第12話 ゴブリンの逆襲
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着替えて家の外に出ると、何と目の前にはゴブリンが立っていた。暗めの赤色で染まった棍棒を手にして鳴いている様子。何でこんな所にゴブリンがいるんだ、それに棍棒には赤い血が付いている。もしかして……人間の血か?
俺は急いで村長の家に置いていたケースから剣を取り出し、それを思いっきりゴブリンの顔面に向かって投げつけた。能力を使っていたからか剣はまっすぐ飛び、奴の顔面に深く刺さった。頭蓋骨を貫通させるくらいの勢い。
「ギャウギャウ!」
続いて他の村人の家の前にもゴブリンが立っていたため、そいつにも剣を食らわせてやった。背後から気付かれないように忍び寄り、思いっきり踏んづけてから切り殺す。こうすれば無駄な抵抗もされずに済むからな。
「ギャラギャラ!」
変な咆哮を上げるゴブリンの群れを発見した俺は、近くにあったゴブリンの死体から棍棒を借り、剣と棍棒を両手に持って戦うことにした。これならどの方向から襲われても太刀打ちできる。目の前には6体のゴブリン、右手には剣、左手には棍棒。
「グラァ!」
体格の小さなゴブリンが飛びかかってきたが、それは軽く棍棒を振るうだけで向こうの木まで吹き飛ばされていった。続いて襲ってきた別のゴブリン2体も、右手に持っていた剣を軽く振るだけで真っ二つに切れてしまった。
残りの3体はまとめて棍棒で殴っておく。たった一発真上から殴るだけで、頭蓋骨が陥没するようで口から液体をドバっと出して死ぬ。こんな簡単にゴブリンを討伐できたことなんてないぞ。
ところで村の人達はどこに行ったんだ。
村を探しても誰もいない。さっきゴブリンの棍棒には赤い人間の血が付いていたから、もしかしたら誰かがゴブリンに襲われて、それで皆逃げたんじゃないか……というのが俺の予想だ。でも、それなら何で寝ている俺のことを置いていったんだろう。起こしてくれたら討伐したのに。
「グリャァァァ!」
と、ここで村を囲っている森の茂みから巨大なゴブリンが現れた。あれは、ゴルゴリ。ゴブリンの王に当たる存在の上級モンスターだ。ゴルゴリはゴブリンの群れを従えているため、討伐するのは非常に厄介。でもゴブリンの群れは全員俺が潰した。だから1対1の戦いになる。
見た目はゴブリンをただ大きくしただけ。だが巨大な棍棒と巨大な肉体だ、普通の人間なら一発殴られただけで死んでしまう。大きさは約10m、ジオンガルムとかリザードよりも弱いと学校で習ったが、それは実際に戦ってみないと分からない。
俺は別のゴブリンの死体から新たな棍棒を2本借り、剣はケースにしまった。2本の棍棒で俺は戦う。それは何故か。理由は簡単だ、さっきチラッと見たが、ゴブリンによる襲撃のせいで家の中が荒らされていた。つまり奴らは村人を襲ったんだ。その仕返しをしたい、同じ棍棒で。
「グルァァァァァ!」
図体と同じくらい巨大な鳴き声を上げながら奴は突っ込んでくるが、俺はそれを簡単に避けることができる。ひとっ飛びで奴を越すこともできる。奴の振りかぶった巨大な棍棒による攻撃を軽く跳んで避けつつも、空中で一回転。そこから背後に回って、うなじの部分を思いっきり棍棒で叩く。
そこには脊髄とか大事な器官があるから、叩かれたら巨大なモンスターだろうが簡単に気絶させることができる。もちろん、能力を使った俺だけにしかできないことだけどな。一般人、または昔の俺だったらそんなことはできない。
地面に突っ伏したまま動かなくなったゴルゴリ。死んでいるかどうか分からないため、もう一度棍棒で首周りを殴っておく。口から変な液体が出るまで何度も何度も。やがて白い液体がビュシャッと出てきた頃には、奴の首周りはもう粉々になっていた。直視してられない位に。
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近くの集落の方へ行ってみると、そこにはバーンズ村の人達が暖をとって集まっていた。中には血を流している者や手当てを受けている者もいる。やっぱり、彼らはゴブリンに襲われて逃げてきたのか。本当に辛い思いをさせてしまった。
ここにいるのは歳をとっている人達ばかり、ということは襲われてもすぐには逃げられなかっただろう。村にいる若者といったら俺かルイさんだけ、それで俺が力になれなくてどうする。ルイさんは訓練を受けていない市民だ。
そういえば、ルイさんと村長はどこに行ったんだ。この集落は小さめで、ここにいるのは元から集落で暮らしていた人とバーンズ村の住民のみ。バーンズ村の住民の顔と名前は覚えている、だって10人くらいしかいないから。
「フロルさん、ルイさんと村長さんは?」
フロルさんはこの村で1番歳をとっている。だから何でも知っているんだ、セントリーという国の成り立ちもバルパーの歴史も何もかも。逆に知らないのはモンスターのことくらい。ルイさんとほ血縁関係は無いが、彼女からは「おばあちゃん」と呼ばれていたな。
「討伐者さん、ルイはバルパーの方で手当てを受けています。ゴブリンの棍棒で頭を強く殴られたので」
……それを聞いた俺は、あまりの悲しみで力が抜けたようにその場に座り込んでしまった。俺がもう少し早く奴らを倒していたら、こんなことにはならなかった。ゴブリンの棍棒は脆いが、もちろん痛い。ルイさん、本当に無事であってほしい。
「名前は忘れたが……討伐者さん。村のゴブリン共はどうされましたか」
続いて俺に話しかけてきたのは、若い頃モンスターに襲われたため下半身を動かせなくなっている、村長と同い年くらいのおじいさん。名前は……確かマラヤといったな。
「それはもう俺が討伐しました」と伝えると、彼らは手を叩いて喜んでいた。足を動かせないマラヤさんも、手を怪我しているフロルさんもその近くで眠っていたハラさんも皆で。
「よかった、また住処を失わずに済む」
「本当にこれも救世主のお陰です」
彼らは俺の手を握って感謝の言葉を伝えてくる。本当に、こういう時は討伐者をやっていてよかったと心の中で毎回感じる。俺の夢はモンスターを絶滅させること。絶滅させれば、こういった被害者が生まれることなんてなくなる。
「ところで、3日間どこに行かれていたんですか? 置き手紙も無かったので心配しましたよ」
3日間?
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