人形遊び

鈴成

人形遊び




 まず最初に燃えて灰に覆われた町を見た。次は落雷によって壊滅した町を見た。その後に急成長した樹木に住人ごと閉じ込められた村を見た。前々日には大量の水に押し流された村の残骸を見た。そして今カズラは凍りついた村の入り口に立っている。

 雪は降っていない。そもそも今は青々した草木が繁茂する生命力に満ち溢れた時期であって、防寒具が必要になるほどの気温でもなかった。狂っているのはこの村だけだ。

 カズラは足を踏み出す。凍った地面で滑らないように注意しながら。村の中央を縦断する道に沿って歩いていくことにした。鶏の羽を毟りながら凍りついている女がいる。数人の子どもが追いかけっこの途中で凍って動かないでいる。炉の火と同じく農具の修理をしている鍛冶屋もまた氷に覆われている。そして村人は例外なく身体のどこか、あるいは全てが一様に砕けていた。これが一度きりの惨状であれば、偶然と片付けることもできたかもしれないが。

 しかし奇妙だ。鼻でなく本能に訴えかけてくる強烈な死のにおいとは別に、息苦しささえ覚える圧倒的な生命の息吹をカズラは感じ取っていた。未知のものではない。むしろ少し前に僅かな時間ではあるが接近したものに近い。だからこそカズラは困惑していた。二つの意味で、多すぎるのだ。


「魔物か魔法使いの仕業だったら簡単なんだけれどね」


 グラース王国にやって来てからというもの、生きている人間をまったく見なくなってしまった。代わりにあるのは辛うじて残った生活の痕跡だけだ。運悪く天災に見舞われたというにはあまりにも不自然だった。その地に住む人々を殺し尽くしてやろうという悪意が染みついていた。そうでなければ村や町とそれ以外で破壊と平穏の境界線があそこまで明確に引かれるはずがない。


「……誰かいる」


 村の集会所としても使われていそうな開けた場所の手前でカズラは立ち止まった。凍りついた建物の陰に隠れて様子を窺う。頭巾を深く被った後ろ姿が見えた。ゆったりとした外套を羽織っていて、カズラより背丈がある。人間かどうかはまだ判断できなかった。

 謎の人物は荷馬をどこかに連れて行く途中で氷像となった男を乱暴に蹴り倒した。氷像は呆気なく地面に当たって砕けたのを更に踏みにじる。淡々と、淡々と。執拗な行為でありながら、そこに熱意は感じられなかった。これまで見てきた村人たちもああやって壊されたのだろう。

 暖かな風が吹く。緑土のにおいに混じったかすかな腐臭をカズラは嗅ぎ取った。そして時を同じくして、謎の人物が唐突に振り返った。


「魔法使いか」


 年若い男の声だった。それなりに離れているのに耳元で囁かれているように聞こえた。すでに知られているのなら隠れていても仕方がない。カズラは躊躇なく男の元へと向かっていった。男に近づけば近づくほど押し返す力が強くなる。けれどもカズラは素知らぬ顔で両手を上げて敵意のないことを伝えた。効果のほどは分からない。


「どうして僕が魔法使いだって分かったの?」


 男の真正面に立って堂々と話しかけた。男はすぐには答えない。しかし、問答無用で危害を加えられもしなかった。この村の人間ではないからだろうか。頭巾に邪魔をされて男の顔つきは判然としないが、顔の右半分に火傷痕らしきものがあるのは見える。見えない部分にも傷痕が残っているのかもしれない。


「精霊がそう言ったのだ」

「……そう。君、精霊使いなんだね」


 カズラが目を細める。予想が当たっていたことの喜びよりも警戒が勝る。

 精霊とは火や水などに宿るとされる肉体を持たない無数の生命の呼び名だ、とカズラは理解している。火や水そのものから精霊が生まれるのか、精霊の種のようなものがどこかにあってそれが火や水に宿ることで精霊となるのか、正確なことはまったく知らないのだけど。

 カズラの持つ精霊の知識といえばまず精霊は火に宿れば火の精霊、水に宿れば水の精霊と呼び方が変わること。次にそれぞれに自我があり、気まぐれに他者を助けもするし害しもするということ。そして精霊は気に入った人間にはその姿を見せて力を貸すこともあり、精霊の力を振るうことを許された者を精霊使いと呼ぶこと。細々したことを除けばおおよそこの程度だった。

 精霊使いは魔法使いよりもずっと希少な存在だ。だから情報も少ない。それなりに長く旅をしているカズラであっても精霊使いと話すのはこれで三度目だった。一度目は火の精霊使いの男、二度目は水の精霊使いの人魚、そして三度目は……。

 カズラは凍りついた村を一瞥した。


「君は何の精霊と仲がいいの? 君の場合は氷の精霊だけじゃないよね」

「…………」

「ここに来るまでにいくつも誰かに破壊された村や町を見てきたよ。火や、雷や、植物や、水で、そこに住む人たちは殺されていた。最初は天災に遭ったんだろうと思ったよ。でも、似たようなことが何度も続いたからね。強力な魔物か魔法使いが意図的に人々を殺して回っているんだろうと考えてたんだけど」

「…………」


 男が黙ったままなのをいいことにカズラは喋り続けた。いつ殺されてもおかしくない状況だからそうなる前に言いたいことは言っておこうという心持ちで。


「まさか精霊使いとはね。火に雷に植物に水に氷に……君は少なくとも五種類の精霊を使えるわけだ。そんなの初めてだよ。それに、精霊なんてまったく見えない僕でも村中に精霊が溢れているのが分かる。精霊の放つ生命力っていうの? 圧迫感がすごくてね。君に近づくほどにそれが増していくんだ。今、君の周りにはどれだけの精霊が溢れているのかな。ただでさえ選り好みの激しい精霊にどうしたらそこまで好かれるんだい?」


 と訊ねてからとうとう言葉を切った。息を吸うが、どうにもうまく胸まで入っていかない。男に殺される前に息苦しさで倒れそうだ。クルックスの海で溺れたことを思い出す。


「…………知らぬ。私にとって、奴らの存在はあって当たり前のものだった」


 ようやく男が口を開いた。しかもカズラの質問に答えてくれている。思ったよりは話が通じるのかもしれない。より恐ろしさが増すというものだ。


「まあ、精霊使いっていうのは往々にしてそういうものだと言うけどさ。ついでにもう一つ訊いていい?」

「…………」

「どうして彼らを殺したの?」


 カズラが重ねて問うと、僅かな間をあけて男の背後に散らばった氷像が炎に包まれた。かと思えば男の足元から氷が張っていってどんどんカズラに近づいていく。背後では何かが地面の氷を割った音がした。視界の端に場違いな新緑が映っている。

 相も変わらず姿そのものは見えないけれど精霊が激しく反応しているのは間違いないだろう。村人たちを殺した理由が男と精霊どちらにとって重要だったのだろうか。

 カズラは背中や腕から蔓を伸ばして形だけでも身を守る態勢をとった。自分の魔法で男をどうにかできるとは思っていない。カズラの足先を呑み込む手前で氷は止まった。


「……かつて、私はこの国の王子だった」

「へえ?」


 唐突に昔語りが始まった。しかも突飛な出だしだ。物語なら定番かもしれない。


「そして、私には政にも魔法にも長けた優秀な弟がいた。対して私は秀でたところの何もない凡夫であった」

「凡夫? 君には精霊がいたんじゃないのか?」


 男が的外れなことを言うものだからカズラはついつい口を挟んでしまった。しかし男は冷静に首を横に振る。


「あれらは私にしか見えぬものだった。私に纏わりつき、私以外の者に災いをもたらすものだった。私の意に沿うことなど一度もなかった」

「それも珍しくはない……らしいけどね」

「皆、得体のしれぬ力を振りまく私を災いの子と恐れた。私自身も奴らが恐ろしかった。精霊の存在を知ったところで意味がない。私には奴らが制御できなかった。消えろと叫べば周囲を破壊して応えるものだった。私は自室にこもって他者との接触を避け続けたが、それでも皆は私を恐れ続けた」


 男は淡々と話し続ける。再び侵食し始めた氷はカズラの足先を覆い、背中をしなやかな枝が撫でている。カズラは身動ぎしないまま男の話に耳を傾けた。


「父上は王位を弟に譲った。私には何の異議もなかった。このまま何事もなく静かに朽ちていけたらと思っていた。……思っていたのだ!」


 男の語気が徐々に荒くなっていく。頭巾越しに右手で頭を強く掻きむしる。頭皮が抉れてしまうのではと思うほどに。他人のことを心配している場合ではないか。カズラはカズラで膝から下の感覚がまったくなくなっている。冷たさも感じられない。それでも立てているから問題はないけれど。ただでさえ呼吸がしづらいのに、枝で首を緩く締め上げてくるのは止めてほしい。魔法の蔓を枝と首の間に滑らせて隙間を作ってみるが効果は薄かった。


「王となった弟は私を国外に追放するよう命じた。それならいい。それだけならば許せた。王宮魔法使いに連れられ城を出ていくときには孤独に生きてゆけることに安堵すら覚えていた。だが! 弟は! あいつは!」


 叫んだ男が一歩踏み出してカズラを睨みつけた。すると頭巾がずり落ちる。現れた男の顔面はやはり右半分が火傷痕に覆われ、右目は潰れていた。火傷痕以外にも裂傷や刺創の痕が残り、不自然に膨張している箇所もある。左の白く濁った目はカズラを見ているようで見ていなかった。


「私の死を望んでいたのだ! 国境の近くで矢を射られ、魔法の火が私を焼いた! そして精霊が襲撃者どもを壊した! あれほど胸のすく光景を見たのは初めてだ! 自分ではどうにもならないことに心を痛めて、我慢をして。何故と思い続けるのにはもう飽きた。何かをしてもしなくても災いの子として恐れられるのならば私はそのように振る舞おう。弟に、そして王の民に災いをもたらそう。そして最後に玉座を王の血で染めてやろうではないか!」


 男は歯をむき出しにして哄笑した。ごぽごぽと粘着質な水音が混じっている。腐った肉のにおいがつんとカズラの鼻をついた。男に響応するようにそこら中の空気がざわめく。精霊たちも随分と盛り上がっているらしい。ついていけていないのはカズラだけだ。

 肩から上はまだ自由に動かせる。カズラは唇をちらりと舐めた。


「それは君の意志? それとも精霊なりの愛憐ってやつ? どちらにせよ、好かれすぎるのも考えものだな」


 男はただ笑い続けている。カズラの声は届かなかったようだ。そもそも聞くつもりがなかったのかもしれない。枝がカズラの首をきつく締め上げる。カズラは顔をしかめこそしたが、先ほどのように魔法の蔓で抵抗することはなかった。頭が痛む。黒い点がぽつぽつと浮かび、その一つ一つが大きくなって視界を塗り潰していく。氷がカズラの全身を覆うのと枝がカズラの首を締め潰すのはほとんど同時だった。


「魔法使いよ。王の民でないとしても、私を見たのであれば死なねばならぬ」


 村の数ある氷像の一つになったカズラへ男が歩み寄る。一歩一歩がいやに重たげで歩幅の揃わない歩き方だった。それでも着実にカズラの前に達した男は右手を固く握って拳を作る。そして氷像を殴った。力任せに何度も何度も、拳から血が流れても骨が折れても気にせずに男は氷像を殴り続けた。村人の氷像を蹴り倒していたときと同じだった。行い自体は荒々しいのに受ける印象は事務的だ。

 氷像はなかなか倒れなかったが、とうとう幾筋ものひびが入る。そのときだった。氷の層の向こう側でカズラの目がぎょろりと動いた。氷像を殴るのに夢中だった男は反応が僅かに遅れる。その隙に何重にも編まれて太さの増した魔法の蔓がひびの入った部分を突き破り、真っ直ぐに男の胸を貫いた。


「なぜ生きている」


 それはお互い様だろ、と氷のなかから言い返す。声は出せないので唇を動かしているだけだが。けれども男にカズラとのお喋りを楽しむつもりは微塵もないらしい。

 胸に蔓が突き刺さっているのに男は顔色一つ変えず魔法の蔓に右手で触れる。すると蔓はあっという間に焼き切れてしまった。蔓のあけた穴から血が滴ってくることはない。いくらなんでも切断されるのが早すぎる。身体が自由に動かせるのであればカズラは大げさに肩を竦めてみせただろう。それに……。

 カズラは蔓で相手の生命力を吸い取って自分のものにすることができる。普通なら数秒もあれば吸われた相手は立っていられなくなるはずなのだが、先の通り男は何ら支障なく動いている。魔法は正常に機能していた。カズラが吸ったそばから精霊が男に生命力を与えるせいでまるで効果がないのだ。やはり男とは相性が悪い。カズラは蔓を引っ込めて無防備な姿を男に晒した。目的は達成していたから抵抗はしなかった。

 一応反撃されたにも関わらず男がカズラの動向を気に留める様子はない。胸に穴があいているとは思えない悠然さをもって血に汚れた指で氷をなぞる。するとちょうどカズラの首の上に赤い線が引かれた。男が一歩後ろに下がる。何をするつもりだ、と脳内で考える時間すらカズラには与えられなかった。

 ヒュッと音がして間もなく風の刃が氷ごとカズラの首を両断した。氷漬けの頭が地面に落下する。男はまずそれを丹念に踏み砕いてから身体を次々に切断していった。

 しばらく経つと男の周囲には氷の破片が散乱していた。けれども村人たちと違ってその破片からは血液が滲み出ており、凍結した地面へ徐々に広がっていく。男は自らの作り出した惨状を一切省みることなく、緩急の大きな動きでぐりんと西を向いた。


「帰る……私は帰るのだ……」


 男はうわ言のように繰り返し呟きながら氷の地面を踏みしめる。一歩二歩三歩と途切れることなく進んでいく。ひどくぎこちない歩き方で、しかし止まることはない。男が去り、氷に閉ざされた村には死者だけが残された――かのように思われた。

 カタカタと四方に飛び散った氷の破片が震えている。暫時の振動が収まったと同時に破片から細い蔓が何本も何十本も生えてきた。伸びた蔓同士が絡まって縛り合って破片と破片を漏れなく繋いでいく。それを数え切れないほど繰り返すと最後には横倒しの氷像が出来上がっていた。それから間もなく氷像の全体に無数のひびが広がる。内部から伸びた蔓が最後のひと押しをすれば綺麗に氷は砕けてなくなった。


「やっと戻れた……」


 蔓を引っ込め、カズラは寝転んだまま両手と両足を広げて大きく伸びをする。身体には怪我どころか傷痕一つない。束の間青空を眺めてから億劫そうに上体を起こした。


「吸ったのと同じくらい死んでしまったな」


 などとぼやきながら首と肩をぐるぐる回す。別に凝っているわけでもないのでどちらも滑らかに動かせた。続けて両手を閉じたり開いたり両足を揺らしてみたりして異常がないかを確認する。おかしなところは見当たらなかった。あそこまで散り散りにされてから生き返るのは久しぶりだったけれども、間違わずに済んだようで何よりだ。

 魔法の蔓で吸った生命はカズラのうちに溜め込まれ、カズラの命が失われたときに身代わりとして消費される。溜め込んだ生命が尽きない限りカズラは死なない。今回のように切り刻まれたとしても蔓が損傷箇所を修復する。カズラの意志が伴っていればより精緻に、伴っていなければやや大まかに。

 そして、大昔に面と向かっておぞましいとまで言われたカズラの蔓の魔法には他にもいくつか効果があった。

 

「彼……いや、アレは……どこまで持つだろうな」


 男の去っていった方向に顔を向ける。もちろん男の姿は見えない。村に渦巻いていた濃密な生命の息吹は男と共に消え去ってただ希薄な死の気配だけが漂っていた。腐臭もすっかり霧散している。

 カズラはゆっくりと立ち上がった。


「……あまり関係ないか。途中でどうなろうと精霊はアレを玉座まで連れて行くだろう。帰るって言ってたからなあ」


 なんて、私は帰るのだというあの言葉が男のものかさえ定かではないけれど。

 蔓で男の胸を貫いたときにカズラは魔法で男の思考や過去を読み取ろうとした。魔物にも通用する魔法が、しかし男には無意味だった。

 なぜなら読み取るべき思考も過去もまったく存在していなかったから。言葉を発し狂ったように笑い人を殺して回っていてもアレは空っぽだ。精霊によってから繰られる中身のない身体はすでに腐臭を放っていていつ崩壊してもおかしくなかった。

 偶然ではあるが、カズラは男と同じ道筋で開けた場所から離れて村の外れへと向かっていく。


「自我があると思い込んでいるようだけれど、アレは精霊がかつての彼を模して動かしているだけの死体に過ぎない」


 精霊にそんなことができるだなんて聞いたこともないが。ともかくカズラはそう結論を出した。同意があったのかは別にして、精霊と彼が深く繋がって同調していたのだとしたらアレが話した過去や思いは大方事実ではあるのだろう。恐らく死に際に彼が王や民に憎悪を抱いたことも押された烙印通りに災いの子となってしまったことも。

 けれど彼は死んだ。本来はそこで幕引きとなっていたのに精霊が干渉したせいでややこしくなったのだ。精霊の動機は何だろう。彼の無念を晴らしたかったのか。彼が失われたことを認めたくなかったのか。単にお気に入りの人間を奪われた八つ当たりか。人間には思いも寄らない理由かもしれない。

 そもそも精霊が彼に纏わりつかなかればこんな顛末にはならなかっただろうに。あるいは弟が愚策に走らなければ。彼に死を自覚させないように殺していれば。カズラは部外者らしく無責任に批判する。

 それから、誰にでもなく告白した。 


「僕とアレってそんなに違わないかもな」


 人とは違う理で生きる精霊ですら死者を蘇らせることはできない。しかしカズラは全身をバラバラにされても魔法で元に戻る。本当の意味で、他の皆と同じような死を迎えることはないと思っていた。それを惜しみつつも驕っていた。自分の身体すらとうに失くした分際で。

 だが、カズラはアレを見てしまった。出会ってしまった。カズラが忘れようとしていたこと、考えないようにしていたことを否が応でも思い出させる。


「僕だって良く分からない魔法に動かされてる死体かもしれない。……なんてね」


 そんなつまらないことを言ってカズラはから笑いした。境目に立ち、ためらわずに凍った地面から土と石ころの混じった地面へ移動する。そして一度も振り返ることなく村を離れた。緑豊かな風景には目もくれずにひたすら進んだ。


「……海が見たいな」 


 潮風に吹かれながら浜辺を呑気にそぞろ歩く自分を想像したかった。それなのに頭の中は血まみれの玉座に腰掛ける男の姿に占拠されていた。

 弟から剥ぎ取った王冠を被り生者のいない空間にただひとり君臨する。ついに帰還を果たした男を精霊が祝福して、そのあとはどうなるのだろう? 精霊は男を手放すのだろうか? それとも――。


「早く死ねたらいいね」


 脳内の幻に向かって真摯に語りかけたところで無意味だ。まして、幻であったところで濁った隻眼がカズラを捉えることはないのだから。






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