第4話 心春の夢
そんなある日のこと、幼馴染の心春(こはる)からLINEに電話がかかってきた。
「もしもし葵、今大丈夫?」
「うん、大丈夫だよ。心春どうしたの?」
「聞いてよ。もうやんなっちゃううちの親」
「どうしたの?」
「毎日毎日喧嘩ばかり。もううんざりだよ。だから家出してきた」
「はあ?」
ピンポーン!
葵は携帯を持ったまま玄関のドアをあけた。
すると、心春がいた。
「心春?」
「葵、泊めてー」
「はあ?」
「葵!誰か来たの?」
葵の母が、玄関にでてきた。
「うん、心春が泊まりに来たって」
「心春ちゃん、いらっしゃい」
「でも、家出してきたみたい」
「それは困ったわね。心春ちゃんの家にはお母さんが電話しておくから葵は、ちゃんと話を聞いてあげなさい」
「うん、わかった」
葵の家は父、母の3人家族です。
心春の家族とは昔からの付き合いでお互いの家に行き来する中である。
心春が泊まることなど、大歓迎だ。
でも今回は家出だ。
理由をちゃんと聞くことになった。
「心春、ちゃんと説明して」
「わかった。最近わたしの進路のことでずっと話してるんだけどなかなか認めてもらえないんだよ」
「進路って?」
「わたし大学は4年生大学じゃなくて、専門学校に行きたくてふたりに話たんだ」
「専門学校って?」
「美容師になりたくって」
「そうなんだー。いいね」
「でも、両親は反対で」
「なんで反対なの?」
「わからない。でも頭でっかちで嫌になっちゃう。ごめん、葵あたま痛いから寝る」
「心春……」
心春は寝てしまった。
葵はリッキーに相談した。
「リッキー、心春が心配なんだけど心春の夢の中にいけないかな~。家出してくるなんて相当じゃない? 悪魂がいないか心配だよ」
「う~ん、わかった。いってみよう」
「ありがとう、リッキー」
葵はさっそく眠りについた。
「葵、こっち」
「これが今、心春がみている夢の中?」
「そうだよ」
心春の夢は綺麗だった。
悪魂が入り込む余地はないくらい希望に満ちている夢だった。
それは、お父さんとお母さんが見守るなか心春が女の人の髪を切っている夢でした。
心春は夢の中で未来を見ているようだ。
「リッキー、心春は大丈夫そうだね」
「夢に入りこむ必要はなかったみたいだね」
「帰ろう」
葵とリッキーは心春の夢から戻ってきた。
葵は寝ている心春をみて思った。
――人騒がせだな~でも幸せそうでよかった。明日にでももう一度両親と話会うように言おう。
次の日、葵は心春にもう一度両親と話し合うようにいった。
「葵、一緒にきてくれない?」
「えっ、わたしも行くの?」
「お願い」
「わかったよー」
「ありがとう」
葵はしかたなくついていった。
心春の家に着くと、さっそく心春の両親と話し合った。
「葵ちゃん、ごめんね」
「いえ、べつに大丈夫です」
「まったく、葵ちゃんに迷惑かけて」
「はあ!だってお母さんたちがわかってくれないんじゃん」
心春は喧嘩腰だ。
葵は聞いてみた。
「わたし心春の美容師の夢、素敵だと思うんだけどなんで反対なんですか?」
「だって、それは……」
「専門学校に行くとなると一人暮らしが心配だし一緒にいられなくなって寂しいからだよ」
心春は予想外の返答に驚いた。
「何それ!そんなことで反対してたの?」
「そんなことって、大事なことだよ。お父さんもお母さんも寂しいよ」
「わたしは一人暮らしなんてしないよ。ここから通えるところに行くよ。あたしも一人暮らしは無理」
「えっ、そうなの?」
どうやら、話はうまくまとまったようだ。
「よかったね、心春」
「うん、ありがとう。葵のおかげだよ」
「葵ちゃん、ありがとうね。夕飯食べて行って」
「うん、ありがとうございます。食べますフフッ」
葵は夕飯をいただいて帰っていった。
「リッキー、なんか夢って素敵だね。希望に満ちてる夢ってすごい。あたしもなにか夢を持ちたいって思ったよ」
「葵も夢の中で戦っている姿、素敵だと思うよ」
「そっか、とりあえず今は悪魂退治を頑張るか」
「そうだよ。それがぼくたち妖精のため、きみたち人間のためなんだから」
「また、リッキーそんなこといって。大げさなんだから」
「まあ、困っている人を助けよう」
「そうだね」
「あ~今日も疲れた。リッキーおやすみ」
「おやすみ葵」
ふたりは気分よく眠った。
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