第10話 三雄は勇者ルークスの切り開いた道を辿りながらどんどん異常行動をしていく話。
勇者ルークスが切り拓いた道とはいえ、どうしても物理的な時間はかかる。
今はネツト村と城のあった中央大陸を発って魔王城のある北大陸を船で目指しているのだが、いくら三雄が中央大陸を早く走っても船の発着スケジュールには敵わないし、航海も潮の流れと風に左右されていた。
一度女神が「サード、一応言いますが泳いで渡るには無理のある距離ですからね?いくらサードでも無理ですよ?」と言うと「それは無理。俺泳げない。川遊びはできるけど泳げないよ」と返してのんびりと甲板掃除を手伝っていた。
そんな船暮らしを満喫していた三雄の真価が発揮したのは魔物の襲撃があった時で、食後の貝殻を遠投で魔物達に投げつけて倒してしまう。
三雄は「くそっ、貝殻終わった!なんかない?」と言って飲み終わった酒瓶を貰って投げつけたりと活躍をした上に「…おっちゃん!命綱付けるから持ってて、海に落ちたら引き揚げてよ!」と言って足にオーラと勝手に呼んでいる魔法力を纏わせると板切れや浮いている酒瓶の上に飛び乗って「イケる!接近戦!」と言って巨大なタコの魔物を倒してしまった。
三雄はタコの魔物を倒すと女神に「タコってなんかこの世界のイメージじゃないよね」と言うと女神は「…魔王の影響かも知れません」と返した。
「女神様、あのタコ食べられる?毒とかある?」
「いえ…ありませんが…、あの醜悪な魔物を食べるのですか?」
「タコだよ!?タコ刺しも焼きダコも食べる!そんで帰ったら双葉と創一に自慢する。…なんちゃってタコ焼きとか作れるかも。帰りも出るなら凍らせて持って帰ってやろうかな」
三雄はさっさとタコを切り取ると船に持ち帰ってさばいて食べ始める。
やはり食べる習慣のないバトラバトルズの人間達にはドン引きされたが「美味い!刺身サイコー、醤油ほしい!でも無いから仕方ない!とりあえず焼いて塩振って食べる!」と言って船旅を満喫していた。
3週間後、無事に船は北大陸に到着した。
船が無傷な事に港の人間は驚いた。
船員達から三雄が何とかした事を聞き、勇者に感謝をして北にある砂漠を越える為のマントや水なんかを持たせてくれた。
だがやはり1人タコパーティだけは受け入れられずに三雄は「旨いのに」と不貞腐れた。
「女神様、魔王城まで後どれくらい?後は勇者ルークスはどこら辺?」
「勇者ルークスは魔王城手前の水晶の谷に居ます。そこを越えると取り残された人間の村があり、その先が魔王城です」
「すげえ村があるんだな」
「魔王も脅威にならないからと放置しているんです」
「余裕かよ…。俺の足で何日で着くかな?」
「砂漠はいくらサードでも2日はかかるでしょう。その後の魔の湖に関してはルークスが火山の溶岩を使って魔の湖を埋め立てたので直進できます。まあ1週間と言ったところでは無いかと思います」
「OK、じゃあある程度で女神様はそっちに行ってあげてよ。向こうも心細いと思うよ?」
「…サード、ありがとうございます」
だがこの考えは甘かった。
大砂漠には再び蟻地獄と偽太陽の魔物が生み出されていた。
「マジかよ?何でだ!?」
「きっと魔王が海での戦いを見ていたのでしょう。それで合流されると危険と考えて魔物を再配置したのかも知れません!」
「くっそ…、魔王ってのはチマチマやんないで堂々と待ち構えるもんだろうが!蟻地獄をぶちのめしたら進む?」
「いえ、出来れば倒してください。これでは誰も大砂漠を越えられません!ただ偽太陽は魔法使いレグオが大魔法で辛勝した相手、とてもサードお一人では…」
「大魔法?何やって倒したの?」
「超大型のアイスランスを高出力のウインドブラストで発射しました。とりあえずポイントは偽太陽の熱で溶けないアイスランスとアイスランスが溶け切る前に命中させるウインドブラストです」
この説明に三雄は「んー…、溶けない氷と届かせる風ね…。うん。仕方ない!隠し球、出しますか!」と言った。
「はい?」
「まあ見ててよ。蟻地獄はその後でいいからまずはあのクソ暑い偽太陽をぶっ壊ーす!」
三雄は楽しそうにポーズを取ると女神は心配そうに「サード?暑さでおかしくなりましたか?」と聞く。
「いやぁ、やっぱりネツトの皆に感謝だよね。敵が超長距離からの攻撃を仕掛けてくる場合を想定した訓練とかアレコレ追い込んでくれたからね!」
この言葉通りなら偽太陽を倒す事も可能になる。
三雄はさっさと決めポーズを取って「ハイパーモード!モードチェンジ!氷!」と言って決めポーズを変える。
「ちなみに今の俺氷属性ね」
「…は?」
「設定って大事よ?」
「はぁ…」
三雄の真剣な説明にも女神はどう答えていいかわからずにいると三雄は女神を無視してさっさと始めてしまう。
「大きいのは飛ばすのが大変だから…アイスランス!」
三雄の生み出したアイスランスはレグオの生み出したアイスランスには少し及ばない程度だがそもそも勇者の能力にここまで魔法の才能は与えていない。
間違いなく後天的な三雄の訓練の賜物だった。
だが三雄はここで終わらなかった。
「超圧縮!」と言ってアイスランスに手をかざすとアイスランスはバキバキと音を立てて縮んでいき豪華な装飾の槍に変わる。
「け…形状変化?」
「これ、大変だったんだぜ?やっぱり不恰好よりは格好いいって大事じゃん?見てよココ、この曲線が中々綺麗にならなくて散々練習したんだよ」
三雄は槍の装飾を指差して説明をするとそのまま宙に浮かぶアイスランスを手に取って「オーラランス!」と言ってオーラという名の魔法力を纏わせる。
「せー…の!…あ…技名…」
慌てて決めポーズを取り直した三雄は「究極投擲!アルティメットスロー!」と叫ぶと偽太陽に向かってアイスランスを投げる。
女神は「また無茶苦茶な」と呆れつつ「流石にあの超高度には届かないだろう」と高を括るが甘かった。
アイスランスはぐんぐん上昇を続けていき、三雄は「追い風要らねえな。さすが俺のオーラパワーだぜ!」と言ってニコニコソワソワしている。
あっという間に偽太陽を貫いたアイスランスは燃え尽きる事なく飛んでいく。
それを見た三雄が「女神様は落下計算とかできる?」と聞く。
「は?え?」
「流れ弾、人に当たるの嫌だからさ、落下地点に人とか居たら逃してあげてよ」
「…え?…はい」と言って女神が離れると三雄は「その間に蟻地獄をなんとかするよ」と言っていた。
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