第69話

 エルクは龍王種であるグースの治療を開始した。


 エルクはグースに仙術、天の型、第二の術、天使の祈りを施した。


 エルクがグースに天使の祈りを施すと、グースの半ばで折れていた二本の角や穴だらけになっていた翼の片方と千切れて無くなっていたもう片方の翼、そして、体中に出来ていた切り傷などの裂傷が見る見るうちに治って行き、少しすると、傷など一切ないグースの姿がそこにあった。


『う、嘘じゃろ。あれだけ傷ついていた我の体が、全部治っている。翼もあるし穴も開いていない。き、奇跡じゃ。き、奇跡が起きたのじゃ。う、うう、う』


 グースは、全快した自分の体を見て『奇跡じゃ、奇跡じゃ』と呟いていると、突然泣き出してしまった。


 エルクとルリは、泣き出してしまったグースを暫くは見ていると、ルリがエルクに話しかけてきた。


「ねえ、エルク、さっきグースに使ってた天使の祈りって、どういう術なの。私と仙術を練習していた時は、まだ天の型なんて作ってなかったし、さっき見た感じ回復系の仙術みたいだけど、具体的にどういう術なのか教えてくれないかしら」


「ああ、いいよ。天使の祈りは、治療を施す対象の体に出来た傷や欠損部位、そして、対象が失っている体力や魔力まで全快させると言う仙術でな。この仙術には術者にも少しデメリットのある術で、術者がこの術を行使すると必ず術者の魔力と体力を一定値減少すると言うデバフがかかるだ。まあ、そのデバフも一日経てば解除されるからそこまで重いデバフじゃない。天使の祈りよりその上位の術である女神の祝福の方がもっとえげつないデバフ効果が付与されるから、ルリ、余り重症な怪我を負うんじゃないぞ」


「ええ、わかったわ。なるべく怪我をしない様に努力するわ。……でも、もし怪我をしちゃったらちゃんと治してよね。傷痕なんて残しちゃいやよ」


「ああ、わかってるよ」


エルクとルリが話していると、いつの間にか泣き止んでいたグースが話しかけてきた。


『な、なあ、良い雰囲気のところ話しかけるのもどうかと思ったのじゃが、そのままにして置くと、ずっとそのままな感じじゃったからのう。あえて話しかけさせてもらったのじゃ』


「そうか、それで、俺達の甘~い雰囲気を壊してまで話したかった事って言うのは一体何なんだ」


『うむ、それは、我の怪我を治してくれた事への感謝の言葉と褒美についてなのじゃ。先ず、我の怪我を治してくれてありがとうなのじゃ。それと、褒美の件なのじゃが、治療前にも言ったが、我は今、お主達にくれてやれる物を持っておらぬのじゃ。だから少し時間がかかると思うのじゃが後日、褒美の品を持って、改めてお主達の元へ行くのだ。それで良いじゃろうか』


「ああ、わかった。それで良い」


『うむ、感謝するのじゃ。では、またなのだ』


グースはエルクとルリにそう言うと、翼を羽ばたかせて一気にその場から飛び去っていった。







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