第13話 勇者ルークスはルークスで問題ありでそれでも三雄の元に戻りたがらない女神のせいで事態が悪化する話。

勇者ルークス達はようやく水晶の谷を踏破した所だった。

こちらはこちらで問題で、ルークスはとにかくダンジョンを端から端まで歩きマッピングをする。

そして二股で最初に選んだ方が行き止まりでないと「ダメだ!こっちは正解だ!」と言って戻る。


フロティアが「ルークス?正解は素晴らしいわよ?」と言っても「ダメだよ!キチンと踏破しないと!最後にこのマップを清書して皆に配って安全にダンジョンに入って貰うんだ!」と言う。


「…なんで普段は物腰の柔らかい男の子なのにマッピングには容赦が無いんだろ?」

「まったくだ。お陰で俺はダンジョンが嫌いになった」


そんな会話をして魔王城が見えた時、レグオが「ルークス?一応言うけどさ、魔王城は魔王を倒したらマッピングしようよ」と提案をすると、ルークスは目を見開いて「何!?何という不埒な発言!?」と言って殺気を放つ。


「いや、早く魔王を倒さないと追いついてくるちびっ子勇者の負担が増えるよ?」

「そうですよルークス?」

ルークスはサードの名前を出されると大人しくなり「…致し方ない。耐え難き苦痛…」と言って我慢をした。


そう、本来ならこの旅路は大海原と大砂漠の物理的な問題を抜かせばこんな3年もかかるような旅路ではない。

時間がかかった要因は全てルークスの正確なマッピングを行いたいと言うワガママから来ている。


本当に苦しそうな顔をするルークスの前に女神が現れる。

「踏破できましたか!良かったです!」

「女神様?何かあったんですか?」


女神はアイスランスで城門を破壊してからの経緯を説明した。


「蟻地獄が逃げて倒せないから大砂漠を大沼地に作り替えた!?」

「その力を危険視した魔王が魔物の群れを2000から送りつけてきて1人で倒した?」

「魔物は倒しておくからこちらを見てくるように女神様は言われたのですね」

「化け物だな…。僕はこの女神の剣が無いと無理だぞ」


それに関しても女神は三雄が過ごした地獄の日々を説明する。

「なんかそれだけ鍛えれば強くはなるよな」

「生き延びられればですよ」

「本当、3年も良く保ちましたね」


ルークスは14歳になる時に故郷を出たがそれまでは簡単な訓練だけだった。

この事に愕然としつつも三雄に同情していた。


「まあとりあえず今は魔物の群れはそのサードが面倒みてくれてるなら…ルークス、俺達は最短で魔王を倒そうぜ」

「そうね。まずは見捨てられた村に行って困った人が居ないかを確認してから魔王城を目指しましょう」


「わかった。女神様、勇者サードにはこちらもこの隙に魔王城を目指すから無理せず追いついてくれと伝えてください」

「…え…。私がサードの元に帰るのですか?」


女神はまたあの非常識さに付き合わされるかと思うと何となく女神の威厳が損なわれそうで少しでいいから距離を置きたかった。


「女神様?」

「ルークス?あなたはthe無比をご存知ですか?」


「前世の話ですね。名前くらいですが知っていますよ」

「…成敗…した…」


「は?」

「2000の魔物を倒す時に勇者サードの願いにより「100成敗!」や「777成敗!」と言わされました!」


「ああ、そういう作品でしたね」

「今度は何を言われるかと思うと…せめて今は向こうに行きたくありません」

悲痛な女神の表情にルークスは「えぇ…」と言う。


「まあ行きにくいなら少しこっちに居ればいいんじゃないですかね?」

「ありがとう!戦士ダイヴ!」


だがこれが完全な悪手だった。


1人ホルタウロスパーティをした三雄はひと眠りして目を覚ますと戻ってこない女神を見て「…まさか向こうはピンチなのか!?女神様って瞬間移動とか緊急時のテレパシーとか無理そうだからなぁ…」と言うと走り始めた。


すぐに水晶の谷にたどり着くと丁寧に道は切り拓かれていて勇者ルークスの仕事の細かさに感謝をすると同時に「あっ!手頃なサイズのクリスタル!いいな!出来るならクリスタルを構えて変身したかったよなぁ。オーラを極めたら出来るかも知れないしお土産で持って帰ろうかな、後は同じ形で割れたのあったら棺桶にくっ付けてその中で変身とか…」と言う。


そしてさっさと水晶の谷を抜けると三雄は見捨てられた村を無視して魔王城に突入していった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る