第5話

「テールは好きな食べ物ある?」

「えっ…」

いきなり好物を尋ねられたテールは戸惑った。

「ま、言ったとしても食えるとは限らねえけどな」

そう言って笑うアーケルにテールは苦笑した。

「テールはなんで外の世界が見たいんだ?」

「えっ、と…それは…」

「俺には言えないこと?例えば、ハーフウイッチ差別を無くしたいとか」

「えっ」

「図星?それなら言いにくいだろうな」

テールはうつむいてうなずく。

「僕の親はハーフウイッチで僕が七つの時に目の前で殺されたんだ。それは今でも鮮明に残ってる。今でもたまに夢に見るんだ。ハーフウイッチ差別がなくなれば、僕みたいに苦しむ人を減らすことができるのかなって」

「…テールは知らないかも知れねーけどさ、西の方ではすっごい魔女狩りが流行ってたの」

「魔女狩り…」

話には聞いたことがある。

名前の通り、罪もない魔女をいたぶって殺す、金持ちの趣味のようなものだ。

「俺は元々西の出身で、親も魔法使いなわけだから、当然命を脅かせれてたわけ」

海から離れるとまた賑やかな笑い声や話し声が沢山聞こえてきた。

「6つの時に、親が殺された。俺が外で友達と遊んでた時」

「そんな…」

「覚えてるよ、お前みたいに鮮明と。でも、無惨に殺された両親の死体を見た後のことは覚えてない。ただひたすらに走って、気がついたら知らない街で倒れてた」

アーケルは立ち止まってテールに向かって笑う。

「ハーフウイッチ差別がなくなったところで魔女狩りがなくなるかはわかんねーけどさ、こんなチャンス二度とないかもだし。協力はするぜ、よろしくな」

「…うん」

_____________________

アーケル曰く、今日は珍しい客が来たから奮発してビーフシチューにしようかとのことだ。

材料を一通り買ってからの帰り道。

テールはアーケルに気になっていたことを尋ねた。

「アーケルは、サナのことは気持ち悪いって思ったりしないよね?」

「は?当たり前だろ、何言ってんだよ。気持ち悪いって思ってんなら家なんかあげてねーし」

「…よかった」

アーケルは小さめの籠を抱えて言った。

「こっちの方に越してきた時、一番最初に仲良くなったのがサナだった。無口で無愛想で、最初は一緒にいてもあんまり話さなかったけど、まあ何年か一緒にいたらよく話すようになって、今では結構仲良いぜ」

「アーケルはいつからこっちの方にいるの?」

「ルーン村にいたのは、8歳から13ぐらいまで。ドールに移ってからまだ2年ぐらいかな」

「アーケルの家って自分で建てたの?」

「いや?空き家をタダでもらって、リフォームした」

「えぇっ、リフォームってお金かかるでしょ…」

「まあな、でも魔法があるから実質タダ。いらなくなった家具をもらって綺麗にしたり、壁紙剥がして、塗装が剥げてるとこは魔法で直したり」

「すごい…」

「まあな」

そう言ってアーケルは笑った。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

The meaning of life @tokka10

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

フォローしてこの作品の続きを読もう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ