1日目 「ペスト」①

 とりあえず、カミュ『ペスト』を読んでいこう。


 ただ読む前になんで『ペスト』? ということを書くと、実は俺が『ペスト』をめっちゃ買って放置しているということがある。しかも複数の出版社で。新潮文庫、岩波文庫の新訳、あと光文社古典新訳文庫。(それぞれ、新潮が2004年改版、岩波が2021年版、光文社が2021年版)

 このうち新潮文庫は本の山に埋もれてどっかにいって、岩波文庫は読み切れないので友達にあげた。

 コロナで引きこもっているうちに読めばいいのに、どうも読み切れずに置いといて、また外に出て、また第何波がきて……この繰り返しだ。これが良くなかった。いま手元に残っているのは光文社のやつだ。

 それでは読んでいこう。



 まず、いきなりデフォーという人の言葉が引用されている。これは知っている。この人もまた、もっと昔に『ペスト』を書いた人だ。(本屋に行ったとき、売っていたので実は買っている。)

 舞台設定がきちんと設定されている。1940年代のフランス植民地アルジェリアの町、オランだ。ところが、ここでいきなりつまずく。筆者は「この町は特徴のない、つまらない町だ」ってずーっとディスっていく。

 これがかつての読者つまり俺の萎えポイントであったに違いない。興味を引き付けるどころか、きれいな風景を見るのだって一苦労するんだぜって、6ページにもわたってディスられていくと困るじゃないか。

 しかし、これは多分、なぜ「ペスト」という率直なタイトルをつけたのかを考えると、わかってくる。


 次からのシーンはなかなか衝撃的シーンである。

 小説で書かれた出来事をメモとして書いておこう。

 4月16日。医師のベルナール・リューが建物でネズミの死体を発見。

 翌17日、管理人(ミシェル氏)が血だらけのネズミの死骸をさらに数体発見。管理人はいたずらだと怒るが、リューは通りでさらにたくさんのネズミの死骸を見つける。リューは病気の妻を療養所に送り、午後に新聞記者・ランベールと会う。

 18日、リューは母と面会。さらにネズミの死体が増えたので、駆除課課長に連絡。その数日後にはネズミの死体が激増し、28日には一日8000体の回収を数えるようになる。

 翌日。ネズミの死体数の増加はピタッと止まるが、リューは管理人の様子がおかしいことに気づく。昼に自殺未遂騒ぎがあり、それを止めていると、管理人ミシェル氏の熱が上がり、入院させるも、翌30日に彼は亡くなった。


 わずか14日間だ。

 ネズミの死体に気づいてから人が一人亡くなるまで14日間。

 しかもここまで、まだ「ペスト」だとは本編では言われていない。しかし、読者である俺は知っている。

 後から考えれば起きるであろうこと。それへの対処ができなかった理由。それはあの最初の退屈な舞台設定が物語っている。


 ぜんぜん先を読んでないが、実はこの14日間の一区切りには、なんかまだまだ話に全然関わってこなさそうな人もいっぱい出てくる。登場人物を予告的に配置しているってわけだ。



 ……さて、ここまで、5~35ページ。

 めちゃくちゃ濃いな!? こんなに濃密ぎっしりに14日間を描いて、まだ冒頭だよ。

 しかしもう、退屈な舞台設定から後戻りできない展開に行ってしまった。

 俺もな。元の生活に戻りてーなって思うけど、多分本能的にこれは無理だなと思ってる。まあ人によってはもう戻ってるよって人もいるだろうけど。



 それにしても今日は台風なのに、わざわざお外に出ざるを得なかった。かなしい。

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