生産職Bさんの日常
デザートガンナーオンライン、略してDGOと呼ばれるこのゲームにも生産職が存在する。凝り性の高い奴らが大体なってしまうため、拠点地で引き籠って作業に没頭することが多い。腕を組んで、図面作成の画面と睨めっこをしているバンダナの男型自動人形、Bさんもそういうタイプである。
「うーん。もうちょっとデザインを」
金属のガラクタが屋根の上に、地上に置きまくり、汚い建物の中に誰かが入る。ゴーグルをした、ボロボロの半ズボンを履く男型の自動人形が慣れたように作業場に進む。初期型と呼ばれる自動人形を設定したのか、髪の毛がなく、肌色が人の色ではなく、金属そのものである。
「おーい。Bさん。まーた睨めっこしてんのか。依頼ないんなら、狩りに行って、経験値積んでレベル上げたらどうだ?」
基本生産職は大会期間以外は依頼をこなすことが多い。暇な時はモンスター討伐などが可能なのだが……Bさんのように設計図などを見つめて、書き留めたりする作業を選択してしまう。理由は様々だが、Bさんの場合は、
「いや。エロさをもっと追究する」
である。渋みのある男性の声で同性でもカッコいいと感じる。実に勿体ない答えである。
「その声でその発言はどうかと。というか大会期間でもないのに……何でそれやるの」
生産職ではないプレイヤーなら理解しづらい。機能さえあればそれでいいというのが客人の考えである。Bさんが残念そうに言う。
「おいおい。お前それでも男か?」
「んあ?」
「三大欲求の中にあるだろ! 性欲、すなわちエロさがよ! だが下品さはいらない。俺が求めているのは上品さ、その中に隠されている色気、仕草から出せるものだ」
熱心なのだが、これはアウトすれすれのものである。呆れながら客人は設計図を見る。滑らかな人肌を再現し、見た目を完全に再現しきった自動人形。最新型専用の服装。いや。この言葉は正確ではない。水着だ。候補として色々とあるのか、複数のデザインが書かれていた。
「おーい。聞いてる?」
「聞いてるよ」
だからこそ、客人は理解した。何度も生産職の大会に参加しているにも関わらず、いいとこまで行かない理由を。エロスに拘り過ぎてるから毎回成績悪いんだよと。
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