第17話
その言葉に反応するようにフィリアはゆっくりと立ち上がり詠唱を始めていった、そして数分ほど唱え続けていると無事に終わったようで魔法を発動するとたちまち眩い光に包まれていく中で徐々に肉体が修復されていき完全に回復したところで魔法を止める事にしたようだ、だがその途中で彼女が不意に何かを思い出したかのような表情を浮かべた後突然叫んだ、「……っそうだ!!あいつに伝えないといけないことがあったんだった……!!ちょっと待っていてくれ!」そう言った直後勢いよく部屋から飛び出していった、突然のことに呆気に取られていたがしばらくして我に返ると少し心配そうに見つめていた、しかしそれも僅かな間でしかなかった、なぜならその直後に部屋の扉が開いたのである……そこにいたのはやはりユウキだったのだがその姿はいつもと違っていた……そう、まるで子供のような姿をしていたのである……! それを見た魔王アルテミリナは驚きを隠しきれなかったのだが、それ以上に怒りの方が上回っていたらしくすぐさま怒鳴り散らしながら怒鳴りつけたのだ、「お、お前は何者だ!?何故私の姿になっておるのだ!?」すると相手は笑いながら話しかけてきた、「アハハッそんなに怒らなくてもいいじゃないか?それに僕は君の思っている通り君自身なんだよ、つまりは二重人格ってやつだね!」その言葉を聞いても信じなかったアルテミリナであったが実際に目の前で変身を見せられては信じるしかないと思い渋々納得したのであった、それからしばらくすると本来の目的を果たすべく彼に色々と尋ね始めたのだ、その内容としては彼がどうやってここまで来たのかやどうやってその姿を手に入れたかなど様々であり、それに対する返答はとても意外なものだった、まず最初はこの姿のことについてだがどうやら魔力量を増やす薬を飲んだ影響で若返ったことが原因らしい、しかもそれは偶然手に入れた物のようで詳しくは知らないらしかった、ちなみにその際に飲んだ薬をどこで手に入れたのか聞いた所「それは教えられないなぁ」と言ってはぐらかされてしまったのである、その為他の質問をすることにした、 その後いくつか質問をした後に分かったことは彼の名前がユウキであることと元々の年齢は28歳ということぐらいでそれ以外のことはほとんど分からなかったのだ、とはいえこれといって怪しい動きをしているわけでもないしそもそも魔王である自分がいる場所に来るような者なのだからおそらく大丈夫だろうと考えた上でひとまず保留にする事にしたのだった、 それからしばらくの間雑談を交えた話し合いを行ったところでお互いにある程度は打ち解けあった所でようやく本題に移ることにした、そしてここからが本番となるわけだが果たしてどんな話をすることになるのだろうか……
俺は現在魔族領の中心に位置する城の中を歩いている、そして向かう先はとある一室である、その理由はそこにいる者達と話すためである、と言っても今回が初めてというわけではないのだがそれでもそれなりに緊張した状態で向かっていた、なぜならこれから話そうとしている事は俺だけではなく彼女の未来を左右するかもしれない重要な出来事になるかもしれないのだから……
(……いや、むしろそっちの可能性の方が大きいだろうな)そんなことを考えながら歩き続けついに扉の前に到着したのである、一度深呼吸してから覚悟を決めたのち扉をノックすると中から声が聞こえてきた、それを聞いてから部屋の中に入るとそこには3人の女性がいた、まずはこの部屋の主であるアルテミリナさん、次に彼女と話をしていた魔王アルテミリナ様とその側近と思われる2人の魔王候補達(それぞれミライさんとチトセという名らしい)、最後に俺の目の前にいるユウキという男、以上がこの部屋にいるメンバーということになるのだが、その中でも気になるのはこの場にアルテミリナ様がいるのがおかしいということである、何故なら本来ならここにはいないはずの人物だからだ、だからこそ俺はこう思ったんだ、(もしかして彼女はまだ気づいてないのかもしれない……だとすれば早めに伝えておいた方が良いだろう)そう思ったのでとりあえずは俺が来た理由を伝えることにした、「……というわけで皆さんに協力してもらいたくて今日はここへ来ました」すると皆んな一様に頷いて見せた後アルテミリナ様の方を見ながら言った、「もちろんですよ!私達は同じ仲間ですからね、断る理由がありませんよ!」それに対して俺も同意するように頷くと再び口を開いた、「ありがとうございます、では早速作戦の内容についてですが――」それからしばらくは細かい点の確認を行い終えるといよいよ実行へ移ることになった、「それでは行きましょうか、アルテミリナさん?」そう言うと彼女は無言で頷き返してきたのでそれを確認した後でゆっくりと立ち上がった、「……準備はよろしいですか?」そう尋ねると小さく頷いたのでそれを見た俺達はそのまま部屋を後にした、こうして俺達の長い戦いが始まることとなる……「――これより最終局面に突入する!!」
「さぁ行きますよ〜!!」ユウキさんがそう告げると私は彼と一緒に走り出しました、そして目標との距離が縮まった瞬間彼は急ブレーキをかけてその場に止まりました、私も同じように止まると武器を構えたのですがその理由は敵の姿を確認することが出来たからです、というのも先程私が放った矢によってかなりのダメージを負ったせいか体の動きが鈍くなっておりもはや逃げることすら出来ない程に弱っていたようです、そのため私はすぐに決着をつけるべく一気に近づきながら技を放ちました、『聖なる一撃!!』すると見事命中したようで敵の息の根を止めることに成功したのです、「これで終わったな」そう呟きながら剣をしまうと背後から拍手をする音が聞こえてきたので振り返るとユウキさんが微笑みながらこちらに近づいてきました、「お疲れ様です!とても綺麗な一撃で思わず見とれてしまいましたよ〜」そう言いながら近づいてきた彼は私を褒めてくれた後に続けて言いました、「それにしても流石ですね!あの距離からの攻撃を避けるどころか反撃まで出来るとは思いませんでしたよ!」それを聞いた私は照れ臭くなりながらも「いえそんなことはありません、ユウキさんの指示があってこそ出来たことですので……」と謙遜しながら言うと彼は「そんなことないと思いますよ?」と微笑みながら言ってくれたのでなんだか嬉しかったです、だがここで不意に誰かのお腹が鳴ったため私は思わず笑ってしまったんです、そしたら今度はユウキさんもつられて笑った後で私に謝ってきたので「別に気にしなくてもいいですよ」と答えつつも心の中ではとても幸せな気持ちでいっぱいでした、だって今この瞬間が一番幸せだと思っていたのですから……
そうしてしばらくの間楽しい時間を過ごしていた私達でしたがふと思い出したかのようにある事を聞いてみた、「そういえばずっと気になっていたんですが……」「うん?どうしたんですか?」「以前出会った時は確か名前だけ名乗ってすぐに消えてしまったはずなのでもう一度お名前を伺っても良いですか?」その質問に彼は笑顔で答えてくれました、「もちろん良いですよ♪名前はさっき言ったとおりユウキと言います。気軽に呼び捨てで呼んでくれると嬉しいな」「わかりました、ユウキさん!よろしくお願いしますね♪」そう言って握手を求めると快く応じてくれました、さらにその後一緒に食事をしながら楽しく会話を交わしたりなどして本当に楽しかった、ただ残念な事にそろそろ戻らないといけない時間になってしまい別れを惜しむことになりました、
「それじゃあ名残惜しいけどそろそろ帰らないとまずいかな……」そう呟く彼に私も同意しました、しかしどうしても帰る前に聞いておきたい事があったので勇気を出して尋ねてみる事にしたんです、「ユウキさんはこれからどうするんですか?良ければ教えていただけませんか?」すると彼の表情は真剣になりやがて話し始めました、その内容は今まで以上に驚くべき内容だったので驚きを隠す事が出来ずにいました、「実は僕はこの世界とは別の世界から来たんだよ、そしてその理由は君が知っている通りだと思う……」
その言葉を聞いた私は一瞬理解が追いつきませんでした、だけど確かに思い返してみると初めて会った時から不思議な雰囲気を漂わせていたので何となくそうなんじゃないかと思っていたんです、だからこそ何も言うことが出来なくて黙っていることしか出来ませんでした、「やっぱり信じられないよね?僕だってこんな姿になるまで知らなかったんだから当然だよね?」そう言われた瞬間私の胸の中で何かが壊れるような感覚に襲われました、それ故に咄嗟に抱きついていたんです……――(これ以上は無理だ……もしこのまま話を続けたら取り返しがつかないことになってしまう……)そう思い覚悟を決めた次の瞬間私はこう言ったのだ、「信じます!だからお願いですからどうか消えないでください!!」そう叫びながら抱きついた腕に力を込めた、「っ!?」いきなりの行動に戸惑いを隠しきれないユウキさんに対してさらに続ける、「貴方がいなくなったらきっと寂しいと思います、それにもっと色々なお話がしたいんです!これからも仲良くして頂けませんか?!」その想いが伝わったのかしばらく考え込んだ後で返事をくれたのである、「こちらこそ宜しくお願いします……!」それを聞いた瞬間私は嬉しくて泣き崩れてしまったのだ、そしてそれを見ていた彼は慌てて駆け寄り声をかけてくれる、「ごめん……!ごめんね……君の気持ちを考えていなかったみたいだ、僕が悪かったから許してほしい……もうこんなことは二度としないから許してください……!」必死に謝りながら頭を下げる彼の姿を見た私は涙を拭いながらゆっくりと立ち上がり笑顔を向けてこう言ったのだ、「……分かりました、貴方がそこまで言うなら今回だけは特別に許してあげます、ですが二度目はありませんからね?もしまた同じことをしたら本気で怒りますから覚悟しておいてくださいね……?」その言葉に何度も頷く彼を見て私はホッとすると急に恥ずかしくなってきたので誤魔化すためについそっぽを向いたのだがそこでユウキさんが笑い出したことで少しムッとしたのだが同時に安心したのも事実だった、そしてお互い見つめ合ったまま少しの間笑っていたのである、だがいつまでもこうしていてはいけないと思った私が口を開くと彼も頷いていた、「それでは行きましょうか、皆が待っている場所まで送って行きますのでついてきて下さいね?」そう言って歩き出す私に向かって後ろから彼が話しかけてきたのだ、「……あのさ!よかったら君の名前を教えてもらってもいいかな?その……これから共に行動するならお互いに知っておいた方がいいと思うから……ダメかな?」
それを聞いた時思わず嬉しくなった私はすぐさま振り返ると笑顔で答えた、「勿論です!これからどうぞ宜しくお願いしますね♪あと私のことは是非名前で呼んで下さい、その代わりといっては何ですが私もこれからは名前だけで呼ばせて頂きますね?」そう言って微笑みかけると彼は顔を真っ赤に染めながらも頷いていた、そんな彼の反応を見た私は更に胸がドキドキしてしまうのを感じながら皆の元へ戻っていくのだった……
(それにしてもさっきの彼女の反応には驚いたなぁ……まさか抱きつかれるなんて思わなかったよ……)そう心の中で呟きながら先程のことを思い出していると自然と顔が赤くなってくるのを感じた、 俺は彼女と別れた後ですぐに自室に戻るとそのままベッドの中に入って眠りにつくことにした、ちなみに何故そんなことをしているのかというと先程の戦いにおいて相当疲れてしまったからである、まぁ簡単に言ってしまえば魔力不足による疲労でありそれを回復する為であるというわけだ、そんなわけでベッドに横になりながら今後のことを考えていたのだが途中でいつの間にか眠ってしまっていた、 そして目が覚めた時に感じた違和感の正体はすぐに分かった、何故なら隣でユウキが寝ていたからである、最初は夢かと思ったのだが実際に起きてみてそれが間違いだと確信した、何せ先程まで一緒にいた人物がすぐ側で寝ているのだからこれは驚くのも無理はなかった、とはいえどうして彼がここに居るのかという理由がわからないため混乱しながらも必死に考えていると不意に声を掛けられたので思わず驚いてしまう、「おはようございます!」そう挨拶してくる彼を見るとますます頭が混乱するばかりだったのでひとまず落ち着くように自分に言い聞かせながら深呼吸をしていると、ようやく落ち着いたところで改めて今の状況について考えてみることにした、
(さてどうしたものか……)そう思いながら横目でユウキの様子を伺っていると突然こちらを向いて話し掛けてきた、しかもかなり慌てた様子だったので思わず身構えてしまうと何故か頭を下げられた、そのことに首を傾げている俺に向かって彼はとんでもないことを言いだしたのだ、それは俺と仲間になりたいということであった、その理由を尋ねようとしたその時部屋のドアが勢いよく開けられたかと思うと数人の男達が入ってきた、その様子に思わず困惑してしまった俺は彼らの方を見るとその中の一人に見覚えがあったことに気付いた、どうやら以前俺が殺した騎士の一人のようだったのでもしかしたら報復にでも来たのではないかと勘繰ったのだ、しかし彼らは俺のことではなくユウキの方に視線を向けていたのですぐにその目的を察した、 おそらくだが彼らに取って重要な存在なのだろうと判断した、その為とりあえず様子を見ていると案の定その通りのようで俺達を置いて部屋を出て行ったかと思えば戻ってきた時には数人連れてきていた、そうして連れてきた者達を部屋の中へ入れさせた後再び出て行った後で俺達は顔を見合わせた後に口を開いた、「えっと……まずは話を聞かせてくれるかな?何があったのかを教えてくれるかい?」それに対して彼は静かに頷いたのでそのまま話を聞くことにしたのだがその内容は驚愕するものであった、何でもあの戦闘の最中にユウキはあるアイテムを使用してしまったらしくその影響によって体が若返り記憶も子供の頃に戻ってしまったのだそうだ、そのため現在の彼はまだ生まれて間もない子供らしい、ただ不思議なことにこの姿でいると普通に喋れるのだと言うが俺にはよく分からなかった、そして今に至るまでの話をしてくれたのだがその際に驚くべき真実を知ったのである、というのもなんと彼らの国では王族の血を受け継ぐ者は代々特殊な能力を持っているのだという、ただそれを使うことが出来る者は少ないうえに使うたびに命を削ることになるそうで今まで誰一人として使ったことがなかったのでその存在を知るものはほとんどいなかったそうだ、だからこそユウキの存在はとても重要だったのだという、 それを聞いた俺は内心で(なるほどね……だからユウキが王に選ばれたわけか……)と考え納得していたもののやはり疑問もあった、そもそもの話何故彼らがそんな秘密を知っていたのかということだ、そのことを尋ねてみると何と国王が教えてくれたのだと話してくれたのだ、それだけでなく他にも色々教えてもらったようで特に重要なことは自分達と同じ境遇にあるものがいることとその者達を探すことが重要であるということだった、だが今の時点ではそれを行うにしても情報が少なすぎることから一旦保留にするしか無かったのである、それから色々と話し合っていくうちに互いの認識の違いに気付かされた、 まず一つ目は年齢のことなのだが、どうやら俺の方が一つ上だということに驚きを隠せずにいたようだがこれに関しては俺も同じ気持ちだった為に苦笑いを浮かべていたらそれを見ていたのか笑われてしまい少しムッとしていると謝られてしまったのですぐに許すことにした、そして二つ目は名前のことだがこれについては俺に問題があったようだ、何しろこの世界では姓を持つものは王族だけであることを知った上であえて偽名を使っていたのである、それについて聞かれた際に本当の名前を答えるべきか悩んでいるとそれを察したかのようにユウキは話始めた、 曰く自分は元々平民で両親や兄弟と共に生活していたがある日事件に巻き込まれたことで命を落としかけたところある人に助けられたそうだ、その時にその人から名を与えられたのだそうだが詳しいことは教えてくれなかったそうだ、 そこで俺は考えた、(もしかすると彼は神から力を与えられてこの世界に来たのかもしれないな……)そう思ったのである、 何故ならもしそうであるならば色々と辻褄が合うからだ、 なぜなら本来持っているはずのない力をいきなり手に入れたのであればそれに対する反動が大きいと考えるのが普通だろうと考えたのである、現に彼は自分の変化に対してかなりのストレスを感じているようなので恐らく間違いではないはずだ、そしてそれは同時に俺の力が影響していることも意味しているのだ、何せ本来の力を取り戻しつつある彼の力は想像以上のものなのだから無理もないのである、
(それにもう一つ気になることもあるしこれは確かめておいた方が良さそうだな……)そう結論付けたところでそろそろ頃合いだと思った俺は彼に向けて話しかけた、「なぁ……今更なんだが、お前って確か男じゃなかったか?」
その言葉に彼が驚いていると俺は続けてこう言った、「だってお前は元々は男だったんだろ?それが何で今は女の子になってるんだ?ひょっとしてそういう趣味だったのか?」それを聞いて顔を真っ赤にしながら否定する彼の様子を見ているとつい悪戯したくなってしまうのだった、だがそこで俺はある事を思い出したのだ、それは先程アミナと名乗った女性が言っていたことだ、彼女はあの時こう言っていた、「実はね……あの世界では既に貴方の知る聖女様は亡くなっているのよ」その発言に驚いていた俺はさらに彼女から詳しい話を聞いているうちに次第に顔色が悪くなっていったのであった、「それで貴方はどうしたいのかしら?」彼女が聞いてきたことに対して俺は悩んだ末に出た答えが、「……その聖女とやらに会ってみようと思います、このまま何も知らないままの方が辛いですから……」そう答えたのだった、
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