第2話 現実あるいは夢

腕にバンドがあることを不思議に思いながら、考えてもわからないので学校に行くことにした。

教室に入ると、諒太のことが気になってしまった。

とりあえず、夢だし意識しないようにしていた。


「おはよう」


諒太が近寄ってきた。


「あっ、おはよう」


「昨日、おれの夢に葵が出てきたんだ」


「えっ?」


わたしは驚いた。


「どんな夢?」


「おれが、なんか怪物みたいなものになってて綾(あや)を追いかけてるところを、葵に助けられるんだ」


「……」


「おれ、久しぶりにスッキリして気分爽快だったんだ。最近、振られたり嫌なことばかりだったから夢の中でスッキリしたよ」


「そ、そうなんだー。お、面白い夢だね」


葵はちょっと言葉に詰まってしまった。


「でもなんで綾ちゃん追いかけてたの?」


「笑っちゃうよな~綾に振られたから? かな?」


「振られたの?」


「そう、振られた」


「もう、諒太は大丈夫なの? 吹っ切ったの?」


「まあな」


わたしは頭の中がごちゃごちゃして、夢なのか現実なのかわからなくなっていたが、諒太が吹っ切ったならいいかと思った。


――でも、諒太が言っている夢の話、昨日のわたしの夢と同じなんだよな。それにこのバンド。


葵はバンドをいじっていた。

でも、拳銃が出るわけでもないし、やっぱり夢かなと思っていた。


その日は疲れ早めに眠りにつきました。


「ねえ、起きて」


「ん、ん……」


「また、妖精の夢か」


「夢じゃないよ。よくみて」


妖精がまた窓のところに座っている。


「昨日はありがとう。やっぱりきみに頼んで正解だったよ」


「それは、どうもありがとう」


「きみ、名前教えて」


「葵」


「葵かあ~」


「ぼくは【リッキー】よろしくね」


葵はだんだん夢から覚めてきた感覚になってきた。


――ん?夢じゃない?


「えっ!私の部屋じゃん」


「そうだよ」


「妖精! なんで妖精がいるの?」


「なんでって、昨日もあってるじゃん」


「昨日は夢だったし」


「昨日も夢じゃないよ。夢だけど、夢じゃない? なにいってんだ? ぼく。フフッ」


妖精は自分の言っていることに笑っていた。


「昨日、他人の夢に一緒に行ってもらい戦ってもらったんだよ。覚えてるでしょ」


「えっ、じゃあわたしやっぱり諒太の夢に出現してたんだー。今日、諒太がいってたんだよ。わたしが夢に出てきたって。でも、諒太スッキリしたっていってた」


「じゃあ、よかったね。その子、もう大丈夫そうだね」


「昨日の悪魂だっけ? わたし本当に倒したの?」


「そうだよ。拳銃の使い方も教えてないのにバンバンうって命中させてたね」


「わたし、夢で何回か拳銃をうったことがあったんだよねー。それが役にたったんだね」


「葵に頼んでよかったよ。これからも頼むよ」


「え? これからも?」


「そうだよ。まだまだ助けを求めている人はたくさんいるんだ」


葵は少し考えてこたえた。


「うん……リッキー、わかったよ。できる限りは助けたいと思う。わたしができる範囲でね。ほかにもわたしみたいにだれかの夢に入って助けている人はいるの?」


「いるよ。そのうち嫌でも会うことになるよ」


「ん?」


「リッキー、そういえばこのバンド昨日もらったバンドなの?拳銃でてこないけど」


「あたりまえだよ、夢の中じゃないと拳銃はでてこないよ」


「なんだー、そうなのか」


「あとね、ぼくちょっと前から現実世界で葵のことみてたんだけど、ぼくのこと見えなかった?」


「えっ、見えない。これからリッキーのこと普通に見えるってこと?」


「そうだよ、見えるし話もできる」


「ほかの人には見えてないの?」


「ほかの人には見えない。ぼく、妖精だもん!」


リッキーは一回転してみせた。


それからリッキーとの生活が始まった。


学校に行くときも一緒だ。本当に誰も気づいていないようだった。

でもリッキーと話をしていると、周りの人から独り言が大きな子とみられる。

そこは気をつけないといけない。

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