9日目 「ペスト」 まとめ
「ペスト」は1940年代のフランス植民地、オランの町で起きた(架空の)ペストの事件を描いた作品。4月から兆候を見せたペストは、市の門を閉鎖して2月に開放するまで猛威を振るう。
医師のリューは懸命にペストの治療に取り組むが、その中で多くの人とともに奮闘する。自分からボランティアで保健隊を結成しようと言ってきてくれたタルー、役所の仕事があっても保健隊にも参加してくれたグラン、町から脱出しようとしていたが保健隊に参加した新聞記者のランベール、町の人に説教をするだけでなく保健隊にも参加したパヌルー神父、息子を亡くして自らも隔離された後、隔離収容所のボランティアを申し出たオトン判事。そして、自殺未遂をしたあとペストの中で生き生きとしはじめたコタール……。
リューはともに奮闘した人たちの多くが亡くなったことにも衝撃を受け、彼らの証言や手記を集め、ペストの最中に何が起きたのかを記録を書き起こす――といった内容。もちろんこれは最後まで読んで分かる。
これだけ意見の違う人たちをどうして書き起こしたのかというと、やっぱりリューさんにとってタルーやグランたちは、ともにペストの治療や単調な生活に抵抗した人たちだったからだ。
この書き方が実にうまい。
神視点ではなくて、実はリューさんが書き手だったのは、多くの市民が忘れて元の生活に戻ろうとするのに対して、一緒に奮闘した人たちがどんどん亡くなっていくリューさんだから、忘れずに記憶しておこうとしたんだと思う。
このメンバーで生き残ったグラン。彼は恋人のために伝記を書いていて、ペストの中でもそれを拠り所にしていた。でも、最後にそれを焼き捨ててくれっていう。それは多分、記憶するというか、それを放棄する、あきらめるということなんだと思う。もちろん、彼はもう一度書き直しますよ、って元気になるんだけど……。
タルーは手記を残していた。読み終えると、この遺品の手記を使ってこの本を書いたことが分かる。リューさんにとって、この記憶を残さないといけないと思ったんだろう。
もう一つ、リューさんが書いたんだな、という目で見ると、やっぱりああ、これは書いてよかっただろうな、と思うシーンがある。
第Ⅱ部でランベールが何日も待たされるシーンだ。タルーの手記やリューさんの想像で埋めるわけにはいかない。ランベールは生きているので、ランベールから聞き取って書き起こしたに違いないのだ。
そうなると、ランベールにとっても、つまり生きている人たちにとってもこの苦しみはそれっきりにはならない。あのときどんなことが起きて、何を考えていたのか、きっとリューに話したに違いない。
『ペスト』には、それ自体にこういう力がある。フィクションであるが、そのフィクションの中でもそれっきりにならない小説だったのだ。
さて、俺なりに『ペスト』を読んだまとめを書いた。
これだけまとめれば、高校時代の俺も簡単に読書感想文を書けるだろう。
ただし、書いていて思ったのだが、これだけ読んで書いてを繰り返すと死ぬほど疲れた。夏休みでなければ、こんなに読めなかったぞ。
次回も何か読もうと思っていたが、真剣に悩み中。
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