第9話

43.「……そういえば自己紹介してなかったよな……」今更ながらにそう思い直す俺だったが時すでに遅しということで素直に諦めることにした、その後ギルドで冒険者登録を済ませた俺は、今後の生活について考えを巡らせながら帰路につくのだった……44.そして帰宅した俺は自分の部屋でステータスを確認しようとウィンドウを開いてみると見慣れない表記があることに気付いたため思わず目を擦ってしまった、しかし何度確認してみてもそこに書かれている内容は変わることはなく……そしてそれが何を表してるかを理解した瞬間あまりの衝撃に呆然としてしまった、45.その理由は……自分の称号欄にあった〈勇者〉の文字を見たためである、46.「……これは一体どういうことだ……?まさかあいつらも転生者だったりするのか?……いやでもそれならもっとマシな職業に就いてそうな気もするんだが……」顎に手を当てながら考え込むが、これといった理由は見付からず一旦保留にすることにするのだった……47.だが翌日になってもその謎が解けることはなかった、そのため一度気持ちをリセットするために気分転換をしようと街に出掛けてみることにした、48.そうして訪れたのは王都内にある巨大な公園である、この広い公園の中にはいくつものエリアに分かれており、 子供達が遊べる遊具施設や、 大人が寛げる憩いの場として有名な噴水、運動に適した芝生、更に森林地帯もあるというとても大きな公園だ、

49.そんな公園の遊歩道を歩いていると前方に見慣れた人物がいることに気付く、50.「ん……?あそこにいるのは確かサレン……だったか?」その人物の正体は昨日街で会ったばかりのサレンだったのだ、彼女は一人でベンチに腰掛けていて何かを見ているようだった、51.そんな彼女の元に歩み寄った俺は声をかけてみることにした、52.「こんにちはサレンさん!こんなところで会うなんて奇遇だね」そう話しかけられた彼女だったがこちらを一瞥すると、興味なさげに返事を返してきた、53.「……誰だっけあなた?私あなたのこと知らないんだけど?」そう言われてショックを受けたが、俺はめげずに会話を続けることにした、54.「あー……うんそうだよね?覚えてないのも無理はないよ、なんせ君とはこれが初めてだからね!」そう言って笑顔を作る俺だったが、次の瞬間彼女が発した言葉に思わず凍りつくことになった……55.「あなたと会ったことなんてあるかしら?私の記憶だと初めましてな気がするのだけど……」それを聞いて唖然とするしかなかった……56.「──えっ……?」そして数秒間沈黙が流れた後にこう問いかけるのだった、57.「──ちょっと待ってくれないか?俺達って以前にどこかで会ったことあったっけ?」それに対して彼女も怪訝そうな表情を浮かべるのだった、58.「──どういうことかしら……?私は今まであなたのような人にお会いしたことはないはずだけど……?」その言葉を聞き益々混乱する俺だった……59.「いやいやおかしいだろ……!だって俺たちは今日街であったばかりじゃないか……!」それを聞いたサレンは不思議そうな顔をしてこう呟いた、60.「確かにそうだけど……それはあなたの方も同じでしょ?それに私たち初対面のはずなのにどうして名前を知ってるのかしら……?」

61.「──!?」言われてみればその通りだと思い俺は言葉を失ってしまった、なぜなら俺が彼女に会ったのは今日が初めてのはずであり彼女の名を知っていたのも初めてではないからだ……

62.「……どういうことだ……?」全く意味が分からなかったため混乱しかけていた俺だったが不意に肩を叩かれる感覚がしたため振り返ってみるとそこにいたのは一人の女性冒険者だった、彼女は申し訳なさそうに話しかけてくるとこう言った、「ごめんなさいね?この子人見知りなところがあるから許してあげて欲しいのよ、もしよかったら代わりに私がお話しさせてもらってもいいかしら?」どうやら俺に用があるらしく断ろうにも既に隣に腰掛けてしまっているので諦めるしかないようだ、61.「──それで私に話というのはなんでしょうか?」そう尋ねると彼女は笑顔で答えた、62.「いえね、そんなに大した用事じゃないのだけれどうちのパーティに入ってもらいたいと思って声をかけさせてもらったの」そう言われ一瞬固まった後、何とか正気を取り戻した俺は彼女にこう問いかけた、63.「すみませんが理由をお伺いしてもよろしいですか?」そう尋ねる俺を彼女は訝しげな目で見ていたがやがて答えてくれた、64.「理由と言われても特にないわよ?強いて言うならあなたくらいの歳の子って皆優秀なんですもの……まあだからこそ声をかけたわけなんだけど……それに──」65.そこまで言うと突然口を閉じると俯いて黙り込んでしまった、それを見た俺はこれ以上追及するのは止めておいた方がいいと考え別の質問を投げかけてみた、66.「……ではもう一つお聞きしたいのですが、今何レベルなんですか?」すると今度は顔を上げてくれたのでほっとしていると予想外の返事が返ってきたのだった……67.「あら?気になるのかしら……?別に教えてあげてもいいわよ?その代わりあなたが持ってるものを全部置いて行ってくれたらの話だけど……?」そう言うと俺の顔を覗き込むように見つめてくるがその表情には一切の変化がなかった、68.「……どういう意味ですかそれ……?」意図が全く分からず聞き返すことしか出来なかった、69.「ふふ……分からないならいいわ、とりあえず今はあなたに興味があるの、だからついて来てくれるわよね?」70.そう言って微笑む彼女を見て思わず寒気を感じたものの断ることも出来ずついていくことになってしまった

71.その後、連れられてやって来た場所は冒険者ギルドから程近い場所にある一件の建物だった、71.建物の入口には《冒険者ギルド セレーナ支部》と書かれた札が掲げられており、ここが冒険者ギルドの所有する施設の一つなのだと分かった、72.「さぁ入ってちょうだい」彼女に促され建物の中に入ったところで驚いた、そこは明らかにギルドの内部ではなかったからだ、73.「え?あれ?ここギルドじゃないですよね……?」戸惑いながら聞いてみると何故か得意げに話し始めたのだ、74.「ここはね……とある貴族の方が個人的に所有している屋敷なのよ、そしてこの施設はその方の別荘ってわけなの、凄いでしょ?」75.自慢げに語る彼女の様子を見て若干引いていると続けてこう言った、76.「ちなみにこのことを誰かに話すと殺されちゃうかもしれないからね……?それだけ気をつけてくれたら大丈夫よ♪」そう言う彼女を目の前にして俺は頷くことしかできなかった……77.「……わかりました」78.「──ッ!!それじゃあ早速始めましょうか!」79.そう告げると突然彼女は俺の服に手を掛けてきたのだ、80.突然のことに驚いているうちに服を脱がされてしまい下着一枚にされてしまった

81.それからしばらく経ったところで彼女がこんなことを言い始めたのだった、82.「はい!それじゃあそこに座ってね!」言われた通り大人しく座っていると突然目隠しをされたかと思えば次の瞬間首に冷たい感触を覚えた、83.そして直後視界が開けたと思ったら彼女は再びこんなことを言い出したのである84.「はい終わり♪じゃあ次で最後のテストをするから頑張ってね!」85.そう言われ何が何だかわからなかったが、取り敢えず頷いた後で指示に従ってみることに、86.だがここで俺はある重大な事実に気付いてしまうのだった……87.「あっ!?ちょっと待ってもらえませんか?」──なぜか魔法を唱えてもスキルが使えないということに……!!88.「ん?どうしたの?もしかして怖気づいちゃった?」そう問いかけてくる彼女の顔からは不安の色が見え隠れしていた、89.そんな彼女にこう告げた、90.「……実は俺まだ何も覚えてなくてですね……」それを聞いた彼女は驚愕していたが次第に落ち着きを取り戻していった様子だった、91.その後なんとか事情を説明することに成功した俺達はこれからどうするかを考えることにした、92.「──さてどうしようか……?まさか本当に記憶を失ってるなんて思わなかったからねぇ……」93.困った様子で頭を掻く彼女に俺は思い切って尋ねてみた、94.「あの……一ついいですか?どうしてサレンさんは俺にここまで親切にしてくれるんですか?」95.その質問にキョトンとした表情を浮かべた彼女はやがて微笑みながらこう言った、96.「うーんそうね……まぁ単純にあなたの才能に惹かれたっていうのもあるんだけど……それよりもやっぱり『あの人』と同じ匂いを感じたからなのよね」97.そう呟く彼女の表情はとても寂しそうで今にも消えてしまいそうだった、98.その様子を見た俺はそれ以上は聞かないことに決めた、99.「えっと……そろそろ帰りましょうか?今日はわざわざありがとうございました!お陰でいろいろ助かりました!」俺が感謝の言葉を伝えるとサレンは優しく微笑んでいた、100.「ふふっ……どういたしまして!私も楽しかったわ」こうして初めてのギルド訪問は幕を閉じたのだった、

101.翌朝目が覚めると、俺はベッドの上に寝転がっていた、

102.昨日までの記憶がない、 しかし不思議と焦りは感じなかった、何故ならそれが当たり前のことだと知っていたからだった………………

103.それから俺は何事もなかったかのように支度をして部屋を出た、そこでふと疑問に思った、104.「そういえばなんで俺ってこんなところにいるんだろう……?」そう思い記憶を辿ろうとするも、どうしても思い出すことは出来なかった、105.そのため仕方なくその場を後にするのだった……

※この作品は現時点で第2章です。

(う〜ん……昨日はよく眠れなかったなぁ……)そう思いながらベッドから這い出る俺だったがすぐに違和感に気付いた、106.なぜなら俺の部屋の内装が全く変わっていたからだ……いや正確に言えば違うわけではないのだが、それでも何かが決定的に違っていたのだ……107.「一体何がどうなってるんだ……?」そんなことを考えながら鏡の前に立った俺は衝撃的な事実を知ってしまったのだ……108.「……は?」それはまるで別人のような姿がそこには映っていた、109.見た目こそさほど変わってはいなかったがよく見ると髪色が金色になっており、目つきや体格もどこか変わっているような気がしたのだ、110.あまりの事態に理解が追いつかないながらも一つだけ確かなことがあった、111.俺はもう今までの俺ではないということだった……

112.それから数時間が経過していたが未だに頭の中は混乱したままだった、 それもそうだろう何せ自分が自分でなくなっているのだから当然といえば当然だ、

115.そしてさらに驚くことがもう一つ、いつの間にか手に握られていた一枚の紙きれがあった、その内容を確認したところ次のようなことが書かれていたのだった、

116.どうやらこの世界での俺の職業について書いてあるようだが果たしてどんな内容なのか……?恐る恐る確認することにした……

117.そこに記載されていた内容は以下のようなものだった、

118.──ステータス── 《名前》ユウ・タカツキ(柳悠人)

《年齢》15歳 《種族》人族 《職業》冒険者Lv.1、剣士見習いLv.1、鍛冶師見習いLv.1、錬金術師見習いLv.1、召喚術師見習いLv.1、調合師見習いLv.1、盗賊Lv.1、拳闘士見習いLv.1、槍使い見習いLv.1、斧使い見習いLv.1、騎士見習いLv.1、魔術師見習いLv.1、僧侶見習いLv.1、冒険者見習いLv.1、 ────────────……………………

《HP》120/120 《MP》150/150 《SP》60/60 《攻撃力》45+20=60 《防御力》40+5=50 《知力》12×1.5=30 《敏捷性》22+8=32 《精神力》19×1.5=27 【残りスキルポイント】25P、【装備品】

〈頭〉なし 〈胴〉綿の服 〈腕〉なし 〈脚〉革の靴 ────── ────ッ!?なんだこれ……?なんでこんなものが書いてるんだ……!?というかそもそもこれは一体なんなんだ……!?

121.混乱する頭で考え続けているとある一つの可能性に行き着いた、それはもしかしたらこれが俺自身のものであるのではないかというものだ、つまり俺は今自分の能力が書かれている紙を眺めているということになり、さらにその中にはゲームなどでよくあるようなステータスのようなものも存在していることになる……

122.それを確かめるため試しにもう一度声に出して読んでみることにした、

123.すると次の瞬間頭の中に文字が浮かび上がってきたのだ……125.「……嘘だろ……?」その光景に驚き思わず声を漏らしてしまった、 ────── 《HP》……残りの体力を表す値。0になると死ぬ。

《MP》……魔力残量を示す値。0になっても特に影響はない。

《SP》……現在取得している技能の熟練度を表す数値。レベルアップ時に加算される。

────── ──────────── 〈攻撃力〉……物理的な攻撃力を現す数値。ダメージ算出に使用される。また、防具を装備している際には防御面でも使用される。装備によって上昇値は変化する。

── 〈防御力〉……物理及び魔法による攻撃に対する抵抗力を現す数値。ダメージ算出に使用される。また、武器等を装備することで上昇する。この数値が高いほど被ダメージが軽減され、状態異常になりにくくなる。ただし防具を装備した場合のみは別の計算になる。この数値が高くなるほど相手の攻撃を受け止める際の威力が増す。この数値が高いほど受ける魔法の効果を受けづらくなる。── ─ 〈知力〉……魔法を発動するための燃料となるエネルギーを現す数値。この値が高ければ高いほど一度に使用できる魔法の回数が増える。

── 〈精神力〉……精神状態を安定させる効果のあるエネルギー、いわゆるメンタルゲージを現す数値。この値がゼロになると、暴走状態となり周囲の人間に被害を及ぼすことがある。また、この数値は一定時間毎に回復する。この数値が高いほど、精神的なストレスを軽減され、冷静な判断が出来るようになる……──

126.「はぁ……すごいなこれ……ん?ちょっと待てよ……?」改めて能力の確認をしていた俺はふとあることに気付いた、それは俺の所持スキルの中に明らかに異質なものがあったのだ、128.「……『召喚術』?」その単語に心当たりがなかった俺は再び説明を読み進めてみることにした、129.「なになに……《契約を交わした存在を自らの身に呼び出すことができるスキルである》……か……」130.「うーん……いまいちよく分からないな……」そんなことを呟いていると突然頭に声が響いてきた、

131.「ん?……誰か呼んだ?」突然の声に驚いた俺は辺りを見渡してみたが誰の姿もなかった、132.だが確かに聞こえた、それもかなり近い場所からだ、「……ッ!?上かッ!?」その声に導かれるように天井を見上げてみるとなんと天井に大きな魔法陣が浮かび上がっていたのだ、133.その異様な光景に目を奪われていると今度はまた別の声が聞こえてきたのだ、「我を呼んだのはお前か?」その声は間違いなく目の前にいるはずの何者かから聞こえてきたものだった、134.突然の出来事に動揺しながらも返事を返した、「……えっと……まぁはいそうです……」135.「ほぅ……面白いではないか」そう言った後声の主はこう言った「よかろう我が力を貸そう」そう告げられた次の瞬間目の前の魔法陣が光り輝きそこから一人の女性がゆっくりと降りてきたのだった……

136.舞い降りた彼女を見たとき俺の中で様々な疑問が浮かんだ、何故こんなにも彼女は堂々としているのか?どうして彼女はこんな所にいるのか?どうして彼女は俺と契約を交わしたのか?次々と浮かび上がる疑問を一つ一つ整理していくうちにある一つの答えに辿り着いた、それは恐らく彼女が本物の精霊なのだろうということだ、 というのも彼女の姿をよく見てみたら背中に翼が生えていたし服装も見るからに神々しいオーラを放っていた、何より普通の人間には決してできないような動きをしていたのだ、137.「うむ……大体合ってるが正確には少し違う、我は精霊であってそうではない存在だ」「それってどういうことなんですか?」俺が聞き返すと彼女はこう答えた、「そうだな、分かりやすく言えば今の我は半分人間、もう半分は霊体のような存在と言ったところだろう」「えっ……じゃあまさか幽霊ってことですか?」俺がそう言うと、彼女は笑いながら「ふっ……ふふっ……ふははっ!面白い!なかなか愉快なことを言うな貴様は!気に入ったぞ!」そう言われたが俺は全く面白くはなかった、それどころか恐怖で体が震えていたほどだった、しかしそれでも何とか質問を続けようとしたその時突然扉がノックされた、そしてその数秒後に扉が開かれた、そこにいたのはサレンさんだった、「あれ?どうしたのサレンさn──ってユウくん何してるのそんな所で!しかもなんで女の子と話してるのよ!」サレンさんが慌てているのを見てふと我に返った俺は咄嗟にこう言って誤魔化した、「……あ、あの!俺なんか記憶無くしちゃったみたいなんですよ!なのでサレンさんのこともよく覚えてなくて!本当にすいません!」それを聞いて納得した様子のサレンさんはすぐに俺に優しく語りかけてくれた、「……大丈夫よ、きっとすぐ思い出すわ、だから心配しないで!」それを聞いた瞬間なんだか救われた気がした、「……はいっ!頑張ります!」こうしてサレンさんの協力のもと少しずつこの世界のことや俺のことなどを知ることになったのだった、

141.それから数日間の日々が過ぎ去っていったある日のことだった、「──ねぇユウくん!私と一緒にギルドに行ってみない?」突然のことに驚いてしまったがよくよく話を聞いてみるとどうやらこの世界でのギルドとは仕事を斡旋してくれる組織のようなものらしく仕事さえ見つければお金を貰えるということだったのだ、「よし……!そうと決まれば早速ギルドへ行くぞっ!」そう言って立ち上がった時だった……突如として激しい目眩に襲われそのまま意識を失ってしまったのだった、

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