどうするつもりですの!早く解放しなさい!」



「マスターが目の前にいるのにも関わらず服従の姿勢を取らないとはまだ教育が足らないようですね。この2人からはまだ聞けなそうですね。とりあえず今、フレアとフィアンが殺すと言って出ていきました。あの2人のことですからすぐに黒幕など発見するでしょう。」


「でもルーナはなんで俺が砂漠にいることわかったんだ?かなり距離も離れてるのに」


「申し訳ないのですがマスターを陰ながら団員たちに護衛させていただきました。」


全然気付かなかった…確かに今思えば砂漠までうまく進みすぎてたよな。


「早く出しなさいよ!このもやし男!」


パチン!


「嫌…!もう暗いところは…いやぁぁぁぁぁぁ」


「とまぁ、こんな感じで切り替えることができます。」


「お、おう」


鬼畜の所業だ…ルーナにはたてつかずにいこう…



「ひっ…、あ、あの!私はこの媚び女と違ってしっかり情報も吐きます!なので解放してください!お望みならあなたのような逞しい方に抱かれても構いませんわ!」


「マスターがお前のような薄汚い豚を抱くわけがないだろう。」


パチン



「あぁ…ごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさい」


いや、今聞けたじゃん…言おうとしてたじゃん…


「おそらくフレアとフィアンが黒幕を引っ張り出す方が早いので心配かもしれませんがお待ちした折りましょう。」


「わかった、ありがとなルーナ」


「いえ、当然のことです、マスターを守るために私は生まれてきたので」


目がほんとなんだよな…



「では、この2人は放っておきましょう」


「え、嘘だよね?わかりました!そのマスターって人に忠誠誓います!頼むから…もういやぁ………」


「ごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさい」


地獄絵図とはこのことか、、


アリステア…無事だといいが




–––––クロスウェイ、王宮


「何故!?A級10位と19位が同時期に消息を断つなんて!代わりにゴーレムを討伐したものと出会えたけれど、他にも協力者がいるかもしれない…どうすれば…」


「ふん、すぐ僕の兄上が来るだろう。そしたらこの国は周りの国から一気に戦争を仕掛けられる。それほど兄上のギルドは影響力が高い」


女王はクロスウェイのA級が忽然と姿を消したことにまたも頭を抱えていた。

クロスウェイの中でも最重要戦力として日々頼りきっていたからだ



「女王様!!鬼人国から王と騎士団がクロスウェイに到着しました!」


「すぐ通せ!丁重に扱いなさい」





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