第4話

ドール村はサナたちが住んでいたルーン村よりも賑わいのある農村だった。

「その知り合いの家ってどこなの?」

「さあ?でも、手紙には海に近い青色の屋根って書いてる」

「海沿いかぁ…」

サナは海がある場所に向かって歩き出した。

周りには沢山の店があり、看板娘たちの賑やかな声が聞こえる。

「賑やかだね」

「うん」

海に向かうにつれて村の賑やかさはだんだん薄れていき、静かな景色が広がった。

しばらく歩いていると、小さな青色屋根の家が見えてきた。

「あっ、あれかな?」

「多分ね」

サナは家のドアをノックする。

中でドタドタと音がして出てきたのは一人の青年だった。

しかも、かなりの美青年である。

「サナ!」

「久しぶり」

「…そいつ誰?」

「道連れ」

「はぁ?」

青年は呆れたようにたずねる。

「名前は?」

「テール・オーディア…」

「ふーん、テール君ね…俺はアーケル・クラウン」

「よろしく…」

「ん、よろしく」

アーケルはサナたちを中に招き入れると客間に通した。

イスに座るよう促したアーケルは、お茶を淹れながらたずねる。

「で、どういう風の吹き回しなんだ?サナ」

「気が向いたから、家出した。これからは一人で生きていこうと思って」

「危ねえだろ…もういっそ俺んとこ住めば…」

「やだよ、それじゃアーケルに迷惑かかる」

「俺はそういうの気にしねえって」

二人の会話を聞きながらテールは居心地悪そうにお茶を飲んだ。

「それに、テールは外の世界をもっと知りたいって言うし」

「一人で行かせりゃいいだろ」

「世間知らずのお坊ちゃんを外に一人で放るなんてできないでしょ」

「…じゃあ、お前はここに何しにきたんだよ」

サナはお茶を飲むと一息ついて言った。

「アーケルも一緒に来ないかなって」

「はぁ?」

「私も、別に魔法が上手なわけじゃないし、テールだけだとなんか不安だし。もしもなんかあった時のために」

「言っとくけど、俺は一属性しか使えないからな」

「うん、それでも大体の相手は大丈夫でしょ」

「まあな」

サナはふぅっとため息をつくと言った。

「別に来たくないならいいよ。私も、ある程度魔法は習得しようと思ってるし。一人ぐらい足手まといがいたところで、なんてことないよ」

「別に行かねえとは言ってねえだろ。で、出発はいつなんだよ」

「いつでもいいよ、アーケルの都合がつく日でいい」

アーケルはため息をつくとお茶を飲み干して言った。

「3日後。準備するからそれまではここに泊まってろ、外には出るな」

「…海見たかった」

「わがまま言うな!」

アーケルに言われてしゅんとなったサナを見て、アーケルはすぐに折れた。

「夜の間だけだったら、別に…」

顔をパァッと輝かせるサナにアーケルは諭す。

「一人はダメだからな」

「わかってる!」

アーケルはテールをまじまじと見つめて言った。

「テール君、だっけ?夕飯買いに行くからついてこいよ」

「えっ、僕?」

「そ、ほら早くしろよ」

アーケルに手を引っ張られてテールはそのまま外に連れ出されてしまった。

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