第5話
だが、それも束の間のことで今度は一転して笑顔になると俺にこう告げてきた。「――私は今でも貴方のことを愛しています、それは未来永劫変わることはありません。ですが……」そう言いながら少し間を置いた後でさらに続ける。「――残念ながら貴方と私が兄妹であるという時点で、決して結ばれることのない運命であると悟ってしまったのです……ですから――」そう言うと懐から一枚の紙を取り出して差し出しながら再びこう言ってきた……「だからどうか最後に思い出を作らせてくださいませんか……? そうすれば諦めもつくと思いますので……」差し出された紙に書かれている内容は知らないがなんとなく想像がついていたので一応確認してみると、案の定そこには予想通りの内容が書かれていた。その内容というのは――婚姻届だった!! 当然の如く驚いたのだがよく見るとその日付が俺の死んだとされる日より前の日付で書かれたものであり、更に詳しく見てみると何故かすでに記入済みとなっていた……しかも証人の欄には見覚えのある名前が書かれておりそれを見て察した俺は静かに受け取ると、ペンを手に取って自分の名前を書き始めた……もちろん相手は言うまでもなくユアだ。そしてその行動を見た彼女は喜びながらもどこか複雑な表情でこちらを見ていたが敢えて無視して書いていくこと数分が経過したところでようやく書き終えた俺はそれを差し出してこう告げた。「これで良いか……?」すると彼女は笑顔で受け取り確認するように目を通すと頷いて言った。「――ありがとうございます、では早速提出してきますね♪」そう言うや否や何処かへ向かおうとする彼女を慌てて引き留めた俺は再度聞いたんだ――本当に良いのか?ってな……すると彼女は微笑みながらこう返してきたんだ……「えぇ、もちろんです♪ だって貴方のいない世界なんてもう私にとって何の価値も無いのですから……」その言葉を聞いて何も言えなくなってしまった俺を見て彼女は微笑むと再び口を開いた――「それに、これからはずっと一緒なのですからね♪」そしてそのまま去って行ったかと思うと数分後に戻って来た彼女の手には小さな箱があり、中には一つのリングが入っていたんだがそれを見た俺は瞬時にある事に気が付いてしまった……なぜならそれは婚約指輪と呼ばれるものだったからだ!「――さぁ行きましょうか、お兄様!」そう言った彼女の言葉に黙って頷いた後について行くと辿り着いた場所はとある建物で中に入った瞬間嫌な予感を覚えたんだが時既に遅く、そこで待ち構えていたのはかつての仲間であった奴だった。そいつの正体はなんと魔族の女王であるアルティナだったんだが、彼女の口から発せられた衝撃的な発言によって俺とユアの関係と現状を全て知った上で結婚を認めると言われたばかりか、式は身内だけで行われることとなった……その後無事に式を終えて新居に引っ越すとユアと二人で生活を始めた俺は改めて今後どうするのか考えようとしたその時、不意に部屋のドアがノックされたので返事をするとそこから出てきた人物を見て俺は思わず絶句した。というのもそこに立っていたのはウェディングドレスに身を包んだ俺の妻となる予定だった女性だったからだ……!! だがよくよく考えれば分かる話なのだが俺が結婚したという話を知っているのは今現在俺しかおらず、そうなると必然的に今目の前にいる人物は誰なのかという話になる訳で、そこまで考えた結果出した結論とは恐らく目の前の少女は偽物ではないかという結論に至り正体を確かめるために名前を聞くことにした。「初めまして! 私はあなたの奥さんですよ」すると彼女は満面の笑みを浮かべながら答えてくれたのだがその顔を見て確信するに至った俺は静かに呟いた……「……やっぱりそうか……」その言葉に首を傾げる偽者の少女だったが次の瞬間俺は一気に間合いを詰めると彼女に当て身を食らわせて気絶させるとベッドに横たわらせておいた後で、本物の彼女の居場所を聞き出すと急いで向かう事にしたんだ……! 何故ならもし彼女が人質にでも取られたりしたら非常に厄介だし最悪の場合を考えると一刻の猶予も無かったからな!そうして向かった先に待っていたのはとても広い部屋の一室で、そこには先程よりも成長したユアの姿があったんだが、そんな彼女の口から語られた真実に驚愕する事になった! なんと俺と結婚した女性は二人おり片方は既にこの世には存在しない人物であり、そしてもう片方の女性こそが本来の目的を果たす為に必要な存在だったというのだ……!?一体どういう意味なのかと思っているとそれを証明するかのごとく現れた人物がいて思わず声を上げてしまった……! 何故ならそこにいたのはかつての仲間であった聖女だったのだが、彼女もまた俺の妻の一人である事を告げてきたからだった……!しかしそれを聞いてもいまいちピンと来なかった俺は二人に説明を求めた結果返って来た言葉は驚く内容だったので詳しい話を聞くことにしたのだった……! 【プロローグ】
~主人公side(仮)~
第一部 完 ここまでお付き合いいただき誠にありがとうございましたm(_ _)m。
本日を持ちまして当作品は一度完結とさせていただきますが、続きを書くかどうかなどは今のところ未定となっております。理由としては、この作品を執筆し始めた当初は連載するつもりなど一切無かったからです。ただ単に趣味の一環として思い付いた内容を形にしていただけでしたので、正直なところ読者の反応については完全に予想外でしたw(ちなみに作者はSNSをやっていないので感想などを貰ったことは一度も無いです……泣)
それでは改めまして、長い間の応援本当にありがとうございましたm(_ _)m!! これからも何かしら作品を書いた時にはどうぞ宜しくお願い致します^-^ノシ ------
※この物語の続きは現在執筆中の第二部にて公開予定となります。そちらについても興味のある方は是非読んでみてください^^;
https://ncode.syosetu.com/n5094hc/ 【本編】第1話~2日目
(修正版)
○月×日 ------
――???――
『――以上を持って、緊急会議を終了とする!』
議長である男の言葉で今回の議題が終了したことを理解した者達はそれぞれ会議室から退室していく。そして最後の一人が出ていくと同時に部屋に残った全員が溜め息を吐くと男の元に集まるとこう言ったのだ……『まさかあそこまでひどいとはな……』それに対して男は答えることなく頷くと続けてこう告げた……『これは早急に手を打たねば取り返しのつかないことになるかもしれん』それを聞いた他の者たちもまた同意する様に頷くのを見て男は続けた……。
『……やはり、例の計画を実行するしかないだろうな……』それを聞くなり周りはざわめき始めるものの男は気にすることなく更に続けるのだった……。
『これ以上時間を掛けていたらそれこそ手遅れになってしまうだろう。ならばここは一つ、強硬手段を取るべきだと思うが皆はどうだ?』そう聞かれた者達は黙ってしまった。というのもこれまで何度か同じような状況に陥ったことがあるのだがその時は上手くいったものの次も同じ様に成功する保証はないと思ったからである。その為誰も言葉を発することが出来ないまま暫く沈黙の時間が流れたが、それでも一向に返事をしない者達に対し業を煮やした男が声を荒らげて叫んだ……!!
『お前たちはこのまま諦めるつもりなのか? それとも他に何か手立てがあるとでもいうのか!?』それに対して答える者は誰もいなかった。それを見た男は大きく溜め息を吐くとこう告げた――なら仕方がない。こうなったら最後の手段として強行手段に出ることにしようじゃないか!!その言葉を聞いた全員は一瞬唖然としたもののすぐに冷静さを取り戻すと、それぞれ意見を出し始めた……! まず最初に意見を述べたのはこの中では比較的若い男で、それはさすがにまずいのではないかと男に言うのだが男はそれを無視してこう告げた――何を言われようが俺の知ったことではない。それにこれは元々我々の問題であるはずだ、部外者にあれこれ言われる筋合いは無いぞ!その言葉を聞き誰もが反論することが出来ずにいると今度は年老いた女が口を開いた……確かにそれは一理あるのぅ。そもそも儂等は元々この世界の住民ではなく、お主達が管理している世界の神が異世界転移をさせたせいでこんな目に遭っているのではないか。
それを聞いた男を含めた全員が黙ってしまう中、老人は再び口を開くとこう告げた――それにじゃ、今回のような事態になったのは元を正せばお前さん達の行いが原因なのじゃ。その自覚はあるのかね? そう言われた男たちは黙り込んでしまった……何故なら、彼らのしていることは決して褒められた行為では無いものの間違ったことではないと考えていたからだ。だがしかし老人の発言により自分達のやっている事が間違っていたのだという事実を突き付けられたことで言い返すことが出来なくなってしまった彼らは苦し紛れにこう言った……!……では、仮にそうだとしてどうするつもりだ? そんな俺たちの言葉を聞いて少し落ち着いた様子の老人は笑みを浮かべながら答えた……なに、別に今すぐどうにかしようというわけではない。要はあの世界の住民達に反省を促す必要があると考えているだけじゃよ! それを聞いて一瞬納得しかけた男だったが直ぐに考えを改めるとこう口にした……それでどうやって反省を促すというのだ?その言葉に他の者たちが賛同していると、ここで初めて口を開いた女が再び口を挟んできた。彼女の名はアミナと言って、見た目はまだ二十代後半にしか見えない容姿をした美しい女性なのだがその正体は神と呼ばれる存在であった。そしてその彼女は男たちに向けてある物を見せると言った。これを見ればわかるでしょ?それを見た一同は再び絶句した。何故なら彼女が手にしているのは小さな宝石のようなものだったからである。
そして次の瞬間信じられない言葉が告げられた……!!――それは、私たちが生み出した魔法具であり貴方達の世界にも存在しているはずの代物でもあるわ。ただしこれには魔力が存在しない為何の効力もないただの石ころと同じだけど、逆にそれ故に誰の手にも届くものであると言えるわね……だからこそ、私たちはここに集い力を合わせて同じ目的を達成することが出来るという訳なの。そこで一旦言葉を区切った後でこう告げた……ここまで言えばもう分かっているわよね?……だから私達は決めたのよ! 必ず、何としてもやり遂げるのだと!!それを聞いた面々は思わず後ずさったのだがそんな彼らに女は近付きながらこう言った……! さぁ、今こそ私たちの願いを叶える時が来たのです!!! その瞬間、男達は何も抵抗することなく黙って頷いた……
それが例えどんな内容だとしても、今の我々にとっては何よりも必要なことなのだと分かった上での行動だったからだ。こうして覚悟を決めた彼らが揃って部屋を出るのを見た残りの者たちは誰一人止めようとせずにその後ろ姿を見届けた後でそれぞれの席に座りながら心の中でこう思うのだった……あぁこれで良かったのだ、と。そして同時にこうも思ったのである……たとえ何があっても自分達だけは最後まで諦めずに戦おうと!だがこの時彼等は全く気付いていなかった……既に自分たちの身にも取り返しのつかないことが起きてしまっていたことに……! しかしその事実を知ったところで最早どうしようもなかったのだった……何故ならこれから起こる出来事は既に決定事項であり誰にも変えることは出来ないのだから……
------
○月×日 ---
――主人公(仮)宅・寝室――
『……さん…………』
「んん……?」誰かに呼ばれた気がして目を覚ました俺の視界に入って来たものは見知らぬ天井だった……。……ん? いや待ておかしいぞ。どうして俺はこんなところにいるんだ……?俺は確か昨日まで自分の家で寝ていたはずじゃなかったのか……?そう思った直後、
「――おはようございます。ご主人様」
「っ!?」
いきなり横から聞こえてきた声に驚いて慌てて振り返るとそこには見覚えのある人物が立っていた。そしてその姿を見た瞬間、俺は全てを思い出したのだった……!
――何故自分がこの場所にいるのか、今まで何をしていたのか、そして、目の前にいる女性が誰なのかを…………!!
「……ミライ……なのか?」恐る恐る声を掛けると女性は笑みを浮かべて頷くと俺の質問に答えてくれた。
『はい、そうですよ! 私はあなたの妻の一人であるユアですよ!』その言葉に改めて目の前の女性が本物だと確信した俺だったが……その時になってようやく気が付いた。
「……いやちょっと待て、なんで俺の服はこんなに乱れているんだ?」ふと気になって尋ねると彼女は何故か顔を赤くして下を向いたが、それでも小さな声で答えてくれたんだ……。
『……それはですね……』その後の言葉を聞いた俺は思わず息を飲んだ……!まさか、俺が寝ている間に彼女に何かしてしまったというのか……!?そう思って焦っていると突然部屋のドアが開いて一人の男が現れた。『おう起きたみたいだな! おはようさん!』そいつは俺にそう声を掛けた後で続けてこう言った。『早速で悪いんだが朝飯の準備はもう出来ているから早く起きて来いよ!』そして男はそのまま部屋から出て行った。……っておい、ちょっと待てよ!!あいつの名前を聞いてなかった気がするんだが……そう思いつつもとりあえず着替えを終わらせて朝食を食べることにした俺は部屋を出て階段を降りていった……するとそこに広がっていたのは見慣れた光景だったのだが一つだけ違う点があった。それは普段であればテーブルなどが置かれていないスペースが料理で埋め尽くされていたことだった……
---数分後---
それから全員が揃うのを待ってから食事を始めたのだが、その間ずっと無言の状態が続いた。それもそのはずだろう、何せここにいる全員がお互いに初対面なのだ……当然緊張するのは仕方の無いことだろうと思う。
しかしこのままではいけないと考えた俺は何とかして会話の糸口を探そうとしていたところ……ついに相手側から話しかけてきたのだ! しかもその内容というのが……どうやら俺の自己紹介を聞きたいということだったらしい。その為俺から先に軽く自分のことを話すことになったんだが……まぁその話については割愛しておこう……というのも正直俺自身あまり覚えていない部分が多くてよく覚えてないというか、むしろ最初から無かったんじゃないかってぐらいに記憶が欠落してるからな。
だからここから先は聞いた話をまとめた結果こうなったということを予め言っておこうかと思うんだが……そもそも俺たちは、俺たちが住んでいる世界とは別の世界に暮らしていた。
そこは科学ではなく魔法で発展してきた世界らしく、人々の暮らしも地球にいた頃と比べて格段に良いものだったらしいのだが、その一方で自然は殆ど存在しないため人工的に作り上げたものが主だったらしい。
しかし、そんな世界にも唯一自然の景色が存在する場所が存在した……その場所こそが俺達がいた村だったんだが、実はこの場所には元々一つの集落しか存在していなかったそうなんだ。つまり、この村の出身でなければまず辿り着くことすら不可能な秘境の地……ということらしかった。
――ここまで聞いて何となく予想が付いただろうが、そう、その村の出身者こそが俺たちの親や祖父母に当たる人達ということになる……ただ、残念なことに俺たちが生まれる頃には既に両親は病気で他界してしまい、残った祖父母も歳を取り過ぎてしまったことで死んでしまった為に今となっては確認しようがない状態だった。……だがここで問題となるのはその祖父母が一体何者だったのかということだ。何故なら、当時生きていた村人達の中にそれらしき人物の情報は無かったからである……しかしそんな中、たった一人だけ例外がいることが判明したのだ。それが先程名前が出てきたユアという名の少女だった。彼女曰く、両親が亡くなった後は祖父と共にこの森の奥で生活しながらひっそりと暮らしていたらしい……しかしそのことは一部の人間しか知らない秘密であったらしく、その理由というのは単純に言えば彼女がハーフエルフであるという点に尽きるだろう。要するに彼女は人よりも長く生きられる代わりに寿命が他種族に比べて極端に短くなるという特徴を持って生まれた存在だったからこそ、祖父の死をきっかけに1人で生きる道を選んだのだろう。
――だがその決断を、俺たち家族はずっと後悔する羽目になる……何故なら、俺たちと再会した彼女の体は見る影もなく衰弱しきっていたからだ。そしてそんな彼女の体にはとある変化が起こっていた。
そう、彼女は既に子供を産んでいたんだ……
それを聞いた瞬間俺と親父は驚いたよ。なんせそんな話は全く聞かされていなかったからな。でも同時に納得もした。なぜなら彼女には身内と呼べる存在がもう他に居なかったから、それを考えれば子供が居てもおかしくはないだろうとな。
しかし問題はこの後に起きた。
子供を産む際に命を落としかけた彼女は無事に出産を済ませた後で力尽きてしまい、結局その後は意識が戻ることはなくそのまま息を引き取ってしまったんだよ……。だから俺たちにとってその子供は最初で最後の家族になってしまったという訳だ。もちろん当時はとても辛かったさ……だってそうだろう?せっかく再会出来たというのにもう二度と話すことも触れることも出来なくなってしまったんだからな……!だけどそれと同時に、彼女との最後の会話をした時のことを思い出せばどうしてもやりきれなくなる思いが込み上げてきたんだ。そして考えた末に俺達は決めた。もう2度とあんな悲しい出来事を繰り返してはいけないのだと……。
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「それでまずはどうするべきだと考える……?」一通り話を聞いた後、最初に口火を切ったのは俺の父であるケンゴであった。
それに対して答えたのは彼の妹にあたる女性だ……ちなみにこの人の名はカホという名前なのだが、普段は兄と同様に兄貴と呼んでいる為本名で呼ばれることは珍しい方なのである。だがこの時の俺はそのことを全く気にしなかったばかりかむしろ新鮮味を感じてもいた……何故なら当時の俺にとって兄の名を呼びながら慕う妹の存在は羨ましく思える程憧れの存在だったからだった――
それはさておき、その発言に対して答えたカホの発言は衝撃的な内容だった……!なんとあの世界で死んだはずの彼女はある日突然目覚めたのだそうだ……!!
『目が覚めた時に一番最初に目にしたのは真っ白な天井でした』そこまで聞いた時点で嫌な予感がしていたが、それでも話は続く……『次に聞こえてきた声の正体こそ私がこの世界で目を覚ましてから最初に耳にした言葉であり、そして同時に生涯忘れることのない記憶となって脳裏に刻まれることになりました……それがご主人様のお母さんでもあるユナさんとの出会いです!』
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