3日目 「ペスト」③ 第Ⅱ部半分
第Ⅱ部に入ってきた。ここからまたぐっとむずかしくなる。
う~~~~ん。
なんといったらいいのか、カミュはⅠ部とⅡ部にかけて町全体の話をしようとするね。町の人全体がどう考えていたか、どう思っていたか、主語を大きくして語られるとわかりにくいったらない。
これはコロナで体験したからある程度、からだを通して分かるところがあるが、現代では通じないものもあって、悩ましいのだ。
たとえば、「市民が別離や追放が一般的感情になる」とか、「手紙も電話もできなくなった」とかいう話が出てくる。これって抽象的な言葉だし、ちょっとイメージがつかみにくいんじゃない?
ただ、どうしてこういうむずかしい話が出てくるのかと言うと、やっぱり当時戦争が身近にあったからだろう。(『ペスト』は1947年刊行)
それじゃあ、第Ⅱ部を読んでいこう。
<まず、第Ⅰ部は、総督府の命令でオラン市が閉鎖されたところまで。
第Ⅱ部の最初は閉鎖されたオラン市民の動向から始まる。出られない、電報しか出せない、手紙も出せない。
門も港も閉鎖される。しかし、死者数が増えても市民の反応がにぶい。みんないつも通りの生活を送ろうとする。
市の門が閉鎖されて二日後に、リューはコタールやグランとそれぞれ話す。「おれはペストだ」と叫んで抱き着くおっさんの話。グランは別れた奥さんの話。そして、港が閉鎖されて三週間、新聞記者のランベールが、自分はオラン市民じゃないしペストにかかってもいないから一筆書いてくれとリューに頼んでくる。もちろん断るが、それで非難される。
キリスト教会は集団祈祷週間を設ける。そこで「ペストが出現した最初の月の終わりごろ」(5月末か最初の1カ月目の終わり?=6月半ば?)、管理人さんを介抱してくれたパヌルー神父が「ペストは天罰」と説教。
神父の説教以来、町の雰囲気が変わる。リューがグランの自伝の相談を受けていると、町から脱走する人が出てきた。
ランベールは町を出ようとしたが、市役所や県庁で相談しても、書類を書かされるくらいだった。>
97~161ページ。
第Ⅱ部で町全体の話になった、という話は最初に触れた。
ただ、これはまだ「ペストの第一段階」で「まだ恵まれていた」と予告する。どれほど厳しいんだ……。
その片鱗は、医者のリューと新聞記者のランベールの会話にある。ランベールは、リューがペスト患者を診ているっていうのに、「自分は市民と関係ないし、ペストじゃない」のに「出してくれないから」という理由で、「あなたは抽象の世界にいるんです」と怒ってしまう。
これがちょっとむずかしい。
「抽象」というのは具体的なものから一般的な概念に取り出すって意味だ。ランベールが言いたいのは、「具体的なオレ個人の話を聞いてくれよ!」ということではないか。
それに対して、リューは「抽象が人殺しを始めたら、まさにこの抽象を相手にしなければならない」と言う。ペストで医者と患者が判断しないといけない世界は存在しているし、そこになんらかの一般化された対応(強制入院・隔離)はしないといけない。
ペストだけじゃなくて、実はそれへの対策も「抽象=一般化した対応」なのだ。だけどペストみたいなデカい出来事のときは、それが優先されることがある。「抽象が幸福より強力になる」。だから、それを頭に入れてたたかわないといけないんじゃないか。
なかなか不思議な言葉の使い方をしてるなあ、と思う。
なんか俺だったら、医者が患者を診てたら、具体的な話だと考えてしまう。でも、筆者はペストだけじゃなく、そのペストの対策自体も個人をつぶしちゃう。そういうことを考えていたわけだ。
なお、パヌルー神父の説教に出てきた「マチュー・マレ」はペストが流行ったときにマルセイユで記録した神父とあるが、12年間イエズス会を務めた後に、弁護士になった人物だそう。
あと、今日は山歩きの訓練にお外へ行った。
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