第17話 勇者装備を手に入れた魔王に歯が立たなくて敗走した三雄達が女神と話したり修行したりする話。

三雄はルークスを連れてネツトへと帰還した。

村長や創一達には簡単に経緯を伝えて双葉にルークスの治療を任せる。


「危ないわよ。私の治療でギリギリなのよ?何これ?」

休憩に来た双葉に女神が「申し訳ありませんツイン」と謝る。


「勇者に与えた女神の剣…勇者の剣とも呼ぶらしいけどあれで斬られると治りが悪いんだって、それのせいでフロティアの姉ちゃんも回復止めると血が出てくるっから倒れる寸前まで無理してくれたんだよ」

この説明にフロティアは「それを言えばサード君のオーラヒールのおかげですよ」と言って少し申し訳なさそうに笑うとダイヴとレグオも「本当だ。よくあの小さな帆舟でこんなに短期間に帰ってこれたもんだ」「あれだけ魔法を使っても倒れないのも凄いよ」と感謝を伝えていた。


それは「俺の前で倒れる仲間は許さない!」と決めポーズの三雄が言うなりフロティアが持ち直すまでオーラヒールと名付けたヒールを使い、港町で小さな帆船を返さないかもと言う前提で借り受けると「アンちゃん!風魔法でとにかく船を出そう!治すアテならあるから!俺の村に帰るんだ!」と言って船を出す。

そしてレグオとフロティアが同時に力尽きても三雄はオーラヒールとウインドブラストで舟を中央大陸まで進めていた。


「とりあえず傷は塞がったわ。で?勇者の剣で斬られると治りが悪いって?じゃあこの子は勇者なのに勇者の剣で斬られたと」

「とりあえず村長達に報告するからそこで話させてよ」


三雄の言葉でアイン達が集まるともう一度一から説明をした。

三雄は魔王と同じ髪色をしたアインとツイン、両親について隠す事なく異世界からの転移者だと説明をした。


魔王はかつての魔王を取り込んだ勇者の1人だった事、勇者は迫害され続けて世界からハミ出したと思っている事、そして勇者の装備をルークスから奪い取ってしまった事を説明する。


「ふーん…。勇者の装備がなければサードが勝てていたけど」

「勇者の装備を身に付けた魔王相手だと攻撃は今ひとつの防御も突破されると」


「まあ俺の事は後回しでいいよ。でも修行して」

「それはやるわ」

「任せろ」


「俺はそれよりも女神様の事が気になる。女神様、女神様のやる事を魔王が真似するって話を教えてよ」

女神は悲し気に「…はい。彼に与えた力は皆さんと同じ勇者のものです。なので一応言えばルークスも鍛えれば同じくらいまでは強くなります」と話し始めた。


「ただ、彼は魔王を取り込みました。魔王の力の源は世界中の汚れた心です。今も格差が広がり、人々の心に不満が生まれれば魔王の力になります。その力は私には敵わないものの、私に近いものは使えます」


「だから勇者召喚を新たに行えば魔王が真似して日本人を向こうから拾ってくる恐れがあるんだな」

「ええ、それに彼はマイルールを用意しています」


「マイルール?」

「目には目を、歯には歯を、やられたらやり返す…」


「だから女神様は何もしなかったの?」

「はい。私が仮に魔王の居城に勇者たちの転移を行えば魔王は人間の住処に魔物を送り込んだでしょう」

ここで三雄はある事に気付いた。


「あれ?じゃあ俺達が魔王城に攻め込んだから…」

「魔王は城を目指すかも知れません」


「ちっ、何日で着くかな?」

「後7日くらいでしょうか?」


「アイン!ツインも3日だけしごいてくれよ!3日で魔王のやつに追いつく!」

「はぁ……、やらないよりはマシよね」

「久々…って言っても2週間ぶりなんだよな、やるか…」


「ってか「お父さんとお母さん」でしょ!」

思い切り振り下ろされた拳骨に三雄は「痛え!」と言って涙目になっていた。


三雄の訓練はダイヴ達は目を見開いてしまい何も言えなくなっていた。

魔王戦を彷彿させる死闘。

そして村人達からのしごき、三雄は激戦の後でも眠らずに母親の治療で怪我と疲労を無かったことにして更に訓練に勤しむと4日目の朝には「ちょっと城まで行って城を守ってくるよ。あの連中はムカつくけど死んでいい連中じゃないんだ。女神様はルークスのとこに居てあげてよ、後は勇者装備に勝つ方法を考えといて」と言ってネツトを飛び出して行った。

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