11月1日 AM2:30
イヤホンから聴こえるビートを胸に、布団に潜り込む。眠れない夜だ。ぐるぐると回る思考を何かにぶつけないと、頭が爆発しそうだった。イヤホンに付いているマイクに向けて、小声でリリックを呟く。
* * *
俺はダメだ 俺はダメだ
壊れた自信の盾が 自惚れた自身を変えた
所詮素人のフロウとライム これでアガるような玄人皆無
調子に乗って苦労するタイプ? 苦情なら自分で言ってるよ、だいぶ……
段違いのパンチライン なんてひどい勘違い
滑稽だろ? 想定はもうラップの皇帝・魔王な童貞野郎
ハナから皆期待なく ハタから見りゃイタい奴?
無数の言葉が死体刺す 考えるだけで胃が痛く……
ヘマすりゃ俺は晒し者 ピエロ、いや笑い物
苦笑いと「消えろ!」 シグナルはイエロー
そんな想像 様相 折れる感情と行動……
* * *
普段のリリックとは違う、ネガティブな内心の発露だ。これをユカちゃんに送るわけにはいかないな。俺は数度聞き返すと、その音声を削除する。
HIPHOPは生き方を示す音楽だという。それなら、さっき書いたリリックも俺の一部なのだろう。感じているルサンチマンと伝えたいことは何か、一度立ち止まって考える。
話が合わないクラスメイト、孤独な生活、そんな中に現れた一筋の光。
答えは案外簡単だった。俺はイヤホンを外すと、静かに眠りについた。
文化祭まで、あと3日。
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