第11話 三雄の規格外に驚く勇者ルークス一行の元から三雄の元に戻った女神が見たものの話。

三雄の投げた槍は魔王城に当たり、城門を破壊していた。

出てきた魔王が「おのれ勇者め…偽太陽の仕返しか?」と言ってから「ヘルファイヤー!」と唱えて偽太陽の熱でも溶けきらなかった氷を溶かしてしまう。


女神は落下地点が魔王城とわかってからは水晶の谷を攻略中の勇者一行に合流をした。


「女神様?どうされました?」

「もうもう1人の勇者が追いつくの?早くない?」

「それともまさか勇者に何か!?」


慌てるダイヴ達に女神はネツト村を出てからの事を話す。


「村から城まで走って」

「兵団長をボコボコにシメて」

「船は無傷」


「空き瓶や板切に乗ってタコと近接戦?」

「タコを美味いと食べる?アレを!?」

「それでアイスランスを作って偽太陽に投げた?」


「…魔王城に当たったのですか?」

勇者ルークスは信じられない能力の勇者の登場に驚いてしまう。


それを察した女神は微妙な顔で「少々手違いがありました」と言って三雄の3年間を説明した。


「女神様がその子供勇者を見ずに」

「まだだもっと修行しなさいって言って」

「言われるがままに修行したんですか?」

「そんな…まさか」


「どのような修行をしたのかわかりませんが彼は魔法を放つのに必要な魔法力を勝手にオーラと呼んで身に纏ったりします。しかもその威力は兵団長のヘルチタニウム製の剣を防ぎ、逆に容易くヘルチタニウムの鎧を切り裂きました」


「ヘルチタニウム?嘘だろ?」

「だって、この前までダイヴさんのバトルアックスはヘルチタニウム製で、今でこそ鍛治王の手でヘブンチタニウムと合わせて貰ったカオスチタニウムのバトルアックスですよ?」

「魔法力を物理の力に変える?」

「…女神様、本当にその彼だけ特別な加護を付与したりは…」


女神はルークスの言葉に「していません」と答えてから首を横に振って「規格外過ぎます」と言った。


「まあ気にすんなよルークス。ソイツはソロ勇者。俺達はチームだろ?」

「そうだよ。ダイヴさんの言う通りだよ?」

「私達はチームです!」


「皆…。そうだね」


「それによう、先輩方がキチッとしてやらねえとな。さっさと道を切り拓いてやろうぜ」

「確かに!さっさと水晶の谷を越えて魔王城を目指そう」

「はい!頑張りましょう!」

「女神様、僕たちは先に進むからその勇者サードには気をつけて来るように伝えてください」


「ありがとう。皆さん」

女神は美しい友情を見て尊い気持ちで三雄の元に戻る。

三雄はどこまで進んでいるか怪しく、直線距離を慎重に進むと三雄は未だにかつて大砂漠だった所に居た。


あまりの非常識さに女神は言葉を失って三雄の顔をみる。


「あ、女神様だ。お帰りー」

「…サード?貴方は何をしでかしたのですか?」


「酷っ…。蟻地獄が倒せなくて仕方なくやったんですよーだ!」

女神は目の前に広がる広大な沼地を見て唖然としていた。



三雄の話はこうだった。

蟻地獄を野放しには出来ないと意気込んだものの、蟻地獄は三雄を狙う事をやめて、トコトン無視する作戦に出てきた。

それでも三雄流のオーラパワーを用いたオーラダッシュ…本人は「出来るならブーストフォームって名前にしてエナジー臨界までフル加速する技にしたかったのに身体を纏えないから諦めたんだよ」とボヤく。

そのオーラダッシュで一気に距離を詰めて一匹始末したがすぐにまた新しい蟻地獄が現れた。


無視作戦をやめた蟻地獄は挑発&逃亡作戦に切り替えて顔を出す→三雄が迫る→隠れる→真逆の方向から顔を出す→エンドレスの流れになったという。


「それでさ、隠し球中の隠し球オーバーブーストを使ったわけよ。あれなら一瞬でかなりの距離が詰められるからこれで逃さないぞと思ったら蟻地獄が二匹だった訳ですわ。

奴らは砂の中を超高速で移動してなかったんですよ!初めから何匹も居てモグラ叩きさせられてたんです!昔ゲーセンでやったサメサメパンデミックを思い出したんですよ!」


ヒートアップして話す三雄に女神は頭がクラクラしてきながら「…サード、落ち着いてください」と言う。


「それで?どうしたら大砂漠が沼になるんですか?」

「いやー、頭来ましてね。蟻地獄を何とかしないと皆が困るって言ってたし、俺も勇者だからなんとかしたくて考えたわけですよ。それで、考えついたのが2つ!隠し球のオーラボム…本当ならボンバーフォームになって使いたかった奴です。それを使って砂漠の砂を全部吹き飛ばしてしまって蟻地獄どもを一匹ずつ倒そうと思ったんですが、ここで俺は気付きました!大量の砂が撒き上がればバトラバトルズに終わらない冬が来て寒くなってしまう事に!俺は寒がりだからそれはダメだと思い留まりました!」


三雄のドヤ顔に女神は「…ありがとうございます」と返す。


「いえいえ。それでもう一つの案が水責め!水魔法で大砂漠を水没させて蟻地獄を殺してしまう事にしました!それがコレだよ!」


三雄は大砂漠を水没させて沼地に作り替えてしまうとご丁寧に土魔法で頑強な橋まで作っていた。


「…どれだけの水を放ったのですか?そもそもこんな出力を…」

「オーラソード作るより楽ちんだから平気」


本当に楽そうに話す三雄を見て女神は意を決して「…サード。申し訳ないのですが教えてください」と言った。


「はい?何をですか?」

「ネツトで何を行われていたかです」

女神は今こそ三雄に何があったかを聞くべきだと思っていた。

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