第3話 勘違い
そんなある日、わたしは友達といつものようにカフェに行った。
このカフェは昔からよく待ち合わせや遊びに行く前に立ち寄っているカフェです。
今日もこのカフェに友達と一緒にいって、たわいもない話をしていた。
ふと、わたしは店長さんがいつもより元気がないように感じたので話かけようか迷っていた時、リッキーが話してきた。
――「迷うくらいなら、話かけてみれば?」――
「そうだね。勇気をだして聞いてみる」
一緒にいた友達が不思議そうにいってきた。
「急になに? 勇気を出して何を聞くの? だれに?」
「あっ、なんでもない。独り言」
「てか、あたしの話聞いてる?」
「ご、ごめん。ちょっと待ってて」
わたしは友達を残して店長さんのところにいって話かけた。
「店長さん、どうしたんですか? なにかあったんですか?」
「えっ、なんで?」
「なんか店長さん、元気がないみたいだから」
「そうか、葵ちゃんにはばれちゃうんだね。ごめんね、心配かけちゃって」
「旦那さんのことですか?」
「なんでそこまでわかるの?」
「だって、少し前は一緒にお店にいたのに最近お店で見かけないから」
「実は、あの人浮気をしてるんじゃないかと思ってて」
「えっ、浮気?」
「最近、午後になると嬉しそうにどこかにいっちゃって……。きっと浮気してるんだよ」
「確認しないんですか?」
「怖くてできないよ……」
「じゃあ、わたしが今度のお休みの日に旦那さんを尾行して確認してきます」
「えっ……、真実を知るのは怖いけどやってくれる?」
「はい、大丈夫です。やってみます」
わたしは、店長さんがかわいそうでつい言ってしまった。
その日の夜、寝ているわたしをリッキーが起こしてきた。
「葵、起きて。助けに行くよ」
わたしは、寝ぼけたままこたえる。
「うん、わかった」
そして、誰かの夢の中に行く。
リッキーに呼ばれるままついていくと、やはりまた悪魂がいた。
「なんか、今回まだ小さいね。あれ? この間と色がちがう? 赤い塊にみえるけど」
「そうだよ。ストレスによって塊の色が違うんだ。それに小さいからって油断しないで。強さは見た目の大きさだけじゃないんだ」
「そうなんだ、わかった。じゃあいってくる」
「うん、頑張って」
わたしは赤の悪魂に近づいた。
中心を見てみるとカフェの店長さんだった。
――えっ、うそでしょ。
悪魂をまとった店長さんが、旦那さんを踏みつぶそうとして追いかけている。
リッキーが近づいてきた。
「あの、店長さんだよね。こんなに恨んでいたんだね」
「そんな感じには見えなかった」
「そうだね」
「人って心の中はわからないね。夢の中だけでも助けてあげなくちゃ」
「そうだね、葵。頑張って」
――店長さん、今助けてあげるからね。
葵は悪魂に近づいた。
悪魂は小さい玉を投げつけてきた。わたしは、ぎりぎりなところでよけられている。
――あっぶなっ。
玉をよけながら、拳銃で1発、2発、宝石を狙ってうった。
悪魂は早い動きで光をよけ、なかなか宝石に命中しない。
葵はいつもより集中して宝石を狙った。
ようやく光が宝石にあたり、悪魂は消えてなくなった。
そして、またボトルが浮き上がり中には赤い液体が入っていた。
リッキーは回収していた。
「よかった。これで店長さん少しは楽になったかな?」
「まあ、夢の中だけはね。現実の問題は解決してないからまだ安心はできないけどね」
「そうだね。現実の方も解決できるようにわたし頑張る」
次のお休みの日、葵はカフェの前で隠れて待っていた。
すると、中から旦那さんが出てきた。
わたしはさっそく尾行をはじめた。
――旦那さん、どこに行くんだろう。
リッキーが少しビビりながら言ってきた。
「浮気現場みちゃったらどうするの葵? 店長さんにどう知らせるの?」
「どうしよう。勢いで尾行するなんて言っちゃったけど本当に浮気してたら……」
「ぼく、怖いよ」
「わたしも怖いよ、リッキー。どうしよう」
「旦那さん、入っていったよ」
「ここは……」
【コーヒー焙煎教室】
「ん?」
「教室?」
わたしは中をのぞいてみました。
そこは、これからカフェを経営する人やコーヒーをおいしく煎れたい人、コーヒーの勉強をしたい人が集まっていました。
その中に旦那さんがいました。
「あれ? 葵ちゃん? こんなところで会うなんて」
「あ、あ、カフェの店長の旦那さん」
「葵ちゃんもコーヒー好きなの?」
「えっ、まあ。旦那さんはここへは何をしに?」
「わたしはコーヒーの焙煎を覚えて、おいしいコーヒーをカフェでだしたくて」
「じゃあ、最近旦那さんがお店にいないのはここに勉強しにきてるってことですか?」
「そうなんだよ。妻には内緒にしてくれよ。突然おいしいコーヒーを煎れてびっくりさせたいんだ」
――なんだーそういうことだったのか。
「でも、店長さんは勘違いから悪魂に取りつかれたってこと?」
葵はリッキーに話かけた。
リッキーは答えた。
「そうだね。勘違いってのも厄介だね。ちゃんと話していればわかることなのにね」
「でも、よかった。これで店長さんにちゃんと話できる」
葵はその足でカフェに向かった。
旦那さんには内緒と言われたけど、それどころではないので葵は話すことに決めていた。
「店長さん、旦那さんのことは誤解でした。浮気ではありませんでした」
「えっ、本当に?」
「はい。実は……、……」
葵は見たことを全部説明した。
店長さんは安心したようだった。
「なんだーそうだったのー。人騒がせな人」
店長さんはそういうと泣いていた。
「ありがとう、葵ちゃん。葵ちゃんから聞かなかったことにしてわたしは騙されたふりをしておくわ。いつかおいしいコーヒーを煎れてもらわなくっちゃね」
「はい」
葵はうれしかった。
これで店長さんは悪魂に取りつかれることはないでしょう。
「よかったね、葵。一件落着だね」
「リッキーがわたしの背中を押してくれたから解決できたんだよ、ありがとう」
「背中を押す?」
リッキーはどの部分が背中を押したのかがわからないようだ。
「いいの、わからなくても。とにかくよかった」
「まあ、いっか」
ふたりはスッキリした気持ちで家に帰っていった。
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