君に捧げたいリリックはダイナミック

10月27日 PM11:14

「……よし。ユカちゃん、返事ありがとう。音源もちゃんと聴いてくれたみたいで、その……嬉しかった。すごく。HIPHOPは聞かないって言ってたけど、俺の想いが伝わるといいなって思ってます。……音源だけど、今のところネットに上げるとかそういうつもりはないんだ。ユカちゃんはめちゃくちゃ褒めてくれたけど、これは君のために書いたリリックだから。……じゃあ、今日もデモを作ったので、聴いてください」

（16小節のビートが流れ始める）

退屈な授業　苦行の修行

大人になるため右往左往　必死で動かす右脳左脳

like a 苦情殺到な不良番長　になれない俺は無常……

でも君がいたから過ごせた時間　考えろ「ここで開眼」

Bad Boy 跋扈する世界に　かますバックドロップ

夢語るのは自由だから　叩き割ってく卑屈な殻

求める自分のカラー　無視していくぞ、多少の粗！

喉はカラカラ　心ザラザラ　汗がダラダラ

それでも伝えたいんだ一日中　つまり朝から！

（ビートが止まる）

「……今日も聞いてくれてありがとう。ユカちゃんがすごく期待してくれるから……俺、決めました。来週の文化祭で、全校生徒の前で舞台に立ちます。なんか、今なら行ける気がするんだ」

　録音終了。会心の出来だ。アガる気分を表すために指で作った銃を天に撃ち鳴らす。ゴンフィンガー、最大の賛辞だ。

　胸の昂りを抑えられずに、リズミカルにカセットデッキを叩く。全校生徒に俺のリリックを届けて、ユカちゃんは喜んでくれるだろうか？　みんなの前でカマせば、周りからの見る目は変わっていくのだろうか？

　文化祭まで、あと1週間。