第9話 城を出立した三雄を悲し気に注意する女神の勘違いと三雄の異常さの話。
兵団長を殴り飛ばした三雄は「約束は約束だからよ」と言ってオーラソードを小ぶりにして兵団長の頭を丸坊主にして「あースッキリした」と言う。
そして姫を見て「終わりの号令は?」と聞く。
姫は悔しそうに「勇者サードの勝ちです。そのお力で是非このバトラバトルズをお救いください」と言った。
再び謁見の間に通された三雄はとりあえず兵団長の謝罪を要求する。
中々謝らない兵団長に呆れながら「キチンと謝罪もできない部下を持って国王陛下達は大変ですね」と三雄が言う。
この発言に王達は三雄を睨むが三雄自身は知った事ではなく「部下の躾も出来ないと周りから陰で何を言われるか分かったものではありません。それに国王陛下が愛している国民を愚弄する部下なんて以ての外、更に言えばそんな行動をしたのが兵士の皆さんを纏め上げる団長なのだと知れてしまえばさぞかし国民達はショックを受けましょう」と言う。
間違ってはいないがそれを13歳の子供が言うのだから腹立たしい。
「本当ですわ。カオロ兵団長は団長に相応しくないのかも知れませんわね。勇者サード、間違いを正してくれてありがとう」
そう言ったのは妃で、我先に兵団長の切り捨てに入り、親そうな臣下達も「確かに」と言い出す。
どうやら王と妃はあまり仲が良くない。
ここで姫がコロリと国王を裏切る形で「本当ですわ。兵団長、誠心誠意の謝罪をしなさい」と言う。
兵団長は真っ赤な顔でプルプルと震えながら「勇者サード様、大変な御無礼を働き申し訳ありません」と謝る。
「俺にじゃない。俺の故郷に謝ってください」
「くっ……」
カオロは三雄を睨みつけるが三雄は痛くも痒くもない。
それどころか坊主頭が情けなさを強調している。
「姫様、なんか反抗的じゃないですか?あの態度って王様にも失礼ですよね?」
「確かに、今の行動は全て陛下や我々にしているものと同義ですよカオロ?」
「…国王陛下が愛してやまないネツト村の方々を愚弄して大変申し訳ありませんでした」
「如何ですか?勇者サード」
「はい。ありがとうございます。それで、俺は丸腰だから何か武器とか持たせてくれませんか?無ければさっきのヘルチタニウムの剣でもありがたいんですけど」
これには団長が必死に拒否をして何とか同じヘルチタニウム製の剣を分けてもらう。
剣を構えた三雄は「ありがとうございます」と言うと姫は「やはりバトラバトルズの方が持つとサマになりますね」と言い、妃は「申し訳ありませんが勇者ルークスが持って行った女神様が授けてくれた勇者の剣と鎧に比べるとヘルチタニウムは劣る金属で申し訳ありません」と言った。
何か違和感がある。
だが三雄にはそれはいまいちわからなかった。
今大事なのは早く勇者ルークスに合流する事だった。
「じゃあその勇者ルークスを追いますのでここで失礼します」
三雄は早々に城を後にする。
先程の戦いを見ていた兵士達は三雄に友好的に声をかけて見送る。
外に出ると夕方だったが気にする事なく女神の指示通りに魔王の居城を目指す。
だがすぐに着くわけではなくこの先には最短でも海を越える必要がある。
勇者ルークス達は砂漠を越える為に巨大な蟻地獄型の魔物を蹴散らし、太陽に偽装した魔物を倒して砂漠の気温を下げたりしたが三雄はただルークスが切り開いた道を進むだけでいい。
それでも合流には何日もかかる。
この日も金を惜しんで野宿をする。
焚火の火を眺める三雄に女神が「サード、ひとつ聞かせてください」と話しかけた。
三雄は枝を放り込みながら「ん?何?」と聞いた。
「何故あの兵団長相手に本気を出したのですか?」
「はい?」
「そこまで許せませんでしたか?人間同士で潰し合いをしてはなりません。それに力を見せつけるなんて…」
悲しそうに話す女神に三雄は「え?本気なんて出してないよ」と言った。
「…………え?」
「え?」
「確かにヘルチタニウムは私の生み出した剣には劣りますが簡単に防げたり破壊できるものではありませんよ?」
「え?そうなの?」
ここで女神と三雄の会話に食い違いがある事に気付き、今度は三雄から女神に質問をした。
「えっと…さ、一応聞くけどこれまでって俺達に姿を見せないで話だけしてたよね?」
「はい。勇者ルークスが仲間達と出会うお手伝いをしたり冒険の協力をしていました」
「それで女神様は2カ所同時降臨とか無理なんだよね?」
「はい。私にはその力はありません」
「それで一応聞くけどさ…」
三雄は2度一応聞くけどと言う。
「はい。何でしょうか?」
「頻繁に呼んで魔王討伐に行けるか聞いたら女神様は「まだです。まだサードは弱い」って言ってたよね?あれ、本気で俺の事を見てから答えた?」
バツの悪そうな女神が「……それは…」と言うと三雄は間髪入れずに「もしかして見てなかった?」と聞いた。
そう、女神は三雄を見る事なく他の勇者達が10歳だった時の強さを基準にして「まだ弱い」「もっと鍛えろ」と言っていた。
「そ…それは仕方がなかったのです!3年前は分刻みで仲間を迎える大事な時期で!戦士ダイヴはたまたま同じ街に居たタイミングで出会わなければ縁が生まれませんでした!あの街は複雑で!魔法使いレグオも親友に騙されて奴隷契約の書類にサインをしてしまった所で助け出さなければ!」
女神は必死になって弁明を始め、しまいには「サード、そもそも貴方が異常です!勇者の素質は与えましたがその力は何ですか!?オーラソード?オーラアーマー?闘気?そんな技は見た事もありません!」と言い出す。
「オーラアーマーとかは魔法を使う時に手に溜まる力を勝手に闘気とかオーラって呼んだだけだよ」
「あ…あれだけの魔法を物理に変えたのですか?」
「やったら何とかなったよ。まあ纏うだけで形作れないから本当なら仮面デストロイヤーデジタルのメガチェンジ、ギガチェンジ、テラチェンジをやりたかったんだよなぁ…」
三雄は特撮ファンで創一の言うように小さな憧れはあった。
だからこそ将来は悪路を走るのに適した車に鋲付きの革手袋に革ジャンで世界中を旅したいと思っていた。
「…そ…そうですか」
「あれ?もしかして相当鍛えられてる?」
「…はい。恐らく勇者の装備を身に纏い私の加護を受けた存在と同じくらいやれるでしょう」
「おお、よかった。これで魔王を倒せれば皆も平和になるな。じゃあ明日からは決めポーズの練習でもしておこうかな…」
そう言って笑う三雄を見て女神は頼もしさを感じながらもコレジャナイ感に苛まれていた。
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