第16話
「さてと……そろそろ終わりにしましょうか?」そう言って手をかざす、そこからは巨大な火球が現れてそのまま勢いよく飛んでいく、その大きさたるや尋常ではなかったため避けることはもちろん防ぐことも出来ないまま直撃してしまったのたがそれでもまだ死んではいなかった、しかしもはや戦うだけの力すら残っていなかった彼はただ倒れていくことしか出来なかった、そんな彼に対しトドメを刺すべく近づきながら話しかける「ねぇ……あなたは自分が何をやったのか分かっているの?あなたがやったことは決して許されることではないのよ、確かにあの者達がしてきたことを考えれば同情の余地があるかもしれないわ、でもねそれとこれは別なのよ、だからこそ私はあなたの仲間になった時決めたの、何があっても守ってあげようってね、だから今回ばかりは絶対に許すわけにはいかないわ、もし次に会うことが出来たのならその時は容赦しないから覚悟しておいてちょうだい」それを聞いた彼は最後の力を振り絞りながらも言葉を返す「ははっ……そっ..かぁ……わかっ..たよ…………だか..ら……きっ…….と……..つ……たえ……るよ……」そう言うとついに限界が訪れたらしくその場で動かなくなってしまった、その後彼の元に駆け寄ったのだがすでに手遅れの状態だったので泣く泣く諦めたのだった、ちなみに他のメンバー達に関しては特に問題なかったようだ、その理由というのがガゼインを倒した後に戻ってきたからである、なんでもこの魔王城の中で大きな力がぶつかり合った形跡があったため急いで駆けつけたらしいのだがそこには何も残されていなかったため仕方なく引き返したという訳だったそうだ、つまり彼らからすれば運が良かっただけということになる、その事に複雑な心境になりつつもまずはお互いの無事を喜びあった、その後これからどうするかについて話し合った結果一旦近くの町に行って様子を見ることにした、というのも今までいた場所と違ってこの場所はかなり危険でありいつ襲われるかも分からないのだ、その為なるべく早めにこの町から離れることにしたのだ、それから数日の間は平和そのものでのんびりと過ごすことが出来ていたのだがつい先程とんでもないことが起こったのである、突然空が割れ始めたと思ったらそこから何かが現れたのだ、最初は警戒していた一行だがしばらくしてそれが味方であることが判明した、というのも空から現れた人物達が「我々は王国軍第1騎士団副団長のアロイスというものだ、詳しい話は後程話すのでとりあえず我々に着いてきてもらいたい!」と言ってきたからだ、それを聞いた一行は半信半疑のまま着いていく事にしたのだがどうやら本当に敵ではないようだった、というのも道中で魔物に襲われる事がなかったのだ、これは別に不思議な話ではないはずなのだが何故か襲ってこないのでむしろ困惑してしまうくらいなのだ、そんなこんなでしばらく歩いているうちにいつの間にか目的の場所へと到着したようなのだ、そしてその場所には大きな建物がありいかにも偉い人が居そうな感じの場所であった、するとその中の一つの部屋に案内された、そこは豪華な装飾品などが置いてありかなりの広さを誇っていたのだが中でも一番目を引いたのは王座であろう場所だ、そこに座っている者が恐らく国王なのだろうと誰もが想像していたが予想は大きく外れたのだった、なぜならそこに座っていたのがまさかの人物だったからだ、その人物はユウキもよく知る者でありこの世界に来る前に初めて戦った因縁の相手でもある悪魔王ベルフェゴールだったのだ、しかもよく見ると周りにも数人いることに気がついた、そのうちの一人に見覚えがあったので尋ねてみると案の定かつての仲間たちだったのだ、これには思わず感動してしまい涙を流してしまうほどだった、そしてしばらくするとようやく落ち着きを取り戻したのだがその時になってふとあることを思いついてしまったのだ、それは目の前にいる者たちについてなのだが彼らは一体何のためにここへやって来たのだろうかという事である、そこで直接聞いてみることにしてみた、その結果分かった事はどうやらこの国を救う為に来たのだということらしかった、それを聞き終えたところで彼女は改めて自分の置かれている状況を再確認することにした、
(うーむ、これはどうしたものか……はっきり言ってかなりマズいぞ、なにせ今の俺では彼らに勝つことは出来ないだろうからな、おそらくというか確実に負けてしまうだろう、だがだからといってここで逃げ出すわけにもいかんしなあ……よし!ここは一か八か賭けに出てみるのもアリかもな、上手くいけばこの場を切り抜けることが出来るかもしれん……いや逆に失敗する可能性だって十分に考えられるわけなんだがまあなるようになるだろ……うん、多分大丈夫さ!きっと何とかなるに違いない……!)などと考えながら覚悟を決めるとこう告げたのだった、「……みんなよく聞いて欲しい、今から俺はある事を試したいんだ……それでもしも失敗した時は遠慮なく逃げて欲しい、何故なら俺が死ぬともう二度と元の世界に戻る事が出来なくなってしまうからなんだ、だからこそ頼む……絶対に死なないでくれ、いいな……?」するとその言葉に答えるかのようにフィリアは力強く頷いた、それを見ると安心出来てしまったのか少しだけ笑顔になっていた、そして次の瞬間、彼女に対して「ありがとな……!」と言い残してその場から走り出した、その直後に背後から声が聞こえてきた、「逃すか!!」「そうはさせないよ、悪いが君を倒すまでは諦めないからね……!」などと言う声が聞こえて来たかと思えば直後に無数の攻撃魔法やら何やらが一斉に飛んできた、それらの攻撃を受けた彼女は成す術もなくそのまま吹き飛ばされて壁に叩きつけられてしまった、当然意識を失ってしまったわけだが幸い致命傷には至らなかったらしくしばらくの間眠っていたようだ……
その頃ルーチェ達はと言うと相変わらず魔族達の相手をしながら出口を探して彷徨っていたようだが一向に見つからないまま今に至るというわけだ、しかし彼女としてはこの状況をどうにかしようと考えていたのだが結局良い案は何も思いつかなかった為仕方がなく現状維持のまま進んでいたというわけである、そんな中ガゼルスだけはずっと何かを考えているようで終始難しい表情をしていた、だがそれについて尋ねようとする者は誰一人いなかったため結局は謎に包まれたままになってしまった、そしてとうとう彼女達も痺れを切らしたのか一斉に攻撃を仕掛ける事にしたようだ、「全くもってしつこいですね〜いい加減諦めたらどうですか?そうすれば見逃してあげてもいいですよ?」その言葉に対しガダルスは「ふざけるな!!そもそも貴様のような奴に言われずともこんな所でくたばるわけにはいかんのだ……そうだろ?」と言った瞬間彼の周りから黒いオーラのようなものが出現したかと思うとそのまま姿を消そうとしていた「待て、逃げるつもりか?この私を前にして随分と余裕じゃないか……」そう言ったもののすでに相手はおらず代わりにどこからか声が聞こえてきた、「……また会おう」そう言って完全に姿を消してしまった、それと同時に辺り一面を包み込んでいた結界が消滅して元の景色に戻ったため戦闘態勢を解いて安堵したのだったがその一方で疑問を抱いていた者もいたようだ、「ふぅ〜やっと出られたぁ……でもさっきの奴らっていったい何だったのかしら?明らかに普通の人とは違うような感じがしていたけれど……?」という疑問に答えるべく口を開いた者がいた、「あいつらはいわゆる魔族って呼ばれている連中だよ」その答えを聞いたフィリアは驚いたような表情をしていた、何故なら彼女にとっては初めて聞く単語だったからだ、なのですかさず聞き返すことにした「魔族……?それってなんなの?」それに対し彼はこう答えた、「俺も詳しいことはよく分からないんだけどなんでも元々は普通の人間だったはずなのに何かのきっかけで魔物みたいな姿に変貌するんだって、だからもしかしたらあの人たちが元は人間だったのかもしれないと思ってさ……」それを聞いた彼女も似たような事を考えていたようで驚きながら「なるほどねぇ、そうだったのね……じゃあ私たちを襲った理由は何だったのかは分からないけど何か理由があるはずだわ、じゃないと普通そんな事しないものね」といったように話していたところ再び声が聞こえてきた為耳を傾けてみると今度はユウキの事について話を始めたのである、その内容を聞いて思わず驚いてしまった彼女は急いで確認してみると確かに心臓は停止しており生きている気配は全く無かった、その為悲しみに明け暮れている時にある事を思いついたようだ、それは彼女がもつ特殊能力を使って蘇生させようという事だ、実は以前とある人物と戦った際に使った事があったらしくその時の経験を生かして行うつもりのようだ、そうしてさっそく試してみる事にしてまずは手を合わせて祈るような仕草をして精神を集中させていった、そのお陰もあって無事成功したようである、その結果彼女の胸の中で鼓動が再び動き出したのを感じ取ったのでほっと胸をなで下ろしていたようだ、 一方ガゼルスの方はというといつの間にかどこかへ消えてしまっていたのだが彼にしてみればどうでもいいことだったようで気にする素振りすら見せなかった、だがその代わりといっては何なのだが別の事で悩んでいたようであり先程の戦いを思い出しつつ考えごとをしている最中だったのだ、その内容というのは彼が放った魔法による効果についてのことであった、実はあの中には呪いが含まれていたため発動すれば必ず死んでしまうはずなのだがそれでも生きていたのである、これにはさすがの彼も驚いていたようだ、
(ふむ、一体どうなっているのだ?……まあいい、どうせ殺すつもりだったのだから別に構わないのだがやはり少し気になるな……よしっならば直接確かめてみるとするか……!)
そう言うとその場から離れていき姿を消した、それを見た他の仲間達は不思議がって後を追いかけようとしたのだがすぐに見失ってしまったので諦めて一旦休憩することにしたのだった、ちなみにフィリアの場合はしばらく動けそうになかったのでその場に放置される形になっていたのだった、それからさらに数日経ちようやく自由に動けるようになった彼女はまず自身の状態を確認することにした、するとなんと驚くことに見た目こそ変わっていないものの魔力やその他能力面においては飛躍的に向上していることが分かってかなり興奮している様子だった、しかしそんな彼女とは違い他のメンバー達はとても複雑そうな表情をしていたのである、それもこれもユウキの死亡が影響しておりその原因を作ったのが自分達だという事が分かっているからだ、しかもそれはまだ記憶に新しい出来事であったためか誰もが気を落としていたのである、もちろんそのことは本人も理解しておりかなり落ち込んでいたのだが今はそれ以上にやるべきことがあると割り切ることにしたようだった、こうしてようやく決意を固めたところで再び探索を開始したのであった、するとその直後に突然背後から声をかけられたのである、振り返って確認するとそこには先程の魔族の姿があった、だがその姿には違和感がある事に気が付いた、というのも何故か鎧を身に着けており剣を所持していたからである、そのことから察するに戦うつもりなのだろうと判断したルーチェ達はすぐに臨戦態勢に入ると同時に戦闘が開始された、とはいえ先程までとは相手の強さが違うため一筋縄ではいかない事は明白であったがそれでも必死に戦い続けていた、しかしその最中に突如ガゼルスが攻撃を仕掛けてきたためにルーチェが防御する形となったのだがその際に隙が生まれてしまい敵の攻撃を受けてしまったのだ、その結果かなりダメージを負ってしまいさらには衝撃で飛ばされてしまった為に地面に叩きつけられ身動きが取れなくなってしまったのだ、そのため仲間を助けることが出来ず絶体絶命の状況に陥ってしまった、ところがそんな状況を打開したのは意外にも聖女の方で自ら敵の懐に飛び込んでいって攻撃をしかけだしたのだった、どうやら先ほどのやり取りによって相手の力を把握したため勝てる自信を持ったらしい……
その後の展開はかなり一方的なものとなりガダルスは徐々に追い詰められていくことになった、そればかりか最後は何も抵抗できずにそのまま攻撃を受けてしまい遂には倒されてしまったのであった、そしてとどめを刺そうと近づいていった時にフィリアが割って入ってきたのである、彼女はなんとか敵を食い止めることに成功してこれ以上の被害が出るのを防いだ、だがそれにより力を使い果たしてしまったせいでその場に倒れ込んでしまうこととなった、それを見て慌てて助けに行こうとした者もいたようだが肝心の相手がそれを許さなかった、そしてそのまま彼女にトドメを刺そうとしたところで異変が起こった、何と突如としてガゼルスから闇のような物が飛び出してきて敵に取り憑いたかと思うとその直後いきなり暴れ出して大混乱になってしまったのだ、だがしばらくすると次第に落ち着きを取り戻したらしくやがて元の姿に戻ったのだがそこで信じられない言葉を口にしたのである、「……俺はいったいどうしたんだ?さっきまで戦っていたような気がするんだがどうしてここにいるんだ?」その言葉を聞いて誰もが驚いたがそれよりも気になったのは口調である、それは明らかに今までのガゼルスとは違っていた為違和感を覚えずにはいられなかったのだ、当然当の本人もその事に気付いている様子ではあったのだがそれでも分からない様子であった、そんな彼の様子を見て不審に思ったガダルスは何があったのか尋ねてみたところこのような答えが返ってきた、「……いや実は俺にもよく分からないんだよ、確かさっきまでは戦っていたはずだったんだが急に意識が無くなって気が付けばここにいてさ、それに俺自身も何が起こったのか理解できていないというかなんというか、正直頭がこんがらがってるよ……」
その言葉に対してフィリアを含めた全員が困惑したものの考えても分かるわけが無かったのでそれ以上は考えるのを止めた、そして改めて状況を確認した結果ガゼルスが倒された後に敵が暴走し始めたという事が分かっただけで結局何故こんな事になったのかは不明のままとなってしまったようだ、その後も何度か話し合ってみるものの特に成果は得られなかったようで仕方なく一度戻ることにしたのであった……(一体何が起きているというのだ?もしかしてこれは俺が仕組んだ罠だったのか……?だとしたら何のためなんだ?何のためにこんな真似をしたというのだ……?まさか俺を誘き出す為だったというのか?だとすると敵は誰だ?一体誰を狙っているというのだ……?)
魔王アルテミリナは自身の城の中で一人考え事をしていた……そう、先程の戦いで自分が仕掛けたあの結界を簡単に破って出てきたあの男のことである……彼女はあの時感じた違和感について考えていたのだったがいくら考えてみてもその理由は分からなかった為ひとまず忘れることにしたようだ、次に考えるべきはなぜ彼のことを知っているのかということについてだった、だが彼女はなぜか知っていた……というよりは知っている気がしていたのだ、その為余計に頭を悩ませていたのだがふと視線を感じ見てみるとそこにユウキの幻影が立っていたことに気づいたようだ、思わず身構えると彼は笑顔で手を振っておりまるで自分に向かって話しかけてきているように見えたため思わず声をかけてしまった、「君は一体誰なんだい?」と、それを聞いたユウキの幻影は少し悲しげに微笑むとゆっくりと口を開きこう告げた、「今はまだ教えるわけにはいかないかな……」そう言って消えていってしまった為残されたアルテミリナはただ呆然と立ち尽くすことしかできなかった、そんな中またしても新たな訪問者が現れる事となった、その者の顔を見た途端に警戒レベルを上げ戦闘態勢に入った彼女だったのだが次の瞬間には別の意味で驚いた様子を見せていた、というのもその者はユウキ本人だったからだ、「ユウキ……?な、なんでお前が私の前にいるのだ!?」驚きつつも何とか冷静さを取り戻して彼に尋ねたところ、「え〜とね、実は君にお願いしたいことがあってきたんだよね〜」と答えた、だがそれを聞いた彼女はすぐさま彼に向かってこう言った、「……悪いけどお前の頼みを聞くつもりはないな、私は自分の事だけを考えることにすると決めたのでな」それを聞いたユウキは思わず苦笑いしながらも更に言葉を続けた、「まぁそう言わずにさ……ちょっとだけ話を聞いてほしいんだけどな、それに君が望むなら元に戻してあげるからさ!」そう言われて思わず黙ってしまう事になった彼女だったがしばらく間を置いた後でようやく口を開いた、「……はぁ……分かった、そこまで言うのなら少しだけ話を聞いてやるとしよう、それで?私にどうしろというんだ?」すると彼は少し言いづらそうにしていたがすぐに気を取り直したのか話し始めた、「えっと、実は僕の体を元通りにしてもらおうと思ったんだけどダメかな……?」その話を聞いた彼女はあまり良い表情をしなかった、それどころか逆に不機嫌そうな顔を見せていた、「お前……そんな事を言うためだけにわざわざここに来たのか?だったらもう話は終わりだな!さっさと消えろ!!」と言ったところで我に返ったのか慌てた様子で訂正をした、「……あっすまないつい感情的になってしまってな、だけど今言った言葉は本当なのか?……嘘だったら許さないからな?」それに対して彼は微笑みながら頷きつつ答えた、「あぁ、もちろんだとも、僕を信じてもらえないのは仕方がないけどね、だからもしそれが本当ならすぐにでも戻してくれると嬉しいなぁ……」
それを聞いてようやく信じてもらえた事でホッとしたユウキは再び彼女にこう話しかけた、「……それじゃあ早速戻してもらおうかな♪」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。