第12話

205.「とりあえず今日はここでゆっくり休んでくれ、明日に備えてしっかり準備しておくんだぞ」そう言われて俺たちはそれぞれの部屋へと向かったのだった、その夜俺は一人で色々と考え込んでいた、自分がどうして選ばれたのかを、そしてその答えを考えていたのだが結局わからなかった、だが少なくともあの場で出会った時とは比べものにならないくらいに成長していたのは確かだった、その証拠に俺のステータスは現在こんな感じになっていた。名前:ユージ・シライシ性別:男年齢:15種族:人族レベル:25職業:【戦士】体力:118筋力:112耐久:100魔力:105敏捷:125賢さ:72運:50攻撃力:132防御力:120魔法攻撃力:134回避力:99命中率:92スキル:剣術10/身体強化3/属性強化2/物理攻撃耐性7/魔法攻撃耐性6/毒無効化4/状態異常回復1/気配感知8/言語理解MAX

221.(……ここは一体どこだ?)そう思い周囲を見渡すと何もない真っ白な空間が広がっていた、そこに一人立っていたのだ、しばらくその場に留まっていたのだが不意にどこからか声が聞こえてきた、「……ようやく見つけました……」そう呟くと同時に目の前が光り輝いたかと思うとそこには白い衣に身を包んだ一人の女性が佇んでいた、「初めまして、私は女神イリスと申します」女神と名乗る女性を前にして唖然としていたが我に返るとすぐさま問いただしたのだった、「えっと……一体ここはどこなんですか?それとあなたが本当に女神だとしたらどうしてここに?」「慌てなくても大丈夫ですよ、一つずつ説明していきますね、まずここがどこなのかですが……実は私にもわからないんです、気がついたらここに飛ばされていたんです」それを聞いてさらに混乱すると続けてこんなことを口にした、「実は私……とある目的があってここに来たんです、それが達成できれば元の場所に戻れるのでそれまではここに居てもらうことになります」そんなことを言われてしまいますます頭が混乱してしまうもすぐに持ち直し再度質問をしてみた、「えっと……その目的は何なんでしょうか……?」そう言うと彼女はこう答えたのだ、「私がここに来たのはある人を捜すためです、その人の名は勇者様と言います」その名前を聞いた瞬間一瞬思考が停止した後、一つの疑問が浮かび上がったのだった、「じゃあもしかして……俺を呼んだのってあなたなんですか?」しかしそれに対し彼女は首を横に振って否定した、そして少し悲しそうな表情でこう言ったのだった、「残念ながら私ではありません、あなたをここへ呼んだのはあなたの中のもう一つの魂、言わば前世の勇者様なのですよ」そう言われて益々意味がわからなくなってしまったのだが、その後彼女にいくつかの質問をした後その場を後にした、

212.翌朝、目が覚めると早速準備を済ませダンジョンへ向かった、するとそこにいたのは昨夜会った人物達だった、「やあ、おはよう、よく眠れたかい?」そう尋ねてきた人物はこの国の王であり俺の恩人である『ロイド・エルスタリア』というらしい、「ええ、なんとか……」そんな当たり障りのない会話をしつついよいよ中へと足を踏み入れたのだった、すると目の前に広がった光景を見て思わず言葉を失ってしまった、なぜなら今まで見たことのないほど巨大な建物が建っていたからだ、しかも外観だけで見ればまるで城のようだと思ったその時後ろから声が聞こえた、「ようこそ我が城へ!君達にはこれからここで修行を積んでもらう、期間は一ヶ月だ」それを聞いて愕然としたのも束の間、すぐに説明が開始された、内容は大まかに三つに分かれており一つ目は座学でこの世界やダンジョンについて、また、各階層の特徴などを叩き込まれたのだ、ちなみにこれらの情報は事前に聞いていたらしいのだが、実際に目にするまで実感が湧かなかったのだが、いざやってみるとこれが中々難しい、特に魔物との戦いについては今一つ身が入っていなかったようだ、それからというもの、戦闘を繰り返しながら徐々に実力を上げていくことになるのだった。

216.「……はぁ~……暇だなぁ~」俺がボソッとそう呟くと隣にいる奴が話しかけてきた、「仕方ないだろ、お前がこの依頼を受けたいって言ったんだから文句言うなよな……」そう言いながら溜め息をつくこいつは『アレン・ヴァンガード』と言って俺とは昔からの友人で幼馴染でもあるのだ、そんな俺達にギルド長からの呼び出しがかかったのだ、何事かと思い行ってみるとそこにはギルド長の姿があった、そして開口一番にこんなことを言ってきたのだ、「君達にお願いしたい依頼があるんだが、引き受けてくれるかな?」すると二人は口を揃えてこう答えたのだ、「もちろんやりますよ!」こうして俺達は初の依頼を受けることになったのだった。

217.今回の仕事は森の奥地にある洞窟内の探索だった、何でも数日前にその付近で見慣れない物を発見したから調査して欲しいとのことらしい、それを聞いた俺は真っ先に思い浮かんだことを口にしていた、「なぁこれってあれじゃね、噂のダンジョンってやつ、なんか凄そうな感じしないか?」それを聞いてアレンは笑いながら答えた、「お前なぁ、ダンジョンなんてまだある訳ないだろ?もしあったとしてもとっくに攻略されてんじゃないのか?」それを聞いた俺は内心ムッとしたが何とかその気持ちを押し殺し平静を装った、「なんだよ、夢がない奴だな、せっかく面白そうなのに……」すると今度は呆れた様子でこう言ってきた、「全く……そんなことよりもそろそろ着くみたいだぞ」その言葉通りに進んでいくと前方に何やら奇妙な建造物が見えた、だがそれを見た瞬間何か嫌な気配を感じたため警戒しながらゆっくりと近づいていったのだがそれは杞憂だったようだ、というのも入り口らしきものがどこにも見当たらないのである、「……どうなってんだこれ」思わずそう呟くと突然どこからともなく声が聞こえてきた、「……よくここまで辿り着きました、まずはあなた達の勇気を称えましょう、ですがこれ以上進むには覚悟が必要になります、なのでここを通すわけにはいきません」その声はそう言ってくるなり周囲の空間を変化させていったのだ、それを見て咄嗟に叫んだ、「二人とも俺に捕まれ!!このまま飲み込まれるぞ!!」だが既に手遅れだったのか、俺たちは謎の力によってどこか別の空間に飛ばされてしまった、気がつくと先程までいた場所から少し離れた草原に横たわっていた、すると隣に立っていたアレンが目を覚ましたらしく声をかけてきた、

「おい大丈夫か!?しっかりしろ!」「ううっ……何とか大丈夫そうだぜ……」それを聞いたアレンはホッとした表情を浮かべていたがその直後真剣な表情になってこんなことを言い出した、「なあ……俺達どうなったんだ?それにあの声一体何だったんだ?」俺はその問いに対して先程聞こえた声のことを説明したのだが何故か首を傾げてきたのだ、そこでさらに詳しく話してみると驚くべきことが分かったのだ、どうやらアレンはさっきの声を覚えていないようだった、それを聞き驚いた俺は急いでステータスを確認することにしたのだがなんとスキルまで消えてしまっていたのだった、

220.翌日、昨日の出来事をギルドに報告しに行くために朝早くから出かけることになったのだがその際に妙な違和感に襲われた、

(ん?……何かおかしいような……?)そう思い周囲を見渡してみるも特別変わった様子はない、首を傾げつつも準備を終えると家を後にした、街へ向かう道中にも違和感を覚えたがその原因が何なのかは全くわからなかった、やがて街に到着した俺はギルドに到着すると早速受付に向かった、そして例の場所を訪れたのだが、そこには誰も居なかった、不思議に思ったもののひとまず話を聞こうと奥へと進んだ、そして最奥部の部屋に着くとノックをし中へと入った、だが中には誰もいなかった、そのことに驚いていると部屋の主であろう人が声をかけて来た、「おや?どうしたんだいこんなところまで」振り返るとそこには一人の老人が立っていた、そしてその姿を見た途端なぜか懐かしさを感じたのだがそれよりも先に質問を投げかけたのだ、「えっと……ここは何の為の場所なんですか?」その質問にその人はこう答えた、「ああ、そうか、君はここに来たばかりだからね、無理もないか、では改めて自己紹介しよう、儂の名はガノン・エルーシュと言う、以後よろしく頼むよ、それでこの場所についてだが実はここはギルドの本部のような場所でね、様々な仕事の依頼が集まるところなんだ、とは言っても実際には殆ど来ないけどね、ただたまに特殊な依頼が入ることがあってそういう時はこちらから出向くこともあるんだよ」それを聞いて何となく納得したがやはり何かが引っかかる気がしたのでそのことを尋ねてみた、 すると意外な答えが返ってきたのだ、それは「ふむ……おそらく君の中では既に確信があるのではないかね?そうでなければここまで来ていないだろうしな」それを聞いた瞬間ドキッとした、(確かに……何故わかったんだろう?)そう考えた次の瞬間いきなり核心をつくようなことを言われた、「……それはだね、君のその格好だよ、恐らくどこかの国の騎士団の者なんだろう?でなければわざわざ装備を整えてここへやって来る理由はないからねぇ」そう言われて驚きつつも冷静に聞き返した、「どうしてそう思ったんですか?」そう尋ねると笑みを浮かべながら答えた、「なに簡単なことだよ、この国でそのような格好をしている人間はまず見かけないし、仮に着ているとしたら何らかの目的があるからとしか考えられないからな」そこまで言われてようやく自分の置かれている状況を理解した、それと同時にこの人の前で迂闊なことは言えないと悟ったのだ、

228.しばらくしてようやく冷静さを取り戻すことができた俺はなぜ自分がここにやって来たのかその理由を話すことを決意した、そしてこれまでにあった出来事などを一通り話した後ある質問をしたのだった、それは「どうすれば強くなれますか?」というものだった、それに対してしばらく悩んだ後こう言った、「……そうだね、とりあえず今はこの街を拠点にして生活しなさい、そうすればそのうち道は見えてくるだろう」そう言われた俺はお礼を言うとすぐに帰路についたのだった、それから数日後再びあの人に会いに行くと今度はこんな提案をされたのだった、その内容は「しばらくここで冒険者として働くといい、きっと得られるものもあるだろうから、ただし無茶だけはしないようにね」それを聞いた俺は早速ダンジョンに向かう準備を始めるのだった。

229.「……はぁ~疲れた~」今日も一日の労働を終え家に帰り風呂を済ませた後布団に入ると急に睡魔に襲われそのまま深い眠りへと落ちていった、それからどのくらい時間が経っただろうかふと目が覚め外を見るといつの間にか夜になっていたようで空一面に星が輝いていた、そんな光景を見ながらふと思ったことがあった、(そう言えば前世でもよく星を眺めてたような……確か星座を見つけることが楽しみだった気がするな)そんなことを思っていると突然頭の中で声がした、「……様……勇者様……勇者様……」

「え……?」その声に驚いて目を覚ますと目の前にいたのは見たこともない少女だった、すると少女は微笑みながらこう話しかけてきたのだ、「やっとお目覚めになりましたか?おはようございます♪」そんな彼女の言葉を聞きながら周りを見渡すとそこは自分の部屋とは全く異なる風景が広がっていたのだった、「……ここはどこだ?」そう聞くと彼女は笑顔で答えた、「ここはあなたの夢の中ですよ」その言葉を聞き思わず納得しそうになったがよくよく考えるとそんなことはあり得ないことに気付いた、しかしその直後信じられないことが起こったのだ、彼女が指を鳴らすと同時に俺の体はその場から消えてなくなってしまったのである、一瞬何がなんだかわからずにいたがすぐに気を取り直すと彼女に問いかけた、「君は一体誰なんだい?」すると彼女から驚くべき言葉が発せられた、「私はあなたに呼ばれた存在なのです」「どういうことだい?」そう問いかけるも返事はなくその代わりにこんな言葉を告げられたのだった、「私の力が必要なときはいつでも呼んでください、どんな時であろうとも必ずあなたの元に現れますので……」そう言って頭を下げるとその姿はまるで初めから何もなかったかのように消えてしまった、その後目を覚ました俺は先程起こった出来事を思い返しながらこう呟いた、「……あれは夢だったんだろうか?」そう思いながらも念のため確認するためにステータスを開いてみるとそこに書かれていたのは予想だにしなかった内容だったのだ、なんと全ての数値がMAXになっていたのだ、

230.あれから数日が経過したある日、いつものように仕事に向かおうとしている最中アレンに話しかけられた、「なあユウマ、お前この仕事が終わったらどうするんだ?」それに対し俺はこう返した、「そうだな、一旦家に戻って家族や仲間と過ごすかな」そう答えると続けてこう言った、「ところでお前はどうすんだよ?ずっとここにいるつもりなのか?」すると彼は苦笑いを浮かべながらこう返してきた、「俺さ、昔からお前が羨ましかったんだ、だってお前は子供の頃からずっと剣の練習をしていただろ?それなのに俺にはこれといった取り柄がなかったからさ、それで思ったんだよ、もし俺に何かあった時はお前に託そうかなって……」それを聞いた瞬間彼の気持ちが少しわかったような気がしたのだ、(なるほど……こいつも色々と苦労してたんだな)そう感じながらも最後に一言告げた、「任せろとは言わないができる限りのことはしてやるよ」それを聞くと嬉しそうに笑った後でこんなことを言ってきた、「おう!頼んだぜ相棒!」それを聞いた俺もまた笑顔を浮かべていた。

231.「よし、今日はこれくらいにしておこう」そう言うと俺は荷物を纏めて宿へと向かうことにした、というのもここ最近あまり成果が出ず困っているからである、(このままではまずいな、そろそろ何かいい方法がないものか)そう考えながら歩いていると突如どこからか声が聞こえてきたのである、「……様、ユウマ様!」その瞬間ハッとすると同時に思わず周囲を見渡してみたのだが特に変わった様子はなかった、それでもなお呼びかけは続いていたので仕方なく声に向かって話しかけることにしてみた、「……誰だか知らないが人違いじゃないのか?」だがそれに対する答えは予想外のものだった、「いいえ、あなたは間違いなく私が探していた人物なのです」その話を聞いた俺は益々混乱してしまったがどうにか心を落ち着かせてもう一度聞いてみた、「なぁ、さっきから言ってるんだがあんたは何者なんだ?何で俺のことを探してたんだ?」するとその人物は少し間を置いた後でこう言った、「……今はまだ詳しくは話せませんが、これだけは言っておきます、近いうちにこの世界は大きく変わります、そしてその影響によって多くの人々が苦しめられるでしょう」だがそこでさらに謎が増えたため思わず尋ねた、「それはどういうことなんだ?」そう聞くと一呼吸置いた後でゆっくりと口を開いた、「それを話すにはもう少し時間を頂く必要がありますね、何せまだ確証がないのですから……」そう言われるとそれ以上聞くことはできなくなったので仕方なく帰ることにしたのだが、その時に聞こえてきた言葉に耳を疑った、「ですがあなたが今一番求めているであろう情報を一つお教えしましょう、『聖女』と呼ばれる女性を見つければあなたの求める答えが得られると思いますよ、ではごきげんよう」それだけ言うと声は聞こえなくなったのだった、「さてどうしたものか……そもそもあの声の主が何者かすら分からないしな……」そんなことを考えながら歩いているうちにいつの間にか家に到着してしまった、だが不思議なことにそこには何故かいつもとは違う空気が漂っていたのだ、(なんだ?やけに静かだな)そう思いつつも中に足を踏み入れるとそこにいたのは見覚えのある後ろ姿があった、しかしその人物はこちらを振り向くなり満面の笑みを浮かべてこう言ったのだ、「お帰りなさいませ、旦那様」その言葉に呆然としていると突然抱きつかれたかと思うと頬にキスをされたのだった、突然のことに驚いているとその人物はゆっくりと顔を上げて話しかけてきた、「ふふ、そんなに驚くことはありませんよ、何故なら私達は夫婦なんですから、ねえ、そうですよね、勇者様」それを聞いてようやく気付いた、そう、俺が探してる人物が誰なのかを、

「ああ、もちろんだよ、俺の愛しい聖女さん」そう言いながら俺は彼女を強く抱きしめるのだった、

234.ようやく会えたね、愛しの旦那様♡

235.あれから数週間が経過し、俺達は結婚したことをギルドに伝えに行くことになったのだが、その前に一つ気になったことがあった、それは何故彼女が俺を探していたのかということだ、その答えを知るために俺は彼女の元を訪れた、「すまない、実は聞きたいことがあるんだがいいかな?」尋ねると彼女は笑みを浮かべながら言った、「あら?私に何か用ですか?」どうやら彼女には俺達のことを伝えてないようだったのでこの際全て話そうと覚悟を決めてから話し始めた、「単刀直入に言う、どうしてあの時俺を追いかけて来たんだ?」すると彼女はしばらく考えた後こんな答えを返してきた、「……正直言うと私もよくわかりません、ただあの時はなぜか無性に貴方に会いたくなったんです」その言葉を聞いた俺はある考えが浮かんだので思い切って尋ねてみた、「もしかして君は聖女なんじゃないのかい?」すると彼女からは予想通りの言葉が返ってきた、「確かに以前はそうでしたけど今の私は違いますよ、もうあの時の私ではないんですから……」それっきり黙ってしまった彼女だったが何かを思い出したようにこんなことを言い始めた、「そう言えば……前に貴方の名前を教えて欲しいと言ったことがあるの覚えていますか?」いきなり何を言い出すかと思えば……そんなことを言われた記憶は確かにあった、なので素直に頷くと彼女は笑顔で続けた、「それでは教えてください、貴方の本当の名前を……」その言葉を聞いてようやく気付くことができた、(そうか……そういうことだったのか……)心の中でそう思うと俺はゆっくりと名前を口にした、「……俺の名前はユウマ・ミウラ、改めてよろしくな」そう言うと彼女もまた同じように答えたのだった、「はい、こちらこそよろしくお願いしますね」こうして無事に再会を果たした二人は結婚の報告をするべく教会へと向かった、

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