第3話

 思兼神オモイカネノカミ天岩戸あまのいわとの前で腕を組んでいた。岩戸の横には天手力雄神アメノタヂカラオが控えている。


 天安河原あまのやすかわらでは、八百万の神々と鈴木が固唾を呑んでその様子を見守っている。


 天手力雄神アメノタヂカラオに目配せし、思兼神オモイカネノカミはカウントダウンを始めた。


「5、4、3、2、1…干渉!!」


 思兼神オモイカネノカミの渾身の号令の直後。天岩戸あまのいわとからこの世のものとは思えない恐ろしい叫び声が轟いた。そして、次の瞬間、今までビクともしなかった岩戸が勢いよく開き、中から目を血走らせた天照大神アマテラスオオミカミが飛び出してきたのである。


電波神デンパノカミ!! ネットが切れたぁっ!! 早く復旧しろぉっ!!!」


 わめき散らす天照大神アマテラスオオミカミ思兼神オモイカネノカミはここぞとばかりに腕を掴んだ。


「確保ーーーっ!!」


 と同時に天手力雄神アメノタヂカラオが岩戸を「ふんっ」と投げ飛ばす。これでもう天岩戸あまのいわとにはこもれない。


 ―こうして再び世界に光が戻ってきた―



 ◇◇◇


 この天岩戸神話「2」が後世に語られることは無かった。なぜなら「1」に比べてあまりにもお粗末だからだ。きっかけも過程もオチも、何もかもお粗末。神話界から消し去られた黒歴史。


 そうなるはずだったのだが…。


 しばらくしてあまりにもひどすぎて逆にマニアがでてくるほどのクソ神話、天岩戸神話「3」が勃発し、とばっちりで天岩戸神話「2」も掘り起こされることになろうとは、思兼神オモイカネノカミはもちろん高天原たかまのはらに住む神々の誰も、このときはまだ知る由もなかった。

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天岩戸神話2 イツミキトテカ @itsumiki

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