第2話
「こ、ここは…??」
岩戸の前に突然一人の人間が現れた。彼の名前は鈴木。30才独身。彼女無し、職無し、焦り無し。筋金入りの引きこもりである。
彼はついさっきまで、自分の部屋で日課のゴロゴロをしていた。なので、突然見知らぬ場所に放り出されて困惑しきっている。
「ここは
鈴木は目をぱちくりさせた。
「無理です」
知恵の神である
「すぐ無理とか言わない! いいからやってみるっ!」
鈴木はそれでも動かない。伊達に長年引きこもっていない。
「他人に頼む前に自分でやるだけやってみたらどうですか!」
「やったわ! めっちゃやったわ!」
それから、
まずは、一回目の引きこもり事件について説明しなければならない。
怒って、そして、
このとき、
(「なんで隠れる?」)
怒って隠れるってどういうこと?
それで何か解決するの?しないよね?
じゃあなんで?
どうして?
なぜに?
Why??
そう思っていたが八百万の神々の前で言う勇気はなかった。だから黙って対処した。
まずは岩戸の前に鶏を放ってみた。鶏が鳴きに鳴いて
そこで今度は
「あなたより立派な神様が来てくださったんです。ほら、この人ですよ」
そう言って
―こうして世界に光が戻ってきた―
これが後世まで伝承される天岩戸神話「1」の全容である。
そしてここからは、今起きている二回目の引きこもり事件についてだ。
今回の引きこもりのきっかけは……正直分からない。気がついたらいつの間にか隠れていた。ちなみに、
とりあえず一回目と同じように鶏と宴を試してみた。しかし、どちらも効果は無かった。さすがは
それでもなお、八百万の神々から注がれる「キミならできるよね」という期待の眼差しに、
(「考えるのいっつもワシやんけ! 少しは自分らで考えろや!」)
こうなってくると、怒りの矛先が
(「元はといえばあいつが隠れるのが悪いんじゃ! 偉い神の自覚ないんか?! しかも二回目て…!!」)
こうして、
「だからって、呼び出すの俺じゃないでしょう」
呆れ顔の鈴木に、
「驕るなよ鈴木。お前の前にもたくさん呼んだ。お前は最後っ屁みたいなもんだ」
シルクド○レイユ、劇団○季、○塚に、リ○のカーニバルなどなど…。エンターテインメント全部載せ。八百万の神々は満面の笑み。鳴り止まない指笛。抑えられないスタンディングオベーション。あの瞬間、世界最高峰のエンタメが確かにそこにはあった。
それなのにだ。肝心の
だから鈴木を呼び出した。
「そうは言っても、引きこもる理由なんて人それぞれですからね」
「なんでも良いから」
「そもそも、本当に引きこもってるんですかね?」
「どういう意味だ?」
鈴木は少し迷ったあと、遠慮がちに言った。
「だって、気配も感じられないんですよね。てことは、もしかして、中で倒れてたりするんじゃないかなって…」
「その発想は無かった! だとすれば、まずいぞ…誰か、救急車を!」
鈴木は無意識に自分のスマホを取り出した。
「俺、電話します…って繋がるわけないか…って、えっ?!」
鈴木のスマホはビンビンにアンテナが立っていた。しかも隣には八百万
驚く鈴木を
「人の世界ではまだ5Gだったな。こちらではすでに八百万
「ネット繋がるんですか」
「人の世界でも繋がるんだから当たり前だろう」
「それなら…もしかしたら…!」
鈴木は
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