第67話

 周囲を警戒しながらエルクとルリは、迷いの森の中層部から深層部に向かって進んで行った。


 エルクとルリが迷いの森の深層部に足を踏み入れてから大体十数分たった頃、二人が張っていた気配察知に突如多くの魔物の気配が引っ掛かり始めた。


「ようやく、魔物が大量に出て来たな。それにしても何だこれは、普段はこの辺りにはゴールド級からミスリル級までの魔物の筈なのに、今は、明らかにさらに上のアダマンタイト級の魔物までこの深層部にいる。これは、最深部まで様子を見に行かないといけないな」


「ええ、明らかにこの森の中心に何かとてつもない力を持った者の気配を感じるわ」


「何、俺には何も感じないけど、それは本当なのか」


「ええ、間違いないわね。この私と同じヒヒイロガネ級の物が確実にいるわよ。でも、……何だかとても弱っている感じがするわね」


「そうか、兎に角中心部に確認に行かないといけないな。でも……」


「そうね、中心部までの間にいる魔物が多すぎるわ。どうにかしてあの魔物達をやり過ごしながら進むことが出来ないかしら。ねえ、エルク、何かそう言う技、仙術の中に無いの」


「……ある。こんな事もあろうかと思って、『神狼の住処』を出た後で試行錯誤しながら作った技があるんだ。名付けて『神隠し』、幻の型の仙術の技だ。この技は、発動すると、自分と周りにいる自分の仲間の姿と気配や魔力を」


「そんな説明はいいから早速使ってみてちょうだい。ほら早く」


「あ、ああ、わかった」


 エルクはルリにまだ途中の説明を遮られて若干しょんぼりしながら、ルリの要望通りに『神隠し』を発動させた。


「よし、準備完了だ。これで俺達の姿と気配、魔力は他の生物には察知されることはなくなった」


「本当なんでしょうね。自分ではちょっと良くわからないわね。私とエルクはお互いをちゃんと認識できているから、いまいち信じられないわ」


「それじゃあ、少し試してみるか。えっと、あ、あそこにいるアダマンタイト級の魔物のミスリルアーマーリザードで試してみるか。ルリ、こっちに来てくれ」


 エルクはルリを連れてのんびりと迷いの森の深層を徘徊していたミスリルアーマーリザードの眼前に陣取った。


 そして、エルクとルリは、のそのそと歩いているミスリルアーマーリザードの側面に回った。


「それじゃあ、今からこのミスリルアーマーリザードの体皮を普通に触ってみるからよ~く見ててくれ」


 エルクはルリにそう言うと、そのまま手を伸ばして自分の目の前にいるミスリルアーマーリザードの体皮を無造作に触った。







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