5日目 「ペスト」⑤ 第Ⅲ部
今、ちょうど夏休みをもらい中。
なので博物館に行ったり。
前回までを振り返ると、第Ⅱ部はオランの町が閉鎖されてからを描いたものだった。特に終盤は、新聞記者ランベールが町を脱出しようとして失敗するシーンがつらかった。
さて、第Ⅲ部は短い内容。
それに、誰かがなにかした、という部ではなく、町の雰囲気がどうだったか、こんな事件があったという記録になっている。時期的には8月まで一気に飛んでいるのでアレっ? と思ったが、これは俺が勘違いしているようだ。
俺はどうもパヌルー神父の説教を6月末だと思っていたが、これが7月末。Ⅱ部の前半部分でオランの町を閉鎖してから、実は1カ月以上経っていると考えるのが妥当だろう。
よく読んでみると、第Ⅱ部ではペスト発生から何週間で死亡者がこれだけ増えた、と記録がある(114ページ)。逆に言えば、それくらい増えていかないと、それぞれの人物たちも行動を起こそうとはしなかった。
・4/30、管理人ミシェルさん死亡→オラン閉鎖(5月半ば~後半?)→「ペスト発生から6週間で死亡者……」→「月末にパヌルー神父の説教」(7月末?)→「ランベール脱出行」(実質14日)→第Ⅲ部で「八月半ば」
こんなところだろうか。では、第Ⅲ部を読んでいこう。
<八月半ばの時期。
まず、暴力事件問題。家屋に放火や門への襲撃事件が起き、11時に消灯時刻が決定。
また、埋葬について。葬式が廃止された。これは棺自体が足りなくなったこともある。墓地に入りきらないほど、死者は増えたが、失業者もあふれたため、この仕事の担い手も途切れなかった。
ペストがもたらす秩序とは、単調さである。愛する人の親しみを失って、思い出せなくなってしまう。苦痛を感じて「そろそろ終わるだろう」と言い合った。>
(245~271ページ)
これに加えて、ペストは「他人にとってはなんの意味ももたないが、自分にとってはきわめて重要に思える、些細な事柄」「もっとも個人的な関心事を断念する」というところも入れておきたい。
この自分から「断念する」というところがポイントだ。戦争や感染症のときに、自分の趣味を存分に発達させることはできない。俺はあまり触れていなかったけども、筆者がランベールをはじめとして、「恋愛」をやけに取り上げている理由はたぶんここにある。
単純に恋愛を軸にするだけなら、悲恋ってことでいい。だけど、あまりにもペストの秩序が「単調」だから、みんな恋をあきらめきって、好きな人の顔を忘れてしまい、恋をするモード自体をやめて、ペストを受け入れるところがこわいって筆者は言いたいんだと思う。
だって「それどころじゃない」じゃないし、結局は「早く終われ」って思うしかない。
そういえばカミュは1942年から『ペスト』を書き始めた。別に趣味で書いたわけじゃないだろうが、自分の関心事を必死になって書いたんだとしたら、戦争の最中も書き続けたことになる。こりゃやっぱすげえ作家だったんだな。
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